更新日:2025年02月25日 16:50
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異国で銃を突き付けられ「持ち金を全額出すか、売春婦として働くか、死ぬかを選べ」と迫られた女性の“思いも寄らない行動”とは

2023年4月1日に「こども家庭庁」が発足し、子ども主体の社会づくりへの機運が高まっている昨今、子どもの権利を尊重する上で、世界的に注目されているのが「アドボケイト(代弁者)」という考え方だ。 家庭や学校などで、さまざまな問題を抱え、どこにも発することができなかった子どもたちの“SOS”。そんな子どもたちが言葉にできなかった“想い”を、アドボケイトが子どもの立場になって代弁することで、その子どもにとって最善の利益を導き出すことができるというものである。 そんなアドボケイトの重要性を語ってくれたのは、児童発達支援・不登校児支援を行う合同会社 KEYZ代表の一宮宜枝さんだ。
一宮宜枝さん

一宮宜枝さん

統合失調症の母にコントロールされ続けた幼少期

「私の母は、妊娠と出産を機に統合失調症を発症したんです。3歳で両親が離婚してからは、母子家庭で私と兄を育てました。ですが、母の精神状態には波があり、突然家を出て、どこに行ったかわからないまま3日後にフラッと帰ってくるということも日常茶飯事でした。また私の何気ない言動ですぐに激昂したり、精神的に落ち込んだりすることも多く、常に母の顔色を伺い、とにかく母を不安にさせないようにという一心で生活していました」(一宮宜枝さん、以下同) 統合失調症でよく知られる症状として、幻覚や幻聴、誰かに監視されている、誰かに悪口を言われている、いやがらせを受けているというような被害妄想が挙げられるが、一宮さんの母もまさにその症状に悩まされていたという。 「被害妄想により、私が見るテレビや、読む本、遊ぶ友達の選別だけでなく、土日の時間は全て母と一緒にいることを強いられるなどの制限が常にありました。見えないものを『見えない』というと怒られ、見えるフリをして合わせなくてはならなかったのも大変でした。そんな状態なので、悩みどころか自分の気持ちすら母に聞いてもらったことはありません」 母親と子どもの立場が逆転した“普通”とは違う親子関係で育った一宮さんだが、大きな転機が訪れる。イギリスへの海外留学だ。

初めて主体性を問われた、イギリスでの生活

一宮さんの母には「娘をCAにしたい」という夢があった。そのため、一宮さんは英語に強い高校に入学。そして、17歳の時に母から一年間イギリスに留学しろと命じられたそうだ。 「もともと英語もやりたかったわけではなかったので、最初は行きたくないと母に言いました。でも、『お前に選ぶ権利はない』と、母は一人で勝手に留学手続きを進めてしまい……。一方、まともに機能していない家庭だったということもあり、私の兄は万引きや未成年での喫煙などの非行に走っていて。それでも母は兄を溺愛していました。なのに私には、バイト代で留学費用を捻出しろと指示する始末。『留学させることで、厄介払いをされているのではないか?』と当時はとても傷つきました」 どんなに認めてもらいたくて頑張っても、投げつけられる言葉は罵詈雑言ばかり。深い傷を心に負いながら留学したイギリスでは、苛烈な日本人差別が待ち受けていたという。 「日本人というだけで、物を盗られたり、悪口を言われたりといういじめがはじまったんです。帰りたくても帰ることができない辛い日々でしたが、ホームステイ先のホストマザーが私の異常に気づき、話を聞いてくれました。そして私に『まず、あなたはどうしたい?』と問いかけてくれたのですが、正直とても戸惑いました。尊重してもらったことがないので、これまで自分のために考えて行動することを知らなかったわけですから」 イギリスでは、家庭でも学校でも常に自分が「何を選択するのか?」という「主体性」が求められる。母の顔色を伺い、自分の人生を生きていなかった一宮さんにとっては、大きな衝撃だっただろう。
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究極の三択を強いられた、東南アジア一人旅
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歌手・音楽家・仏像オタクニスト・ライター。「イデア」でUSEN1位を獲得。初著『生きるのが苦しいなら』(キラジェンヌ株式)は紀伊國屋総合ランキング3位を獲得。日刊ゲンダイ、日刊SPA!などで執筆も行い、自身もタレントとして幅広く活動している
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