1972年生まれのショーンが定義するところの“リック・フレアー”――フミ斎藤のプロレス読本#103【ショーン・ウォルトマン編エピソード3】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
シックスことショーン・ウォルトマンは、金髪のかつら、デカ鼻メイク、ライトブルーのボタンダウン・シャツとカシミヤのベスト、ベージュのコットンパンツにブラウンの革のローファーといういでたちでさっそうとリングに登場してきた。
なんのつもりかといったら“リック・フレアー”のつもりである。いっしょにいるのは“カート・ヘニング”役のバフ・バグウェルで、その後ろをうろうろしているのが“スティーブ・マクマイケル”に扮したコナン。
演目の主題は『リック・フレアーの涙』。ショーン=シックスが寝ずに考えたスキット(寸劇)がいまその幕を開けようとしていた。
リングまんなかに立っているのは“フレアー”と“ヘニング”と“マクマイケル”の3人。シチュエーションは大御所“フレアー”が大物FA“ヘニング”にフォー・ホースメン入りを勧めているところ。
フォー・ホースメン=4頭の名馬は、フレアーがずっと大切にしてきたヒール軍団の正式名称。“ヘニング”は“フレアー”の誘いになかなか応じようとしない。
アメリカのメジャー団体のプロレスラーは、毎週月曜の夜、連続ドラマの登場人物になる。WCWの全米生中継“マンデー・ナイトロ”の番組内容は試合とプロモ・インタビューが半分ずつだ。
スーパースターとカテゴライズされる選手たちは、おしゃべりができないとどうにもならない。ほんとうは試合以外のことには頭を使いたくないショーン=シックスだって、毎週のようにドラマ・シーンのネタを必死になって考えている。
デカ鼻の“フレアー”がすがりつくようなウェットな目つきで“ヘニング”を軍団に誘い込む。ガムをくちゃくちゃかみながらイエスでもノーでもないあいまいな態度をとりつづける“ヘニング”。そこに“アーン・アンダーソン”役のケビン・ナッシュが飛び込んでくる。
ナッシュ演じる“アンダーソン”は、ハゲ頭のヅラに金縁のメガネ、首にはリハビリ用ギプスが巻かれていて、クッションかなにかを入れたおなかはみごとな太鼓腹になっている。
きっと、ショーン=シックスは、リック・フレアーをパロディにしたらいったいどうなるかを実験してみたかったのだろう。1972年生まれのショーンはやっと25歳。フレアーがプロレスラーとしてデビューしたのが1972年12月で、初めてNWA世界ヘビー級王者になったのが1981年9月。
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