自殺志望アカウントを開設する人たちの言い分…本当に「#死にたい」わけではない
神奈川県座間市のアパートから、女性8人男性1人、計9人の遺体が発見された事件。容疑者も逮捕され、被害者の身元が続々と明らかにあるつつあるが、新聞・テレビでも報じられている通り、容疑者はSNS上に「首吊り士」などといったアカウントを開設し、そこで自殺志願者を募っていた。SNS上に「自殺志望アカウント」が少なくない数存在することも驚きだが、志願者が容疑者から言葉巧みに呼び出され、そして殺害されたという。そんな中、一連のマスコミ報道に強く異議を唱える女性がいる。
「容疑者は『実際に会ってみると、本気では死ぬ気がない人たちだった』と供述しています。当然です。死にたいと思うことはあっても、見ず知らずの男に殺されたいと思うはずがない。また、マスコミが“被害者が自殺を希望していた”と、ツイッターの文面を切り取った形で紹介していることもおかしい。被害者が“望んで殺された”と読者・視聴者が勘違いするような報道が横行していることに違和感を覚えます」
マユミさん(仮名)は、十代の終わりころから精神的に安定しない日が続き、精神薬のオーバードーズ(過剰摂取)や、リストカットを繰り返す日々を、今も送っている。
マユミさんのSNSアカウントには「死にたい」「人生を終わりにしたい」などといった一見「自殺志願者」とも思える書き込みが並んでいる。SNS上では、同じように「死にたい」「自殺したい」という人々と交流しているが、その意外な本音とは……。
「私たちが自殺したいというのは、本気でもありますが……本当は、死にたい、自殺したいとつぶやくことで、なんとか生き抜くことができるからなんです。書き込みを見た同じような思いの仲間とつながって、SNS上でやりとりをして、支え合いながら生きていける。こうした気持ちは当事者でしかわからない」
マユミさんの知人のなかには、事件の容疑者のアカウントである“首吊り士”とやりとりをしたことがある女性もいるのだという。知人がDMで「死にたい」と相談したところ、いきなり首吊り自殺の方法について説明を始めた容疑者に気持ち悪さを感じ、やりとりはすぐに途絶えた。その後も定期的に「生活どうですか?」「苦しいですか?」などの質問が届き、アカウントをブロックしたという。
ネット上の「自殺志望アカウント」について、我々は確かに「死にたい人たち」として捉えているが、マユミさんによれば、そのほとんどが本当は「生き続けたい人たち」だという。
「事件発覚後、自殺希望、死にたいとつぶやく書き込みが探し出され、有象無象のユーザーから罵詈雑言を受けたり、出会い目的のユーザーから変なメッセージが届いたりしています。『死にたいなら勝手に死ね、こんなところでつぶやくな』とか『迷惑なかまってちゃん』とも言われます。でも私たちは、彼らに迷惑をかけていない。今回不幸だったのは、私たちと同じように苦しんでいた子が、騙され、そして殺されたということ。卑劣な犯人は許すことはできないし、私も被害者になっていたかもしれないと思うと寒気がする。いま、私たちの存在まで押し消されようと、見えなくされようとしている。これでは本当にひとりきりで死を選ばざるを得ない人が増えるだけです」
自殺志望アカウントの存在を、事件を報じるマスコミがセンセーショナルに取り上げ続けた結果、つぶやくことでなんとか生き続けられてきた弱い立場の人々が弾圧されている。世間に衝撃をもたらした「座間9人殺人事件」の影響が、すでに出始めているということなのか。
<取材・文/伊原忠夫>

自殺志望アカウントの本音…本当は「#死にたい」わけではない!?

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