都民ファースト最有力の新人候補が最も遅い当確だった――投開票日に見せた素顔【密着ルポ】
7月2日に投開票が行われた東京都議会選挙は、小池百合子東京都知事が率いる都民ファーストの会(以下、都民ファ)の圧勝に終わった。今後4年間の都政を託された都民ファの新人議員たちの素顔はどんなものなのか。開票日当日、武蔵野市の都民ファの候補者・鈴木邦和(28)に密着取材し、“都議誕生”のその瞬間までを追った。
7月2日20時50分頃、東京・JR吉祥寺駅近くのヨドバシカメラ横にある都民ファーストの会公認候補・鈴木邦和の事務所では、テレビで中継される「小池圧勝」の報に沸き立ちながらも、どこか緊張感が張りつめていた。
公示日ギリギリで公認を出した町田市などでも、都民ファが軽々と圧勝を決めたと報じられていた。中央区や千代田区などの“激戦区”でも、都民ファの候補者の当確が早々と出ていた。しかし、鈴木が出馬している武蔵野市では、民進党の候補者が僅差でリードしているという出口調査の予測が流れていた。
事務所に集まった50名弱のスタッフと支援者たちは、用意された大きなスークリーンに映しだされる開票速報を心配そうにじっと見つめている。クーラーは入っているが、人の熱気ですこし蒸し暑いくらいだ。当事者である鈴木は、会場の左後ろで椅子に座り、手にした緑茶のペットボトルを時折飲みながら、足を組んで、じっと前を見つめていた。
会場からは、「23時頃まで決まらなそう」といった声が漏れだしていた。選挙活動のはじまった二か月前から手伝いをしていた30代の男性ボランティアの一人は、「自分のことより見ていられない」と思わず事務所の外に出た。
開票日当日だというのに、鈴木の事務所には日経BPの記者と、どこかの新聞社の記者が一瞬顔を見せたくらいで、メディアの注目度は決して高いとはいえなかったが、武蔵野市は紛れもなく、今回の都議選における“隠れ激戦区”だった。
いわゆる“1人区”である武蔵野市では、自民現職の島崎義司(51)、民進党元職の松下玲子(46)、そして鈴木の三人が、たった1つの議席を争っていた。
自民への“逆風”が吹き荒れるなか、現職の島崎は厳しい戦いを強いられていたが、だからと言って、「都民ファーストの会」公認という肩書きさえあれば、簡単に当選できるという選挙区ではまったくなかった。
民進党の松下は、落選期間中のこの4年間、街頭活動を地道に続け、地元民の根強い支持がある。菅直人元首相の地盤であり、もともと革新勢力が強い上に、共産党が候補を立てず、事実上の松下支持に回っていた。
“父が育った地”という地縁を頼りに、2か月前に武蔵野にやってきた鈴木が、厳しい戦いを強いられるのは、もとより分かっていたことだった。あるボランティアスタッフは「だからこそ一丸になってやれた。選挙活動ができる最終日だった昨日もギリギリまでやり抜きました」と振り返った。
希望の塾で出会った有志によって構成された鈴木選対は、フェイスブック上で100名近くのグループを作るなど、新人候補の選対としては異例の組織力を誇っていた。若いスタッフが多いこともあり、活動量の多さでは他候補の群を抜いており、事前調査ではリードが伝えられていた。しかし、勝つとしても数千票の差だろうという読みは選対で共有されていた。開票日前日のスタッフ向けメールには、「(結果がわかるのは)深夜になります」とあった。
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「自分のことより見てられない」

隠れ激戦区

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