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DeNA“312億赤字”から“157億黒字”へ。V字決算の立役者「ポケポケ」人気爆発を生んだ多角化戦略

 2月10日の東京株式市場で、DeNA(2432)の株価が大きく上昇しました。前日終値と比較して、ストップ高(制限値幅の上限)まで買われ、昨年来高値を更新。東証プライム市場の値上がり率ランキングでも上位に入るという、見事な株価パフォーマンスを記録しました。その背景には、同社が2月7日に発表した2024年4~12月期の連結決算(国際会計基準)が予想を大幅に上回る内容だったことが挙げられます。最終損益は157億円の黒字(前年同期は312億円の赤字)というサプライズに、投資家やアナリストから「赤字からの大逆転」「V字回復」といった評価が相次いだのです。  では、いったい何がDeNAの決算をここまで押し上げたのでしょうか。注目されるのは、同社が新たにリリースしたスマートフォン向けゲーム「ポケットモンスター トレーディングカードゲーム ポケット(通称:ポケポケ)」のヒットです。ポケモンカードゲームは子どもから大人まで幅広い層に支持されるビッグタイトルですが、それをスマホで手軽に楽しめるようにしたことで、思わぬブームを巻き起こしています。さらにスポーツ事業でも横浜DeNAベイスターズの観客動員数が好調に推移し、増収増益を後押ししました。  そこで今回は、DeNAの株価急騰と決算サプライズ、そして鍵を握るゲーム・スポーツ両事業の詳細に迫ります。

ストップ高・昨年来高値更新の背景

DeNA

DeNA公式HP

 まずは2月10日の株式市場におけるDeNAの値動きを振り返ってみましょう。前日の米国株市場が落ち着いた動きを見せる中で、日本株全体もやや落ち着いた雰囲気で始まりましたが、DeNAは朝から大量の買い注文が殺到。その結果、ストップ高に張りつく展開となり、一時は値幅制限の上限をつけたまま取引を終える形となりました。終値は当然ながら前日比で大幅高となり、出来高も急増。単なる一時的な短期筋の買いだけではなく、業績を見直した長期投資家や機関投資家の買いが入っているとの見方が出来るでしょう。  この日、DeNAは東証プライム市場の値上がり率ランキングでも上位に入り、多くの投資家の目に留まることになりました。2月7日に発表された2024年4~12月期の連結決算がきっかけだったわけですが、最終損益が157億円の黒字に転換したというニュースは、赤字続きで苦戦を強いられていた印象があるだけに驚きをもって受け止められました。前年同期が312億円の赤字だったことを踏まえると、実に469億円もの増益幅にあたります。ここまで劇的に業績が変化すると、市場がポジティブサプライズと判断したのです。

決算サプライズの主役「ポケポケ」とは?

 今回の急騰の要因として、最も注目されているのが「ポケポケ」です。正式名称は「Pokémon Trading Card Game Pocket」で、いわゆるポケモンカードゲームのスマートフォン版アプリとしてリリースされました。紙のカードを使ったアナログな対戦ツールとして絶大な人気を博しているポケモンカードゲームですが、その世界観やルールをスマホでも違和感なく楽しめるようにアレンジしたことで、瞬く間にユーザー数を拡大。SNSでは「昔集めていたカードの懐かしさがある」「単純にアプリとしての出来が良い」「紙のカードを揃えるのは大変だが、スマホだと簡単に遊べる」などの声が相次いでいます。  ポケモンカードゲームはこれまでも海外向けにオンライン版が存在していましたが、日本国内で本格的にプレイできる環境は限定的でした。それがDeNAの手掛ける「ポケポケ」の登場によって一気に普及し、ランキングでも上位を維持。課金アイテムである「カードパック」の売れ行きが非常に好調で、リリース初日から収益でトップになるなど人気を確立しました。  さらに、このスマホゲームの盛り上がりが実際のカード販売にも好影響を与えている点も見逃せません。既存のポケモンカードファンがスマホ版をきっかけに再燃し、リアルカードをコレクションし始めるケースも多いといいます。店頭では品切れが続出し、新弾パックの発売日には長蛇の列ができるなど、ポケモンカード全体の市場拡大に拍車をかけているようです。つまり、デジタルとアナログの双方で相乗効果が生まれたことが、DeNAのゲーム事業を一段と押し上げたのです。
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ゲーム事業、29%増収で505億円を達成
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金融ライター、個人投資家。資産運用とアーティスト作品の収集がライフワーク。どちらも長期投資を前提に、成長していく過程を眺めるのがモットー。 米国株投資がメインなので、主に米国経済や米国企業の最新情報のお届けを心掛けています。Webメディアを中心に米国株にまつわる記事の執筆多数 X(旧ツイッター):@usjp_economist

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