第7代大統領 アンドリュー・ジャクソンの「功罪」から読み解くトランプ政権
すべての国の難民受け入れを120日間凍結し、シリア難民受け入れは無期限停止。加えて、中東やアフリカ7か国の一般市民は入国を90日間停止とするなど、トランプ大統領により発動された「入国禁止令」が大きな混乱を引き起こしている。
大統領就任直後にTPP(環太平洋経済パートナーシップ協定)からの離脱を表明し、「オバマケア(公的年金制度)」の見直しも発表するなど、次々とオバマ政権の残したレガシーを排除。1月25日には、メキシコ国境での「壁」建設に向けた大統領令にも署名したが、今回の「入国禁止令」を巡っては、各国首脳が懸念を表明するなど影響は全世界に拡大していると言っていいだろう。
浅はかな認識の下、思いつきで物事を決めているのか? それとも、深謀遠慮の末、意図してこれらの英断を下しているのか?
ビジネスマンとしてはタフネゴシエーターとして知られているものの、政治経験はまったくのゼロ。「庶民」の味方を自負し、彼を大統領の座に押し上げたのは、アメリカ中西部の「ラストベルト」(錆びついた一帯)や南部で暮らす「忘れられた人々(forgotten people)」と言われている。選挙期間中から、人種や性別、宗教、職業などに基づく差別や偏見をなくすことを前提とした「ポリティカル・コネクトネス(政治的公正さ)」をことごとく無視し、感情を剥き出しに敵を徹底的に叩くスタイルのため、トランプ新大統領は1830年代に第7代大統領を務めたアンドリュー・ジャクソンに「似ている」と話題になることがあった。
20ドル紙幣に描かれているジャクソン大統領は、スコットランド系移民の子で、幼い頃は田舎町の小さな学校で学び「十分な教育を受けられなかった」と伝えられている。13歳でアメリカ独立戦争を戦い、その後、ウェスタン・ディストリクトの法務官に任命されるなど着々とキャリアを重ね、1812年の米英戦争で「国民的英雄」となったことをきっかけに、庶民から圧倒的な支持を受け大統領にまでのぼり詰めるが、ビジネスマンとしての顔も持ち、生涯を通じて最大500人の奴隷を所有するほどの黒人奴隷農場主でもあった。先住民(ネイティブ・アメリカン)の「徹底虐殺」で軍歴を重ねている点は今も評価が割れており、特に、1838年に先住民であったチェロキー族を特定居留地に隔離して住まわせるため、後にオクラホマ州となる地域に強制移動させ、その途上で4000人以上が死亡した「涙の道」と呼ばれる歴史的悲劇を引き起こしたことでも知られている。
新大統領の胸の内を読み解くうえで、ジャクソンの「功罪」に学ぶべき点はあるのか? 今回、『移民大国アメリカ』(ちくま新書)などの著作でも知られ、アメリカ政治史を専門に活躍する成蹊大学の西山隆行教授に話を聞いた。
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『移民大国アメリカ』 止まるところを知らない中南米移民。その増加への不満がいかに米国社会を蝕みつつあるのか。米国の移民問題の全容を解明し、日本に与える示唆を多角的に分析する。 ![]() |
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