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ペロブスカイト導入も…「太陽光発電」基幹電源へ必要なこと

分散エネルギーの時代 #1
ペロブスカイト導入も…「太陽光発電」基幹電源へ必要なこと

PPA(電力販売契約)での太陽光発電の設置が進む

AI普及で電力需要急増

国の第7次エネルギー基本計画では2040年に再生可能エネルギーが40―50%に達し、火力発電を抜き中核エネルギーになる。コージェネレーション(熱電併給)も含む分散電源が60%程度を占め、従来型の大規模電源を上回る。AI(人工知能)やデータセンター(DC)の利用増加で電力需要が急増する中、分散エネルギーの時代に向かう。

第7次エネルギー基本計画で太陽光発電(PV)の電源構成に占める比率は、従来の30年に14―16%から、40年に22―29%へ目標を大きく引き上げた。国際エネルギー機関(IEA)によると、23年度の国内導入量は6300万キロワット(累積9100万キロワット)。年間500万―700万キロワットの導入が定着している。主流の結晶シリコン型は変換効率が単結晶で20―25%。日本が開発したペロブスカイト系の市場導入も始まった。

PVは10年代の大規模太陽光発電所(メガソーラー)から、40年代は基幹エネルギー化に向け需要家が自ら導入する分散電源として家庭や工場・倉庫、公共施設、インフラ、農山村、公有地へ市場が拡大する。屋根置き型は自家消費型へ、地上設置型は営農型、公有地や鉄道、道路などの施設活用が見込める。資源総合システム(東京都中央区)の一木修社長は「PVの利活用産業と連携を強化し、年1000万キロワット以上でバランスの取れた市場形成が必要」と話す。

PV産業には高性能かつ高機能なPVシステムの低コスト化や安定供給が必要だ。かつて結晶系で70%台を占めた日本の世界生産シェアが現在1%を切る中、最後の国産結晶系メーカーの京セラは長寿命・高信頼性を実現した太陽電池(単結晶型)を提供する。京セラの池田一郎エネルギーソリューション事業部長は「PVは30年以上の長期活用が重要。当社の太陽電池は市場ニーズに十分応えられる」と自信を見せる。

同社はモジュール生産を滋賀野洲工場(滋賀県野洲市)に集約。生産規模は年30万キロワットで、長寿命・高品質の太陽電池の70%を住宅、30%を産業向けに供給する。同工場ではPV導入でカギとなる蓄電池について、住宅向けを中心に年2万台のクレイ型リチウムイオン蓄電池の生産体制も整える。

国はペロブスカイト太陽電池で1キロワット時7円の価格実現に向け、40年に2000万キロワットの導入を掲げる。結晶系でも国内に新工場を立地し、結晶系とペロブスカイトを積層した「ペロブスカイト/シリコンタンデム型」の発電効率を30%台に改善することを見込む。

産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所(FREA)・再生可能エネルギー研究センター太陽光システムチームの大関崇研究チーム長は、「40年代には大型も含め、荒廃農地の活用、営農型などにおける地上設置の可能性が再び高まる」と指摘する。PVを長期間安定して活用し、日本の主力電源とするため、「発電コストを下げ、企画調整、きちんとした設計・施工、安定した運営・管理でリサイクルまで考えた最適システムを作り上げ、電源の価値を上げていく」としている。

【5刷決定】曲げられる「次世代型太陽電池」がよくわかる新刊「素材技術で産業化に挑む ペロブスカイト太陽電池」(技術監修:宮坂力)好評発売中
日刊工業新聞 2025年03月13日

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分散エネルギーの時代
分散エネルギーの時代
国の第7次エネルギー基本計画では2040年に再生可能エネルギーが40―50%に達し、火力発電を抜き中核エネルギーになる。AI(人工知能)やデータセンターの利用増加で電力需要が急増する中、分散エネルギーの時代に向かう。太陽光・洋上風力・地熱…再エネの現在地を追った。

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