国民の半数がシャブ使用者…フィリピンの覚せい剤使用現場“ドラッグデン”に潜入
今年1月、フィリピン・マニラ警察本部のMPDPCを拠点に、ドゥテルテ大統領が掲げる“麻薬戦争”による大量射殺の現場を取材した(※前回「フィリピン麻薬戦争、大量射殺の現場を密着レポート――ドゥテルテ大統領“違法薬物撲滅”政策の行く末」)。「麻薬と犯罪を半年以内に撲滅する」という公約から、容疑者・使用者の殺害も辞さないという姿勢だ。
だが、こうしたドゥテルテ大統領の強硬策に対し、国内では副大統領や野党が中心になり、国外では主に欧米政府やEU、国連、人権団体などが批判の声をあげている。欧米政府は、フィリピン政府に対する助成金を止め、輸入農産物に関税を課すという制裁措置をちらつかせるなど、露骨に揺さぶりをかけ始めている。しかし、麻薬戦争を推し進めるドゥテルテ大統領がブレる様子はない。
違法薬物撲滅の推進、要するに大量虐殺につながる根本的な問題とは、いったい何なのか。そこには、フィリピンの「麻薬国家」という現実が横たわっている。いかに麻薬が市民に蔓延しているのか。今年3月、一般市民の“ドラッグデン(DRUG DEN)”と呼ばれる麻薬摂取の現場に潜入を試みた。そこから見えてきたものとは……。
首都マニラのマラテ地区。夕日が美しいマニラ湾に面し、夜になれば煌々とネオンが輝く繁華街だ。セクシーなドレスを着たKTV(連れ出しOKのキャバクラ)の女たちが店外にずらりと並び、客引きする姿があちこちで見られる。
日本語や韓国語の看板も多く、タイ・バンコクのナナプラザやパッポン通りを彷彿させる光景だ。ドゥテルテ後の現在は、深夜でも人通りが絶えない。そんな繁華街と道1本を隔てた狭い路地。母親がタライを使って洗濯をし、その脇を裸足の子供らが駆け回っている。早朝から鶏が鳴き、子供らのはしゃぎ声が聞こえてくる。平日の昼間だというのに若者たちがバスケットに興じ、スピーカーからは大音量のヒップホップが鳴り響く……。
私は、トライシクルタクシーの運転手にコーディネートを頼み、ドラッグデンへと向かった。しかし、じつは、麻薬吸引の現場であるドラッグデンは、そんな日常風景のなかに溶け込んでいたのだ! そのなかには以前、私が訪れたことがあるマラテの下町も含まれていた。
⇒【写真】はコチラ(麻薬吸引の様子) https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1323507
そして、その多くが家屋のなかにあり、路地を歩いただけでは発見不可能。それは特別な施設などではない。“日常にある場所が、ある時間だけドラッグデンに変貌する”のだった。
あるドラッグユーザーがこう言う。
「俺は友人の家屋を使っている。ひとつの信頼できるドラッグデンを持つ人間は、他のドラッグデンには行かないよ。バレるリスクが大きいからな。現在の警察は、薬物を発見次第、問答無用で所持者・使用者を射殺するんだ」
使用される麻薬は「SHABU (日本語と同じシャブと発音)」と呼ばれる覚せい剤が大半を占めており、コカインやヘロインなど、高値の麻薬に関しては取材中に名前を聞くことはなかった。マラテの下町にシャブを供給しているのは、中国人マフィアとフィリピン人シンジケートだという。両集団は敵対関係にあらず、争いはないそうだ。またフィリピン国内の刑務所内でシャブの製造が行われている事は、警察も庶民も知る、公然の事実となっている。
⇒【写真】はコチラ(留置所の様子) https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1323522
シャブは0.01gが1パッケージ、1回分として扱われ値段は300ペソ(1ペソ=約2.3円)。ドゥテルテ前は1パッケージ200ペソだったので、ドゥテルテ後は100ペソ値上がりしたとのことだ。この背景には、麻薬戦争によって運搬に伴うリスクが高まり、末端に届く流通量が減ったことが理由にあげられる(ただし、人によっては今でも1パッケージ200ペソだという)。
前述の通り、ドラッグユーザーは一様に発覚を恐れている。ドゥテルテ後の強硬策により、すでに7000人以上が合法・非合法に殺害されたからだ。身内や友人知人が殺された麻薬関係者も多く、リスクを肌で感じている様子が垣間みられた。
とはいえ、吸引現場の撮影をアレンジしてくれたトライシクルドライバーによると、取材したマラテの下町では、「(大人の)50%はシャブをやっている」という話だ。また、使用者の一人は、「70%はドラッグをやっているだろう」とも言ってた。それが本当なら、一般市民への麻薬の浸透、依存度は凄まじいものだろう。

人々の日常生活に溶け込むドラッグの現場



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