竹原ピストルがオヤジのハートを鷲掴みする理由【コラム二スト木村和久】
―[木村和久の「オヤ充のススメ」]―
― 木村和久の「オヤ充のススメ」その142 ―
竹原ピストルを御存知ですか? 彼の歌声は、すでにCMで何千回とオンエアされています。住友生命のCM、1UPを見たことがあるでしょう。しゃがれ声で「よ~、そこの若いの」と、若者を熱く応援していますよね。最近のバージョンは、サンド伊達が熱湯にびびっているのに、菅田将暉が躊躇なく熱湯に入り、1UPの成長を遂げるという設定です。
竹原ピストルの歌は、なぜか距離感が非常に近いです。通勤途中に問いかけてくるぐらいの近さですか。例えばこうです。電車を待っていた若い兄ちゃんに、あばれる君を20年老けさせたオッサンがいきなりホームで語りかけてくる。そんなシチュエーションを彷彿させます。
突如、オッサンは「そこの若いの、こんな自分のままじゃいけないって、頭抱えてんだろ!」と言ってくるから驚天動地。「何言ってんだ、このオヤジ」と思いつつも、迫力に押されて、つい「ハイ」と言ってしまう自分がいます。そしたらオヤジはニヤリとし「いいんだよ、そんな頭を抱えたままの自分でいろよ」と言って、去って行ったのです。あいつはいったい、なんなんだと。
そんなわけで、竹原ピストルの歌には、自分に対して語っていると思えてくるフレーズが沢山あります。この「自分にだけの語りかけ」は「太宰治」や「尾崎豊」が得意としており、誰でも一度はかかる青春の「熱病」や「はしか」みたいなものと言えましょう。
でも、はしかにオッサンがかかってしまうってあり得ない。それが竹原ピストルの凄さです。竹原ピストルのメッセージは、若者向けに見えますが、実は自分自身、つまりオヤジへのメッセージという二重構造になっています。「俺を含め、誰のいうことも聞くなよ」というあたり、自らも口うるさいオヤジになりたくない心情が吐露されています。
とにかく応援する側も、される側もハードルが低いのが救いです。「LIVEIN和歌山」という曲では、精神病の若者を応援しています。「薬づけでも生きろ~」と熱くシャウト。人間誰しも、何か漬けで生きているのだから大差ないよと諭します。そして、オレは何年先までも、毎年ずっと和歌山にライブしに来るから、お前も毎年ライブ見に来いよ、と滅茶苦茶ハートウォーミングです。
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