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保険の成約率10倍以上に…日本生命、顧客開拓にLINE活用

保険の成約率10倍以上に…日本生命、顧客開拓にLINE活用

日本生命保険のLINE公式アカウント

日本生命保険は対話アプリケーションのLINEを活用し、保険の成約率向上につなげる。日生のLINE公式アカウントで友達登録したユーザーのうち、結婚する予兆のある層にピンポイントで保険を提案したところ、成約率がLINEを使わない提案手法に比べ、10倍以上になったという。結婚は保険を検討する時期の一つで、タイムリーに提案できた点が奏功した。今後は営業職員の採用にもLINEを生かす方針だ。

LINEの運営会社はショッピングサイトの購買履歴などから傾向をつかみ、消費者をさまざまなセグメントに分類する。日生は自社のLINE公式アカウントの友達のうち、LINEヤフーが「結婚予兆セグメント」に分類した層にアプローチ。結婚などのライフイベントに関するアンケート案内を配信した。回答すると家電などの景品が当たるキャンペーンに応募できるようにし、約10万人に送ったところ、8%弱の7603人から回答を得た。

回答を分析したところ、「本人が結婚あり」と答えた人のうち、24・7%は担当の営業職員が結婚のことを知らなかった。「本人の結婚予定はないが、家族が結婚あり」と答えた人のうち、47・8%は職員が認知していなかった。LINEの活用により、「営業職員が把握できていなかったライフイベントの変化を知るきっかけになった」(日本生命営業教育部の渡部祐士部長)という。

アンケート結果は営業職員と共有し、結婚予兆のある見込み客に対し保険を提案したところ、成約率が従来比10倍以上の14・6%に高まったという。

日生は同様の手法で、LINEヤフーの転職活動の検討セグメント層に仕事に関するアンケートを流す施策も実施した。配信から約4時間で応募上限の1万人に到達したという。従来の転職フェアなどでの採用活動では、「数十人しか集められなかった」(渡部部長)とし、採用でも有用性が確認できたとしている。

保険業界ではコロナ禍を経てLINEをマーケティングや顧客との関係性構築に生かす事例が相次ぐ。T&D保険グループのAll Right(東京都中央区)は自社のLINE公式アカウントを通じて共済サービスや健康関連サービスを提供する。第一生命保険はLINEや電話などを利用して営業職員を補完するアフターフォローの専門部隊を設置した。

NTTドコモのモバイル社会研究所によると、10―60代のスマートフォン所有者の8―9割がLINEを利用しているという。LINEは1人ひとりの消費者にピンポイントで効率的にアプローチできる特徴がある。営業職員の地縁血縁に頼った保険の販売手法に陰りがある中、LINEなどデジタルツールを活用した市場開拓が業績拡大のカギを握っている。

日刊工業新聞 2025年01月10日