一人で田舎に住む母のことが心配。地元に帰って仕事を探すべきでしょうか?【男性31歳の悩み】
【佐藤優のインテリジェンス人生相談】
“外務省のラスプーチン“と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!
◆一人で田舎に住む母のことが心配です
ワンピース(ペンネーム) 会社員 男性 31歳
昨年から田舎の母が「階段で転んでしまった」とか「車をこすっちゃった」とか、ドジなエピソードをメールで送ってくるようになり、嫁と話の種にしていました。
ところが10月に母が私の自宅に遊びに来たときにびっくりすることがありました。おでこに痛々しい痣のようなものができていました。前日に天袋から物を取り出そうとしたときに、雪崩のように物が落ちてきて怪我をしたようです。
その話を聞いてから、田舎に帰った母が気にかかって仕方がありません。父は10年ほど前に亡くなっているので、何かあった時に誰もそばにいないのが心配で仕方ありません。
ですが、私自身は都内の零細企業の社員で、嫁と2人カツカツの生活なので、母を引き取る自信がありません(そもそも母は東京があまり好きではありません)。私は田舎に帰って仕事を探すべきでしょうか?
◆佐藤優の回答
老人介護システムは都心部に有利な構成になっています。もちろん、地方でも行政と介護団体関係者が創意工夫すれば、良好な介護システムを形成することができます。この点について、慶應義塾大学の井手英策教授たちのチームが興味深い事例を紹介しています。
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人間には、自分が生まれ育った地域で老いる自由がある。利用者が施設に閉じこめられることは、この自由の侵害以外の何物でもない。介護を地域に「ひらく」という発想は、人間が人間らしく老いていくという重要な基礎的ニーズと関わっている。
ここで注目しておきたいのは、在宅支援に関する取り組みである。ある印象的な認知症患者への支援事例を紹介しておこう。
認知症高齢者の一人暮らしと聞くと、私たちは、「徘徊」「火の不始末」「不衛生」等のリスクを真っ先に想像してしまいがちである。
「地域の絆」の職員が最初に取り組んだのは、利用者とともに近隣住民を戸別訪問し、その利用者にどんな行動が起きがちであるかを丁寧に説明して回ることだった。出入り禁止となっていたスーパー、徘徊時に使うタクシー会社、そして警察署にも丹念に同様の働きかけをおこなった。
これらの努力が積み重ねられるなかで、認知症高齢者は目に見えて地域に受け容れられていったという。スーパーの利用がふたたび認められ、タクシー会社からは徘徊時にただちに事業所に連絡が寄せられるようになった。警察も保護ののち、事業所へと送り届けてくれるようになった。(『分断社会を終わらせる――「だれもが受益者」という財政戦略』219頁)
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しかし、このような事例は、残念ながら、あまり多くないと思います。両親がいなくては、私たちは生まれてきません。行政の介護制度に問題があっても、富裕層ならば、カネで人を雇って問題を解決することができます。しかし、日々の生活に追われている大多数の庶民には、そのような選択肢もありません。

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’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
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