コーヒーを飲むのが好きだ。缶コーヒーはもちろん、コンビニのコーヒーは手軽に本格的な味を楽しめるので手放せない。学生時代はコーヒー店に4年間勤め、体からコーヒーの匂いを発するくらい触れていた。魅力あるコーヒーは、豆によって味が変わる。数ある豆の中から、自分のお気に入りの味を見つけ出すことに面白みがあったのだ。今では飲む量が減ったものの、多い日には2Lのコーヒーを飲む日もある。

コーヒー好きな方なら、「サードウェーブコーヒー」という名前はご存じだろう。簡単に言うと、バリスタが目の前で一杯ずつ丁寧にコーヒーを淹れてくれるスタイルのことだが、「コーヒーは好きだけど、わざわざカフェに行くために遠出してコーヒーを飲みに行くのはばからしい」と思っている人もいるはずだ。しかし、そんな人にこそ伝えたい。

コーヒーが好きなら、遠出をしてでも飲むべきコーヒーがあると!!

特に「サードウェーブコーヒー」の魅力は味だけではない。内装や雰囲気などの良さもある。この連載では、サードウェーブコーヒーにどっぷりとはまった筆者が東京近郊でおいしいコーヒーが飲めるカフェを紹介していく。

記念すべき第1回は、「コーヒー業界のApple」とも呼ばれる「ブルーボトルコーヒー」だ。同店は「サードウェーブコーヒー」という文化を日本に持ち込んだカリフォルニア発のカフェ。早速その看板になる一杯「ベラ・ドノヴァン」(税別450円)を見てもらおう。

「ベラ・ドノヴァン」(税別450円)

「ベラ・ドノヴァン」は、インドネシア産やエチオピア産の豆など合わせた「ブルーボトルコーヒー」を代表するブレンド。「産地で何か変わるのか?」と思うかもしれないが、この産地の名前は人に話すと通っぽく聞こえるので、覚えておくと「こいつ知ってるな」感が出る。

気になる味はというと……、すごくすっきり。はじめにしっかりとした苦味を感じるが、後味に華やかな酸味が残る。この後味がすっきりとした印象をもたらしてくれるのだ。コーヒーは冷めてしまうと、酸っぱくなってしまうことが多いが、この「ベラ・ドノヴァン」は時間がたつとコクが増していた。

すごくすっきりとしたブレンドだ

では、コクとすっきり感を併せ持つこのコーヒーはどこで飲めるだろうか? それは、東京都江東区にある「ブルーボトルコーヒー 清澄白河ロースタリー&カフェ」だ。東京メトロ半蔵門線「清澄白河」駅から徒歩7分程度で、清澄通りから少し住宅街の中に入ったところに位置していた。

「ブルーボトルコーヒー 清澄白河ロースタリー&カフェ」(東京都江東区)

正面に看板などがないのでうっかり通り過ぎてしまう可能性もあるが、白塗りの壁にロゴが1つ、このシンプルなたたずまいが「コーヒー業界のApple」といわれる所以なのかもしれない。ローストしたての豆の香りが店の外にまで漏れているので気がつくだろう。

正面に看板などないのでうっかり通りすぎてしまいそうだ

窓が多く開放的

天井が高いのでかなり広く感じる

店内は天井が高く、入り口とバーカウンターの裏はガラス張りなので、かなり開放的。太陽の光がたっぷりと入るので、晴れている日は気持ちよさそう。

カウンターの奥には焙煎機が置いてあるので、焙煎仕立ての香りがたっぷり

カウンターの奥には焙煎機が置いてあり、焙煎したての豆がたくさん保管されていた。コーヒーが焙煎されている音や香りが楽しめるのもこの店舗ならではだ。この香りをずっとかいでいたい、というかもうここに住みたい。

バーカウンターでは、バリスタがハンドドリップでコーヒーを淹れている様が見られる。バリスタのこの作業をずっと眺めているだけで1日が過ぎてしまいそうだ。自分のコーヒーが目の前で淹れられているのを見るのは新鮮だし、何より淹れている時のバリスタの技術がすばらしいのでほれぼれしてしまう。自分で淹れるときはこんなに均一に湯を注げない。

バリスタが目の前で丁寧に淹れてくれる

エスプレッソを抽出するマシーンにもブルーボトルコーヒーのマークが

同店では、コーヒーに合わせた軽食も用意している。表面にザラメのような砂糖がかかった「リエージュワッフル」(税別500円)は焼きたてで、食べてみると思った以上に甘さは控えめ。コーヒーを抽出するペーパーフィルターに包まれていた。

「リエージュワッフル」(税別500円)

コーヒーが飲めないという人向けには、夏季限定で「レモネード」(税別550円)も販売されているので、こちらもぜひ飲んでみてほしい。

「レモネード」(税別550円)

店内では、コーヒー豆のほかコーヒーミル、ドリッパー、マグまで販売されている。ほとんど全てにブルーボトルコーヒーのロゴマークが描かれており、トートバッグに至っては、この清澄白河店の外観をスケッチしたデザインになっていた。

グッズには「ブルーボトルコーヒー」のロゴマークが入っている

トートバッグは清澄白河店の外観がデザインされている

ブルーボトルコーヒーは現在、清澄白河、青山、新宿の3店舗がある。秋になったら、六本木や品川、中目黒にも店舗を構える予定とのことなので、身近になるのでは?

家でも「ブルーボトルコーヒー」を飲んでみよう

それにしても今回飲んだ「ベラ・ドノヴァン」は、酸味が爽やかで目覚めの1杯にぴったりのコーヒーだった。これを毎朝飲めるならば、毎朝の出社するときのモチベーションも上がる事だろうに……。

そうだ、店舗で販売しているコーヒー豆を買えば、家でも簡単にブルーボトルコーヒーの味を楽しむことができるじゃないか!

「淹れ方が分からない!」という人のために、家でどうやってコーヒーを淹れるのか紹介しよう(※こちらは普段筆者が淹れている方法なので、実際に「ブルーボトルコーヒー」で紹介している方法とは異なる点もある)。

用意する器具は、コーヒーを抽出するための「ドリッパー」、お湯を注ぐための「ケトル」、抽出したコーヒーを受け入れる「サーバー」、コーヒーを抽出する「ペーパーフィルター」の4種類。コーヒー豆はブルーボトルコーヒーの店舗で販売しており、家にコーヒー豆をひく「ミル」がない場合は、店舗でひいてもらうことが可能だ。今回は、「毎朝飲みたい!」と思うほどほれてしまった「ベラ・ドノヴァン」(200g/税別1,500円)を使用する。

コーヒーを淹れるための器具。左から、「サーバー」「ドリッパー」「ケトル」

「ベラ・ドノヴァン」(200g/税別1,500円)をひき、「ペーパーフィルター」に入れた

それでは、早速コーヒーを淹れてみよう。まず「ドリッパー」の中に「ペーパーフィルター」をセットし、コーヒー粉を17g(約200ml分)を入れる。用意する湯の量は約240ml。「ペーパーフィルター」やコーヒー粉に吸収されるので、少し多めに沸かしておこう。90度~93度がちょうどいい温度なので、使用するのは沸騰して少し置いたものを使用する。

抽出したてのコーヒーを冷まさないように、「サーバー」に湯を入れて温めておくのも忘れてはいけない。温まった「サーバー」に「ドリッパー」をセットすれば準備は完了だ。

「ベラ・ドノヴァン」(200g/税別1,500円)をひき、「ペーパーフィルター」に入れた

まずは、コーヒーの粉の中心部に円を描くように1周分湯を注ぎ、30秒ほど蒸らす。蒸らしたことで、コーヒー粉の中に含まれる二酸化炭素が放出され、十分に抽出できるようになる。

最初に湯を1周半ほどのせよう

炭酸ガスが放出されるため膨らむ

蒸らし終わったら、コーヒー粉の中心で小さな「の」の字を書くようにくるくると湯を注いでいく。2分から3分ほどかけてゆっくりと抽出してほしい。

「の」の字を書くように湯を注いでいく

湯を注ぐ量は一定にできるようにしよう

適正な抽出量になったら、「ドリッパー」をはずす

「サーバー」の1杯分のメモリに達したら「ドリッパー」をはずす。マグを「サーバー」と同じように湯を入れて温めておき、抽出したコーヒーを注げば完成だ。

抽出し終わったコーヒー粉は土手のようになっている

「サーバー」からマグに注げば完成だ

自宅でも簡単にコーヒーが飲める

アイスコーヒーも自宅で抽出しよう!

暑い夏の日には、キリっと冷えたアイスコーヒーを飲めるとうれしい。このアイスコーヒーも先ほどのコーヒー器具を使えば簡単に作ることができる。

アイスコーヒーを作る時は、「サーバー」のメモリの高さまでコーヒーを入れておく。抽出したコーヒーの熱で氷が溶けるので、コーヒーの抽出量は少なめにする。コーヒー豆の量は1杯(200ml)に対し、17g。

「サーバー」の中に氷を入れておく

抽出する量が少ないので、コクをしっかりと出すためには時間をかけてゆっくりと抽出する必要がある。まず蒸らし時間を少し長めに40秒ほど取り、コーヒーの苦味をしっかりと引き出す。蒸らし時間が短いと酸っぱくなってしまう恐れがあるので、じっくり待ってほしい。蒸らしが終わり、湯をゆっくりと注ぐのも、およそ3分ほどかけてほしい。

ゆっくりと抽出する

「サーバー」を軽くかき回して、温度を均一にすれば、アイスコーヒーが完成する。

見た目涼しげなアイスコーヒーができる

家でのんびりとしたコーヒータイムを楽しもう

器具さえそろえれば、簡単に本格的なコーヒーを淹れられる。しかし、やはり店舗の雰囲気の中コーヒーを飲むのは格別だろう。

丁寧に抽出されたすっきりとした味。店中に満たされるローストの香り、店員がハンドドリップで淹れる音、さまざまな感覚を満たされる店内は、やはり行くべきだろう。足を伸ばしてでも行く価値のある店舗だった。