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パソコン黎明期の80年代――。国民機と称えられた「PC-9801」で圧倒的なシェアを確立し、その後、日本のパソコン業界をリードしてきたのがNEC。その誇りを胸に、今も世界初、世界一のパソコンをつくり続ける。
日本の家庭にパソコンがまだ一家に1台すらなかった時代。ひときわ光彩を放ったのが、PC-9800シリーズだ。98シリーズは、全盛期に国内で90%を超えていたと言われるNECの圧倒的シェアに貢献。初めて購入したパソコンは98シリーズだった、という諸兄も多いだろう。そんなNECのパソコンの歴史は、98シリーズが登場する少し前の1979年に遡る。
「この年、弊社初の本格的なパソコンが登場しました。それが『PC-8001』です。当時はこの機種をもって、パソコン時代の幕開けであるという評価をいただきました」とは、NECパーソナルコンピュータの鈴木正義氏。
●鈴木正義氏……NECパーソナルコンピュータ広報専任部長。80~90年代に活躍したOBとも親交が厚く、当時の事情にも明るい
「PC-8001」を開発したのは、コンピュータ専門のチームではなく電子デバイス、いわゆる半導体チップを売るチームだった。
「当時は半導体チップを売るにあたって、使い方を提案する必要がありました。そんななか、海外でプロセッサが飛ぶように売れているという話を聞き、調べてみるとプロセッサを使ってパソコンというものをつくっていることが判明。そこでうちでも本格的にパソコンを開発することになり、電子デバイスのチームが電子デバイスを売る延長線上で、パソコンを作り始めたのです」
こうしてPC-8000シリーズやPC-8800シリーズが誕生。世の中はパソコンの時代に向かい、さらに発展していく。
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そんなとき、NECでは次世代の16ビットパソコンを開発するにあたって、一つの議論が巻き起こった。このまま電子デバイスチームが担当するのか。それとも情報処理グループに切り替えるのか。そこで当時、NECの副社長、大内淳義氏は、大きな決断を下す。
「大内は電子デバイスチームの出身でしたが、身内のチームが抱えていたパソコン事業を専門のチームがやるべきだと決断しました。そして、パソコン事業は情報処理のチームに引き継がれたのです」
開発チームの交代劇を経て、1982年に国民的人気シリーズの初代機「PC-9801」が誕生した。この98シリーズは、なぜ多くのユーザーに受け入れられたのか。鈴木氏は成功の秘訣を、「コンピュータは互換性と拡張性がとても重要だった」と分析する。
「特に互換性を持たせることに力を入れました。というのも、当時弊社のパソコンは、8000、8800、6000という3つのシリーズがあり、それぞれ互換性がありませんでした。このままではユーザーやサードパーティに支持されないと考え、98シリーズは初代のマシンから最後のマシンまで、同じソフトが使えるように互換性を持たせたのです」
この優れた互換性により、98シリーズ、ソフトウェアを開発するサードパーティ、消費者のエコシステムが構築された。また、ジャストシステム社のワープロソフト「一太郎」が大ヒットし、98シリーズの人気は不動のものになる。
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