「いきなり!ステーキ」大量閉店で、“肉マネー”パニックが続出
かつて外食産業に革命を起こした「いきなり!ステーキ」に逆風が吹いている。12月下旬に、公式サイトの店舗ページに続々と【閉店のお知らせ】が掲示され、いま同店のファンたちに混乱が巻き起こっている。
閉店に焦りを感じた人たちが、会員カードやアプリに入れた独自の電子通貨「肉マネー」を使い切らねばならないと最寄りの店舗に殺到しているのだ。いったい、どういうことなのか。
11月に発表された四半期決算時に「16億8500万円の特別損失を計上」が発表された時点で「いきなり!ステーキ」の経営を不安視する声はあった。しかし、その空気が消費者にも感じられ始めたのは12月上旬、いきなりステーキを運営するペッパーフードサービスの一瀬邦夫社長が店頭に顧客に向けた直筆メッセージを掲示した頃だった。
「お客様のご来店が減少しております。このままではお近くの店を閉めることになります」
社長自らが直筆で来店を促すという前代未聞の事態に世間はざわついた。そして12月下旬になると、公式サイトの店舗ページに続々と【閉店のお知らせ】が出され、どの店も約1か月後に閉店する旨の発表が相次いだ。
たとえば、2019年4月にオープンし、9月に放送された「ガイアの夜明け」(テレビ東京)でも取り上げられた「オイスターバー+ステーキ赤坂」もそのうちのひとつだ。番組内では、次々とオープンする競合の焼肉・ステーキ店に対し社長自らが考案した、異色の「牡蠣とステーキを楽しめる店」というコンセプトとして紹介され、社長はそのコンセプトにかなり自信を持っていたように見えた。
しかし、そんな自信をもって出店した店も含め、約500店ある「いきなり!ステーキ」のうち44店を閉店するとあって、ネットでは「いきなり倒産」「いきなり不景気」といった皮肉な大喜利とともに、こんな声が続出した。
「まだ何万円分も肉マネーの残高があるのに……」
「いつどうなるかわからないので急いで肉マネーを消費しなければ」
「肉マネーを放出しにお店を訪れたら店内は超満員」
そう、「いきなり!ステーキ」には独自のシステムがある。そのシステムによって消費者には大きな混乱が起きているのだ。
「肉マネー」とは、アプリにチャージして会計時に使用できるプリペイド式の独自システムだ。1000円単位でアプリにチャージすることができ、加えて3000円以上をチャージすると1%、5000円以上で2%、10000円以上で3%と多額であればあるほどお得になるということもあり、まとめてチャージしていたファンが多い。
しかし、せっかく自宅や職場から近い店で使おうとまとめてチャージしたのに、その店が閉店してしまっては肉マネーの使い道がなくなってしまう、と焦る人も多いのだ。ネット上では次のようなコメントが相次いだ。
「肉マネーを使い切るまでに近所の店が倒産しない事を祈る」
「会社最寄りのいきなりステーキ閉店! ここなくなったらもう行く機会ないから肉マネー使い切らないと」
加えて、12月上旬に貼り出された社長直筆の文章が、むしろ今回の閉店ラッシュに拍車をかけたのではないかという指摘もある。「経営が危ないのでは?」と感じた消費者が保有している肉マネーを使い切ろうと駆け込めば、おのずと店舗には現金が入らなくなる。その結果、さらに経営が悪化したのではないか……ということだ。
店頭に貼り出された文章も「いきなりステーキは日本初の格安高級牛肉の厚切りステーキを気軽に召しあがれる食文化を発明、大繁盛させて頂きました。今では店舗の急拡大により、いつでも、どこでもいきなりステーキを食べることができるようになりました」と自社のすごさを語ったと思いきや、「しかし、お客様のご来店が減少しております。このままではお近くの店を閉めることになります。従業員一同は明るく元気に頑張っております」と続ける。これに対し、ネット上では「なぜ上から目線なのか」「まるで消費者が悪いみたいだ」と批判が殺到していた。
厳しい外食産業の戦いの中とはいえ、なぜここまで「いきなり!ステーキ」が追い込まれてしまったのか。こうした、どこか謙虚さを欠いた意識の問題や「肉マネー」をチャージしてくれた消費者への裏切りとも思える行動にも原因はあったのかもしれない。
今はただ、「肉マネー」残高を保有する消費者たちが、損をすることなく最寄りの店で満額「肉マネー」を使い切れることを願う。<取材・文/松本果歩>
インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。X(旧Twitter):@KA_HO_MA
「ガイアの夜明け」では自信をのぞかせていたが…
倒産を予感したファンが「肉マネー」を使い切るべく店に殺到!
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