湘南エリアを中心に駅弁を販売し、「鯵の押寿し」とサンドウィッチが有名な大船軒。1898(明治31)年に大船駅で営業を開始した老舗だ。
当初、サンドウィッチに使うハムは輸入品だったが、後に国内で「鎌倉ハム」の製造を開始し、評判となって注文が殺到したことから「鎌倉ハム富岡商会」を設立したという逸話もある。相模湾の鯵を使った押寿し弁当も人気で、湘南のご当地名物にもなっている。その大船軒の立ち食いそば屋を訪ねてみた。
JR藤沢駅の東海道線ホーム、階段の下側のスペースに「大船軒」の店舗がある。入口の天井が低く、腰をかがめないと入れないようなコンパクトな立ち食いそば屋だ。店の中は4~5人入れる程度のスペースで、知らない者同士、肩を寄せ合いながらそばをすする。
今回は「わさび菜ごぼう天そば」(400円)をいただく。やわらかい麺に甘辛い出汁(だし)。これぞ駅そばという印象だ。天ぷらはわさび菜の風味とごぼうの歯ごたえが楽しめる。そば以外にうどんや中華そば、カレーライス、丼物などもラインナップされている。
「大船軒」の立ち食いそば屋はかつて大船駅や茅ケ崎駅にもあったが、時代の流れか、東海道線の駅ホームにある店舗は藤沢駅のみとなってしまった。古き良き昭和の立ち食いそばを味わうなら、ぜひ立ち寄ってほしいお店だ。