ルフィ事件はなぜ防げない? 特殊詐欺の課題と対策を専門家に聞いた
全国各地で相次いだ特殊詐欺グループによる強盗事件、いわゆるルフィ事件は社会に大きな衝撃を与えた。犯行グループはマニラから指示を飛ばし、事前に「金がある」と踏んだターゲットの自宅に乗り込み、暴行を振るったうえ、金品を強奪したのだ。
しかし、ルフィ事件は氷山の一角ともいうべき存在であり、今もなお多くの犯罪が発生し続けている。ルフィ事件の犯行グループは、強盗だけでなく多数の特殊詐欺にも関与。その被害額は60億円にも上るという。
「特殊詐欺事件は、2003〜2021年の間の被害総額は約5700億円。途方もない額となっており、今でも毎年おおよそ300億円の被害が出ています。昨年は前年比で79.4億円増え、認知件数で見ても3022件も増加。撲滅には程遠い印象です」
このように話すのは、元埼玉県警刑事部捜査一課の佐々木成三氏だ。
すでに多くの人が特殊詐欺の存在と危険性を認知するに至っている。
にもかかわらず、特殊詐欺の被害がいまだになくならない。その理由は?
「いたちごっこのような手口のアップデート化にあります。かつてのオレオレ詐欺からはじまり、還付金詐欺、キャッシュカードすり替え詐欺、そして最近はテレグラムのように個人情報を追いにくいスマホの通信アプリの存在も、被害がゼロにならない理由です。
たとえば、『ばあちゃん、特殊詐欺が流行ってるからさ、家に現金置き過ぎちゃだめだよ。いま、家にいくら現金あるの?』と“市場調査”する詐欺犯がいます。ほかにも、『高級腕時計の買取業者です。よかったら、お見積りいたしましょうか?』とアンケートをとって、さりげなく金目のものがあるかを事前調査する。その手口は常にアップデートされており、いたちごっこが続いています。こうした状況を追い続けるのは容易ではありません」
では、打つ手はないのかといえば、そんなことはない。
元消費者庁で、消費者のトラブルに詳しい法律事務所Zの伊藤建弁護士は、「特殊詐欺の対策として、もっともメスをいれるべきポイントは固定電話」だという。
「トビラシステムズ社の調査によれば、固定電話にかかる着信の5件に1件が悪質営業や詐欺の迷惑電話というデータも出ています。つまり固定電話が消費者被害の温床となっているのです」
常にアップデートされる犯行の手口
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