動き出す「洋上風力発電」…40年に3000万kW以上へ、カギ握る機器国産化率の向上
日本の洋上風力発電が本格的に動き出す。2030年代には浮体式の整備も具体化する見通しで、排他的経済水域(EEZ)を含めて大量のウインドファームの建設が期待される。国は40年に洋上風力で3000万キロワット以上を目標に設定。欧州連合(EU)が先行する洋上風力について、日本風力発電協会の上田悦紀国際部長は「中心市場が日本を含む東アジアになる可能性は大きい」との見方を示す。
世界風力会議(GWEC)などは世界の洋上風力の新規導入を25年に2400万キロワット、30年に3200万キロワットと予測している。浮体式をめぐっては、日本が福島県沖での国家事業で実証した10年前の時点で日本が世界をリードしていた。現在は欧州で、バラストで安定するスパー型の出力8000キロワット風車11基が完成。半潜水状態で浮遊するセミサブ型2件も導入予定だ。
一方、日本の洋上風力の導入量は21年までで約5万キロワット。港湾区域で着床式の設置が始まり、一般海域に拡大。全国23海域の候補地で170万キロワット分は事業者が決まっている。40年には洋上が累計3000万キロワット以上と陸上に並ぶほか、浮体式が本格化して4500万キロワットに増える可能性もある。
浮体式はノルウェーやスペイン、フランスでパイロットプロジェクトが進行中だ。これに対して日本では戸田建設が日本初の商用ウインドファームを長崎県五島市沖で進める。世界初のハイブリッドスパー型で、同社など6社が設立した五島フローティングウインドファーム(長崎県五島市)が、26年1月に完成させる予定だ。
スパー型は低重心・高浮心で安定性が高い。円筒形の単純構造で製造コストも低い。EEZでスパー型の長所を発揮できる。戸田建設のハイブリッドスパー型は上部が鋼製、下部はコンクリート構造で浮体重心を下げ、安定性を高める。同社では「30年代にスパー型で単機定格容量1万数千キロワット級風車の大規模ウインドファームを実現、発電コストを低減していく」(小林修執行役員土木技術統括部副統括部長)という。
東京ガスは20年に、浮体式の事業化に向けて米プリンシプル・パワー(カリフォルニア州)に出資。ポルトガルの浮体式洋上風力事業にも参画し、国内での事業化に向け経験やノウハウを蓄積している。プリンシプル・パワーのセミサブ型浮体構造はポルトガル沖で8000キロワット級3基が稼働。国内では30年代の実装をにらみ、造船所や港湾施設での浮体式基礎の量産化などを検討する。
国内勢は洋上風力で国内調達率60%を目指している。戸田建設はスパー型による商用ウインドファーム事業で国産化率を大きく高められるとみる。洋上風力をライフサイクルコストでみると機器製造が30%、建設とオペレーション&メンテナンスが70%の比率だ。国産化率を引き上げるには、日本メーカーが不在の風車生産で工場の誘致が期待される。そのためにも国は浮体式洋上風力で毎年安定した件数を実現する長期のロードマップを示すことが重要だ。
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