ラブホテルで働く“ギャル女子大生”が泣きわめく事態に…フロントで遭遇してしまった“まさかの人物”とは
僕は上京した18歳から26歳の現在に至るまで、仕事が続かず様々な職場で働いた。その中でも比較的長く働き、多くの経験をしたのがラブホテル清掃だ。
ラブホテルでの経験なんてせいぜい単調な清掃業務だけだろうと思われがちだが、実は面倒な場面も多い。例えば泥酔客の対処、部屋前でのコスプレなどの貸し出し、AV会社やオトナのお店からの電話対応など、細々と色々やらされる。
とはいえ、都内でも屈指の回転率の悪さを誇るであろうラブホテルだったので、平日のほとんどはお菓子を食べながら昼ドラをぼんやり見ているだけだった。そんな楽な環境にも関わらず従業員はほとんど定着せず、一部の古株社員を除けば僕が働き出してから退職するまでの2年間で残っていた人間はひとりもいなかった。はじめはなぜ人がやめるのか理解できなかったが、働くうちに段々とここにいてはいけないと考えるようになり、結局僕自身も退職に至った。
そんなどこか問題のあるラブホテルの内側を実際にラブホテルで起こった出来事や同僚を交えて伝えていきたい。
大型ショッピングモールまで遊びにいけば必ず知り合いがいるという認識は、地方出身の方なら何となくお分かりいただけると思う。働いていればなおさらだ。これを勝手に“イオンモール現象”と呼んでいる。僕はこれが嫌で田舎から上京してきたのだが、都内出身者にも同じ気持ちの人は多いらしい。
彼らはわざわざ実家の最寄り駅から離れた場所をバイト先や遊び場に選び、決して地元で昔ながらのコミュニティを温めようとはしない。僕の働くラブホテルにバイトで来ていた女子大生「光ちゃん」もその一人だった。
「仕事してるのとか遊んでるのとか、昔から知ってる相手に見せたくないんですよね。今より芋っぽかったんで」
髪の毛を蛍光色のオレンジ色に染め、なおかつ顔面はギャルメイクでばっちりキメた彼女は、制服姿で純朴そうな笑顔を浮かべる写真を僕に見せながらそう言った。彼女のそんな少し斜に構えた選択が自身のギャルメイクを涙でぐちゃぐちゃにする結果をもたらすとは、その場の誰も思わなかったことだろう。人生は残酷で皮肉、そして青天の霹靂の連続だ。
まず、僕の勤めていたラブホテルの構造について軽く説明させてほしい。あのラブホテルは少し変わった構造をしていた。フロントの奥に休憩室があり、休憩室にいる人間は監視カメラのモニターとガラス越しから自由に客の顔を見ることができた。それをいいことに僕らは客に好き勝手あだ名をつけて暇を潰していた。
光ちゃんはフロントスタッフだったため、特に客の顔がよく見える。この暇つぶしが気に入ったのか、毎日のように「千馬さん!あのお客さんムーミンでどうですか?」「あのおばさん“サチコ”って感じですよね」「色気狂いハゲがまた来ましたよ」など、来る客来る客にあだ名をつけて休憩室を賑やかしていた。あまり品のいい笑いではないのかもしれないが、日々閉塞したラブホテルの日常の中で、彼女はまさに従業員全員にとっての“光”だったように思う。
ある日、いつものように休憩室でそんな遊びをしているとフロントにいる光ちゃんの表情が文字通り凍り付いたのがわかった。声も明らかに震えている。

画像はイメージです
地元から離れた場所をバイト先に選ぶ理由は…
ムードメーカー的存在だった彼女の身に何が?
小説家を夢見た結果、ライターになってしまった零細個人事業主。小説よりルポやエッセイが得意。年に数回誰かが壊滅的な不幸に見舞われる瞬間に遭遇し、自身も実家が全焼したり会社が倒産したりと災難多数。不幸を不幸のまま終わらせないために文章を書いています。X:@Nulls48807788
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