お金

高級腕時計を「一生モノ」と思って買ってはいけない理由

 クルマも腕時計も好きな斉藤由貴生です。私は、現代のおかしな消費を変えるために実践を重ねながら、いろいろ研究してきました。私は30代のいわゆるバブルを全く知らない世代です。所有欲の薄い世代とは言われますが、私の場合は、むしろ価値あるものは我慢せず所有したいと考えています。そんな私の価値観を、不定期ですが披露したいと思います。

斉藤由貴生

第24回 高価な商品を「一生モノ」だと意気込んで買うから失敗する

 腕時計は、メンテナンスや保管場所といった維持費の面からも、価値が上がったり下がったりするという相場変動の面からも、世界的に人気があるという需要の面からも、買った値段より高く売ることが可能な数少ないモノです。にもかかわらず、昇進したタイミングとか、海外旅行に行った記念とか、なんらかのきっかけを必要として買うのはもったいない話だと思います。しかも、高いモノを買うという意識があるためか「一生使うつもり」と覚悟まで決めるので非常に惜しいと思うのです。 「機会費用の損失」という言葉があります。  例えば、大学1年の時、もしバイトをしていたなら100万円は稼ぐことができたのにしなかった。大学2年生の時、前年からバイトを始めていればあと100万円多く稼ぐことができた、というのが機会費用の損失を自覚した例でしょう。利益が出る可能性があるのに「高級品」「贅沢品」といって買わないのは機会費用の損失だと言えます。時計に興味がなくて大きなお金を動かすのが嫌な人は、無理やり買う必要はないでしょうが、本当は欲しいと思っている人が、家族や友人から批判されて、買い損ねているというのはもったいないと思います。

高級腕時計はクルマや株よりもゼロになりにくい

「一生モノ」だとして時計を買ったならば、買うハードルが非常に高いため、一生に買う時計は多くて2本とか3本でしょう。一方、腕時計投資という観点で時計を買っている私は、中学生の時すでに3本以上の高級腕時計を所有していました。  いくら中学生からビジネスを始めていたとはいえ、収入面で一般的なサラリーマンにはかないません。家計は火の車でしたが、年齢的に親に養ってもらえたので、稼いだ額を自由に使うことができたという特権はありました。しかし、ここで重要なのはその100万円は元本であるということです。

高級腕時計に関しては「一生モノ」と考えず、株を買う感覚でいいのです

 元本といえば、身近なのが株でしょう。つまり、株投資は多くの人が一般常識として行っているのに、腕時計については「一生モノ」という認識なのです。確かに、株を所有していたら配当や株主優待があったりします。しかし、それらは必ずあるとは限りませんし、本来、株の価値とは切り離して考える付加価値です。そして、その会社の業績によっては、株券が紙切れ、つまり0円になる場合もありますし、多くの人が「潰れない」と思っている大企業でも株が単なる紙切れになってしまった企業も多々あります。一方、高級腕時計の場合、0円になっているのを見たことがありません。高いモノは極端な安値にならない傾向があるのです。  例えば、本体価格200万円のクルマがあったとします。腕時計とは違い、最終的に0円近くの値段になりますが、どんな車でも1万円で引き取ってくれる業者があります。なぜ1万円で引き取るかというと、どんなに程度が悪い車でもパーツとしての価値が1万円以上になる場合が多いからです。時計もそれと同様で、どんなに程度の悪い時計でも、パーツに価値があるのです。もっとも、パーツにしか価値がない状態までダメになってしまう腕時計は少数ですが、いずれにしても、腕時計は0円にまで価値を落とすことはないのです。  よって、ゼロになりにくいというだけでなく、投資価値がある時計を「一生モノ」といって買いそびれるのは機会損失。つまり、買わないより買ったほうが良い判断になることが多いのです。
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

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もう大量消費、大量生産で無駄遣いをするのはやめよう

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