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「洋上風力」事業者撤退防ぐ…経産省・国交省、事業環境の悪化懸念で公募制度見直し

物価変動、電力価格に反映

政府は洋上風力発電事業者の撤退を防ぐため、事業者公募の制度を見直す。物価変動分の一部を電力価格に反映する「価格調整スキーム」を導入し、インフレに伴う建設費などの上昇に対応しやすくする。一方、事業者が示した計画から遅延した際、段階的に没収する保証金を増額する。洋上風力発電は再生可能エネルギー導入拡大の切り札として期待されるが、欧米を中心に事業環境が悪化している。制度のあり方を見直し事業者の予見性を高めると同時に、投資の完遂を促す。

経済産業省と国土交通省は国の指定海域における洋上風力発電事業者の公募制度の運用指針を改訂した。新制度は4回目となる次回公募から適用される予定で、公募を行う海域ごとに定める指針で詳細を公表する。これまでの落札事業者も一定条件を満たせば適用可能になる見通しだ。

現在の仕組みでは事業者が入札時に想定した電力価格に物価変動の影響を反映できない。新たな仕組みでは建設期間における資材価格や施工費用などの上昇分について、公募実施前年の価格水準に対して40%を上限に電力価格に反映できるようにする計画。価格下落時にも反映させる。

事業者による確実な投資に向けて、保証金の増額も行う方針だ。指針の議論の中で、落札後12カ月以内に納付する第3次保証金は発電容量1キロワット当たり1万3000円から、同2万4000円に増額する案や、サプライチェーン(供給網)の影響など半年ごとの評価に応じて没収を段階的に判断し、2年以上の遅延で保証金を全額没収する案が示された。

政府は将来、再生エネを最大電源とする方針を示しており、再生エネの導入拡大に向けて洋上風力への投資を支援している。ただ導入が先行する欧米では、インフレによる採算見通しの悪化から計画縮小や企業の事業撤退が相次いだ。日本は主要部材の多くを欧米から輸入する。資材価格高騰や供給網の先細りなど、事業環境の悪化が懸念されており、制度的な対応を急ぐ。

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日刊工業新聞 2025年02月04日

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