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「いずれ強制的に出ていかされると思っとったわ」大阪万博の裏で進む“浄化作戦”。追いやられる住人たちに聞いた本音

“ちょんの間”にもインバウンドの波は押し寄せているが…

[大阪万博]の意外な余波

’19年のG20開催中、飛田新地では白い暖簾で玄関を隠した。大阪万博開催中も同様の措置をとると言われている

 外国人客の受け入れが進むのは“表風俗”だけではない。飛田新地や松島新地といった“ちょんの間”も外国人客が普通に遊ぶようになりつつある今、万博による浄化の波が迫っている。  夜の20時過ぎ、九条駅で降り、住宅街の一画に位置する松島新地を訪ねた。日曜日で人通りこそまばらだが、開いている店は多い。  ピンク色のあやしい光に吸い寄せられるように店を覗くと、女性の脇には英語や韓国語で手書きされた案内が張られていた。  松島新地では’24年10月、ホストの売掛金が払えなくなった女性客に買春させたとして、料亭5軒の経営者と系列のホストらが逮捕された。この一件は、裏風俗のある事情が複雑に絡んでいる。 「裏風俗だから風俗求人誌の掲載は不可。厳禁と言われながらホストやスカウトに頼るのはそんな事情からです」(元松島新地の料亭店主)  万博期間中、大混雑が予想される飛田や松島などの新地に対して行政はどう規制するのか。’19年のG20のときには飛田新地の料亭は店先に暖簾をかけた。  今回も同様に、当局は“見せたくない大阪”を隠すのだろうか……。

万博開催に沸く在阪中国人

[大阪万博]の意外な余波

カラオケ居酒屋「えいちゃん」のママ。住所:大阪市西成区山王2-13-24 営業時間:15〜23時 定休日:水曜

 万博開催の余波で揺れる西成では、恩恵を受ける人たちもいる。在日中国人たちだ。  西成が格安で飲めるグルメタウンとしてブームとなる中で、繁栄の先駆けとなったのは中国人が経営する“カラオケ居酒屋”。約15年前にオープンしたカラオケ居酒屋「えいちゃん」の中国生まれのママ・中下英子さんが語る。 「オープン当時はカラオケ居酒屋がまだ5軒しかなく、この商店街もみんなシャッターを閉めてて真っ暗。商店街はオシッコ臭くて、路上で薬を売ってる人も多かったんやから」  当時の客層は日雇い労働者がメインで路上生活者も少なくなかった。だが、現在は観光地化が進行。街は激変した。 「この街がもっと綺麗になって、万博で大阪の地名がもっと有名になればみんな幸せ違う? 最近、外国人のお客さんも増えて、この前はイギリスの有名YouTuberが来た。西成の雰囲気が好きなんだって」(中下さん)  西成の価値を上げたのは間違いなくカラオケ居酒屋の存在と、中国人らの土地取得だ。西成の地価は約15年前と比べて3倍の価格がついている。 「万博後も地価が上がると息巻くのは中国人です。日本人は万博後に下がると思っているので、ミナミの歓楽街で売りに出るビルも価格競争をするとほとんど負ける」(大阪市内の不動産業者)  西成には中華街構想もある。この勢いはまだ続きそうだ。 取材・文・撮影/加藤 慶 写真/産経新聞社
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