大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に学ぶ、理不尽な上司にも柔軟に対応できるスキルとは

自分が出した指示をコロコロと変える上司に、振り回されたことはありませんか?前回と言っていることが違ったり、しばらくするとまた元の指示に戻したりなど…。状況に応じて方針を変えてしまう上司にも柔軟に対処するには、どのようなスキルが必要なのでしょうか。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』をもとに、業務プロセス&オフィスコミュニケーション改善士である沢渡あまねさんに聞きました。

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』メイン画像(C)NHK

あまねキャリア株式会社 代表取締役CEO 沢渡 あまねさん

沢渡あまねさん業務プロセス&オフィスコミュニケーション改善士。『組織変革Lab』主宰。株式会社なないろのはな 浜松ワークスタイルLab所長、株式会社NOKIOO顧問ほか。人事経験ゼロの働き方改革パートナー。日産自動車、NTTデータなどで、広報・情報システム部門・ITサービスマネージャーを経験。現在は全国の企業や自治体で働き方改革、社内コミュニケーション活性、組織活性の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。趣味はダムめぐり。最新刊『新時代を生き抜く越境思考』をはじめ、『どこでも成果を出す技術 ~テレワーク&オフィスワークでなめらかに仕事をするための8つのスキル』『業務改善の問題地図』『職場の問題地図』『チームの生産性をあげる。』『仕事ごっこ~その“あたりまえ”、いまどき必要ですか?』『バリューサイクル・マネジメント』など著書多数。

方針をすぐ変える上司にどう対応すればいい?

源頼朝(大泉洋)は、源氏の一族でありながら平家に通じ、頼朝の挙兵の要請に応じなかった佐竹義政(平田広明)の討伐に出陣。だが、頼朝軍を前にしても全く引かない佐竹軍。

頼朝「まずは使者だ。戦わずしてすむなら、それに越したことはない」
義時「九郎殿であれば、どのように攻めますか?」

そこで、義経(菅田将暉)は敵の矢が届く範囲まで敵を引き付け、背後の岩場から攻める策を提案。頼朝も「見事な策である」と評価する。

頼朝「頼れる弟よ。わしは果報者じゃ。すぐに仕度を」

しかし、そこに敵側との交渉で砦が解かれた報告が入り、義経の策が実行に移されることはなく戦が終わる。残った義経は怒りで叫び、荒れ狂う。(10話より)

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』ドラマシーン(C)NHK
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』ドラマシーン(C)NHK

状況に応じた戦略変更はしかたないとはいえ、自分に任されたと思いきや、あっさりと方針を変えられてしまったとき、どう対応すべきなのでしょうか。

相手を尊重しながら自分の気持ちを伝える

現代のビジネスシーンに置き換えて考えた場合、相手を尊重しながら自分の気持ちを伝える「アサーティブコミュニケーション」といわれるコミュニケーションを取り入れることが非常に有効だと思います。

相手が上司とは言え、態度を変えたことによって心の準備ができていなかったことや、一生懸命取り組んでいたのにそれが無駄になってしまったことについては、さりげなく伝えた方がいいでしょう。

伝え方のポイントは、方針変更したことによって発生するインパクトをファクトとして示す。例えば「すでに3日かけて準備を進めていましたし、取引先も動かしていました」という事実を伝えた上で、「でも、方針変更ということで理解しました」と言葉を添えてみてはいかがでしょうか。

上司の視点からすると、「よし、この新しいアイデアでいこう!」と方針を覆してしまいたくなるときはあります。でも、メンバーから「これだけ時間をかけてきたんです」って言われてハッとすることがあります。「おっしゃることはわかりますが、そのやり方だとつらいです」と言ってくれると、メンバーの状況や大変さが上司も理解できると思います。

逆に「嫌だな」と思っても何も言わずにそのまま我慢してしまっては、上司も悪気なく方針転換を繰り返すことになるでしょう。もちろん、ファクトだけでなく、気持ちの部分も添えて相手に知ってもらう行動をするのが重要です。

部下の立場として感情的にならないようにするには、なるべく客観視しましょう。そのためには、以下のような方法で対処してみましょう。

1.書き出す

まず、相手の要求をホワイトボードやチャットなどに書き出しましょう。

2.復唱する

「今までの方針とやり方を変えるということですね?」とオウム返しで確認します。自分で言いにくければ、第三者にファシリテーター役になってもらい、客観的な立場で状況を俯瞰してもらうのもよいでしょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

失敗や過ちを部下のせいにする上司にどう対処する?

挙兵に失敗した以仁王に続き、追討を狙って挙兵した頼朝。しかし、石橋山の戦いで大敗してしまう。落ち延びた先で、頼朝は敗走の責任をことごとく部下のせいにする(5話より)。

「北条に頼ったのが間違いであったわ! 時政、なんとかせい! わしはここで死ぬわけにはいかんのじゃ!」
「武田はダメだ! あいつに頼るくらいならここで自害する!」
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』ドラマシーン(C)NHK
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』ドラマシーン(C)NHK

失敗や過ちを部下のせいにされたとき、現場ではどう対処すればよいでしょうか。

自分の頑張りを周りに評価してもらおう

こうした場面においては、うまく対処するためのポイントが2つあります。

1.その場で上司とうまくやる方法

上司の判断の誤りを指摘するのは得策ではありません。過去の失敗を否定したところで、より腹を立ててしまい、こちらの立場も悪くなるだけです。これから先の話、未来の提案を投げかけます。過去と現在の話には触れず「ではこうすればいいですか? こんな作戦はどうでしょう?」と、どんどん提案していきましょう。

解決策が思い浮かばないときは、一度クールダウンする戦略もおすすめです。紛糾している会議でも、「ここで休憩を取りましょう」と提案して景色を変えることで上司も落ち着きを取り戻す場合があります。その後、クールダウンした上司から前向きな提案が出てくることもあるはずです。

つまり、上司の行動を否定するのは、いわば火に油を注ぐ行為です。まったく違う角度の新しい提案を行い、クールダウンをすることで冷静さを取り戻しましょう。

2.長い目で見たときに、周りの人の評価を得る方法

心ある周りの人(上司の上司、他部署の役職者、若手、お取引先など)は、あなたが上司に振り回されながらも、上手く立ち回っている姿を見て、その対応力や判断力を評価したり、味方になってくれたりするはずです。そうすれば、相談にのってもらえたり、助け舟を出してくれたり、ゆくゆく良い仕事にめぐりあえることもあります。

仮に感情の赴くまま上司を攻撃したとしたら、「自分の部下になったら怖い」と思ってしまう人もいるかもしれません。それは自分のキャリアにとって大きな損失。長い目で見たら、周りの人に今あなたのパフォーマンスを知っておいてもらった方が得策です。

例えば上司について困っていることを、他部署の信頼できる人に相談してみてはいかがでしょう。その際は単なる愚痴ではなく、自分はこうしたい、こう思う、こう行動している、と解決へ向けて前向きに行動している具体的なエピソードを話すとよいでしょう。

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自分のプライドを優先する上司の行動をどう理解する?

北条義時(小栗旬)は、源頼朝の軍勢を拡大しようと、2万騎の軍勢を持つ上総広常(佐藤浩市)を三顧の礼で招聘します。苦労して呼び寄せた、戦況を一変させる鍵を握る人物に対し、頼朝は訪問が遅れたことを理由に、「遅い! 無礼にもほどがある!」と一喝する(7話より)。

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』ドラマシーン(C)NHK
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』ドラマシーン(C)NHK

ビジネスシーンでいえば、招聘したプロフェッショナル人材に対し、いきなり怒鳴りつけて権威を示す行動。結果的に、「あれは棟梁の器」と認めさせたものの、義時としては気が気ではなかったのではないでしょうか。

そのプライドに軸とポリシーはあるか

このときの頼朝の行動を分析すると、おそらく自分のポリシーにストイックだっただけではないでしょうか。戦いにポリシーがあって、それに反した上総広常の行動に怒ったのだと思います。だからこそ、一喝された上総広常も、頼朝のやり方を受け入れ感服したのではないでしょうか。

軸やポリシーのないままに感情をむき出しにする人は厄介ですが、軸がある人には論理立てて向き合えば強い味方になってくれます。たとえ理不尽なことを言う相手でも、その理不尽さやプライドに軸があるかどうか。その軸を理解することが、前向きに対処するための鍵となります。軸やポリシーを理解できれば、感情を向けられた側も冷静に向き合うことができるでしょう。

上司に厳しい指摘を受けても、思わず苛立ってしまう場合と、全く苛立たない場合があるでしょう。そういうとき、部下を苛立たせない上司は、最初は感情的に怒ったとしても、その後怒った理由を説明してくれるケースが多いはずです。

そして最後には、「次はこうすればいい、こうすればもっとよくなる」という提案・アドバイスをしてくれたはずです。そうした上司の場合は、厳しい指摘を受けても納得できるはず。「怒った理由」がその組織の考え方や、相手の軸を顕著に表します。理不尽さの中にある軸やポリシーを見抜ける人になりましょう。

【まとめ】理不尽な上司の指示にも対応できる3つのスキル

このドラマでは、のちの鎌倉幕府の中心的存在となっていく北条義時。
頼朝に振り回されながらも調整役として奔走し、あらゆる揉め事や課題に立ち向かうことで、成長していく北条義時には、おそらく次の3つのビジネススキルが身につくはずです。

1.クリティカルシンキング

批判的思考ともいいますが、相手の目的やビジョンを鋭く理解し、それらと照らしあわせたときに相手の言動が妥当か、そして自分はどんな行動をすればいいのかを俯瞰して考えられるようになるはずです。

2.アサーティブコミュニケーション

相手に自分の感情を伝えつつ、景色をあわせながら、前向きに物事を進めていくスキルです。ファクトと感情を分けて伝える力ともいえます。

3.関係構築力

目の前の相手と1対1で対峙するのではなく、周りに理解者を増やしながら問題を解決していくスキルです。

理不尽な上司の対応にお悩みの方は、ぜひこうしたスキルを使いながら、北条義時のようにキャリアアップを目指しましょう。

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<番組情報>

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合 日曜20時/BSプレミアム 日曜18時/BS4K日曜9時 再放送 NHK総合 土曜13時5分/BS4K 土曜8時)

源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男 二代執権・北条義時。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。三谷幸喜が贈る予測不能エンターテインメント!脚本:三谷幸喜/出演:小栗旬、新垣結衣、菅田将暉、小池栄子、中川大志/山本耕史、中村獅童/佐藤浩市、坂東彌十郎、宮沢りえ、大泉洋、西田敏行 ほか

WRITING:石川香苗子
新卒で大手人材系会社に契約社員として入社し、2年目に四半期全社MVP賞、年間の全社準MVP賞を受賞。3年目はチーフとしてチームを率いる。フリーライターとして独立後は、マーケティング、IT、キャリアなどのジャンルで執筆を続ける。IT系スタートアップ数社のコンテンツプランニングや、企業経営・ブランディングに関するブックライティングも手がける。学生時代からシナリオ集を読みふけり、テレビドラマで卒論を書いた筋金入りのドラマ好き。テレビやドラマに関する取材記事・コラムを多数執筆。
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