「がんを治さない」高齢者が増加中。医師が“がんは幸せな病気”だと考える理由
日本人の最大の死因となる病気・がん。この病気を未然に防ぐため、検診や生活習慣の見直しに余念がないという人も少なくない。
ただ、長年高齢者医療に携わってきた医師・和田秀樹氏は、「60代以降は、がんは“治さない”という選択肢も視野に入れるべき」と指摘する。
「治療」を目的とする長期の入院や手術、抗がん剤などのリスクを鑑みた上で、60代以降はがんという病気とどのように向き合うべきなのか。
和田秀樹氏の新刊『60歳からはやりたい放題[実践編]』(扶桑社刊)より、ご紹介する。(以下、同書より一部編集のうえ抜粋)。
検査と言うと、多くの人が「がん検診」を受けます。
私自身は、がん検診も受けなくて良いと思っていますが、もし受けるのならば、仮に自分にがんが発覚した場合はどんな対応をしたいのか、治療を受ける場合はどんな方法が良いと思っているのかをきちんと考えてから受けるべきです。
「がんが見つかったら治療するのが当たり前でしょ?」と思われたかもしれませんが、60代以降は、がんなどの病気が見つかったら即治療することが、必ずしも良いとは限りません。
これはがんに限った話ではありませんが、大きな病気の治療は、60代以上にとって体にかかる負担が大きいからです。
若い人であれば、回復力が早いので、入院や手術をしても、すぐに元の健康な体に戻り、以前の日常生活を再開させることができるでしょう。
しかし、60代以降は、一度病気になると、回復に時間がかかります。
外科的な手術を受ける場合、手術で体を開き、臓器を切るので、体に与える負担は大きいものです。
まして、日本ではがんだけでなく周りの臓器も大きく取ることが多いのでなおのことです。
抗がん剤治療も、吐き気などで食事が全く食べられなくなり、栄養が十分に体へ行き渡らず、どんどん体力が弱まっていくことで知られています。
若い人ならば耐えられるかもしれませんが、60代以上の方がその治療に耐えるのはかなりの覚悟が必要です。
また、入院生活も長期にわたるため、その間に筋肉が衰え、自分の力で歩くことすらままならなくなるというケースもあります。
人によっては、手術自体は成功したものの、回復が芳しくなく、そのまま寝たきりになったり、亡くなってしまう……という方もいるでしょう。
がんは必ずしも治療するべき病気とは限らない
60代以降の手術や入院に伴うリスクは大きい
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1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。 東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、 現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。 高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。 ベストセラー『80歳の壁』(幻冬舎)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)など著書多数。
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