【広岡達朗】メジャー帰りの選手を甘やかすな。複数年契約なら「基本給+完全出来高払い」であるべき理由
大リーグの年俸バブルは論外だが、コミッショナー事務局や球団にアメリカのような経済力がない日本も、いつの間にかアメリカの真似をしてマネー競争がエスカレートしている。
日本プロ野球選手会が発表した2024年度の年俸調査結果によると、開幕時の支配下公示選手716人の平均年俸は前期に比べて245万円増の4713万円で、現行の調査方法になった1988年以降、最高額になったという。(※本記事は、広岡達朗著『阿部巨人は本当に強いのか 日本球界への遺言』(朝日新聞出版)より抜粋したものです)
球団別ではソフトバンクが6806万円と2年ぶりに1位に返り咲き、2位が巨人の6243万円だった。最下位は日本ハムの3483万円で、リーグ別ではセ・リーグが4923万円、パ・リーグは4498万円。全体の中央値は1800万円で、球団別の中央値ではロッテと巨人の2300万円がトップだった。
他人の財布をのぞく趣味はないが、ソフトバンクがトップになった大きな理由として、内野手の山川穂高が西武からFA移籍して平均年俸を押し上げたことは、ファンならだれでも知っているだろう。
山川は2023年5月に強制性交等の疑いで書類送検されたことで西武から無期限の公式試合出場停止処分を受け、同季の出場は
17試合で止まっていた。西武での通算10年間で218本塁打を放った大砲を、右の長距離打者が欲しいソフトバンクが4年契約12億円プラス出来高払いの総額20億円で獲得した。その人的補償として、甲斐野央投手が西武に移籍。
ソフトバンクはその前年、日本ハムからFAで外野手の近藤健介を獲得したが、報道によると契約は7年総額50億円だという。そして近藤は2023年シーズンの打点王とホームラン王の二冠を獲得、2024年も首位打者のタイトルを手にしている。
ソフトバンクが球団別平均年俸で1位に返り咲いたのは、2年続けての大型補強が底上げしたからだろう。そして2024年はダントツの独走で4年ぶりのリーグ優勝に輝いた。
ちなみに私が西武の監督として2度日本一になり、3度目のリーグ優勝を飾った1985(昭和60)年の最高年俸は3000万円だった。
39年前の話で、当時私は53歳。当時の大卒サラリーマンの初任給は月額13万5000円で、2024年でも20万1800円(賃金構造基本統計)だから3000万円は大金だし、その後の物価指数や実体的な貨幣価値の変化を見ると単純には比較できないが、いまのように契約時にどんぶり勘定で大金を渡すのは間違っている。
私も巨人で13年間ショートを守り、ヤクルトと西武で計8年間監督を務めたので、選手の気持ちや事情はよくわかる。だから球団に「カネを出すな」というわけではない。日本にふさわしい契約の改革をしたほうがよいのではないか、といっているのだ。
「ソフトバンクの平均年俸」を押し上げた山川穂高
1985年の最高年俸は3000万円
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