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家を追い出された20代弟が帰らぬ姿に…「できることはもっとあった」姉の無念

500円玉を握りしめて遺体で発見

 このとき、兼本さんの携帯電話に、公衆電話から着信があったという。最初は無言で、「…元気?」とボソリ。違和感はあったが、兼本さんはご飯の準備中だった。「どうした?何かあった?」と聞いたものの、「ちょっと声が聞きたくなって」という返答のみ。 「旦那の帰宅時間が迫っていたこともあり、私もあっさりと電話を切ってしまいました。でも、冷静に考えてみたら、明らかにおかしい。実家に電話したら、『Kが出て行って、しばらく帰っていない』と言うのです。それでも両親は、のんびりしていました」  兼本さんの母は、「父さんのお説教が効いたんだ!Kがこんなに長い時間外で過ごすなんて、奇跡かも」と、むしろ喜んでいたという。けれど、兼本さんはすぐに警察へ連絡。行方不明届を出したが、自ら家を出ていることから事件性はないと判断されてしまう。 「それからしばらくして、Kは遺体でみつかりました。死因は、餓死。冬の間は人がほとんど入らない場所で、500円玉を握り締めて亡くなっていたそうです。外傷はなく、まるで眠っているようでしたが、苦しかっただろうと思います」

Kの声に耳を傾けるべきだった

 父はずっと自分を責め続け、母は憔悴。そして兼本さんは、「どうしてKから電話があったとき、何があったのか、どうしてもっと聞いてあげられなかったのだろう。Kにとって頼れるのが私だけだったから連絡をくれたはずなのに…」と後悔する。 「あとから考えたら、私にできたことはいっぱいあったと思います。いまは、タラレバしか言えないけど、違和感を覚えたら立ち止まってほしいです。結果が悪いと、何をやっても後悔はすると思いますが、大切な人に頼られたときは、話を聞いてあげてください」  また、生活能力がないKを家から追い出してしまったことを兼本さんの父は深く悔いているようで、「勢いで『出て行け!』などと言わず、自分の価値観を押し付けず、まずはKの声に耳を傾けるべきだった」と自分を責め続けているという。
ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター。Xアカウント:@natukawanatumi5
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