海外で一部プロジェクト中止も…「洋上風力」に逆風、日本はどうする?
事業統合や金融支援 活路探る
日本の再生可能エネルギー導入拡大のカギとなる洋上風力発電が課題に直面している。理由は世界的な建設コストの上昇だ。海外では一部のプロジェクトの中止も起きている。すでに洋上風力の開発が進んでいる欧州などと違い、日本はこれから開発を本格化させるタイミングというのが特に悩ましいところだ。官民で解決策を考える必要がある。(梶原洵子)
このほど公表された第7次エネルギー基本計画(エネ基)の原案では、2040年度の電源構成として再生可能エネルギーで4、5割程度(22年度実績は21・8%)という野心的な見通しが示された。太陽光発電はすでに多くの設備が国内に設置されているため、今後の再生エネの拡大は洋上風力への期待が大きい。
経済産業省と国土交通省は24年12月下旬、大規模洋上風力の第3弾入札「ラウンド3」において、青森県沖は発電大手のJERA、山形県沖は丸紅を幹事社とする企業連合を選定した。両海域は再生可能エネルギー海域利用法で促進区域に指定されており、事業者は最大30年間占有できる。今後も公募は継続される計画で、北海道や東北を中心に促進区域や有望区域などが整理されている。
だが、洋上風力発電を取り巻く事業環境は急激に悪化している。電気事業連合会(電事連)の林欣吾会長は40年度の電源構成で再生エネ4、5割を目指すには「洋上風力を主役にせざるを得ない」とした上で、「インフレやサプライチェーン(供給網)の先細りなどから洋上風力発電は厳しい状況にある」と語った。
事業者側のビジネスモデルの工夫やコストダウンに加え、国にも支援を求めたい考え。「事業者が予見性を高めていくために行政に対し投資環境をよくすることや、ファイナンスのバックアップをしてもらう制度を求めていきたい」(林会長)と述べた。
一方、発電大手のJERAは英BPと洋上風力発電事業の統合を決めた。厳しい環境の中、規模拡大で競争力を高める狙いだ。子会社を通じ、9月末をめどにBPと50対50の出資比率で新会社「JERA Nex bp」を設立する。開発中を含む総持ち分容量は世界4位の約1300万キロワット規模となる。
両社は開発資金として30年末までに最大58億ドル(約8700億円)を新会社に出資し、資金調達も組み合わせて日本、欧州北西部、豪州を中心に開発計画を推進する。
国内の企業連携も活発で、次世代の洋上風力発電技術として期待される「浮体式」の実用化に向けて「浮体式洋上風力技術研究組合(FLOWRA)」などが活動している。
エネルギー政策に詳しい国際大学の橘川武郎学長は「再生エネはやり方を変えなければならない」と指摘。海外では地元住民が風力発電計画の株主となることで計画への賛同が増え、鳥の飛来状況などの風力発電に役立つ情報が集まりやすくなったという。洋上風力クライシスの中、どのように再生エネを推進するか。官民の知恵が問われる。
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