ライターの山本です。今年五十路に到達しました。すると、自分でも驚くほどに健康関連のグッズとテクノロジーに興味惹かれるようになりました。最終的には攻殻機動隊に出てくる「義体化」をぜひ自分もしてみたいと思う今日この頃ですが、まずはその前にヘルステックの最先端について見識を深めるべく、来る2025年に向けて精神統一を図っています。

2024年に筆者が一番「買って満足」している製品は「Apple Watch Series 10」です。本機に新しく搭載された「睡眠時無呼吸の通知」の機能を使いたかったからです。

  • 「睡眠時無呼吸の通知」機能を新しく搭載したApple Watch Series 10が、筆者の満足度No.1の製品です。価格は59,800円から

取材を通じて睡眠時無呼吸症候群のリスクを発見

睡眠時無呼吸の通知は、Apple Watchを就寝中も身に着けながら睡眠中に発声する「呼吸の乱れ」を調べる機能です。Apple Watchが内蔵する加速度センサーが呼吸時特有の身体の動きを検知して、中等度から重度におよぶ睡眠時無呼吸の兆候が検出された時に通知で知らせてくれます。

Apple Watch Series 10が2024年9月に発売される前に、筆者は日本のスタートアップ企業であるサプリム(SapplyM)が提供している「Sleep Doc」(スリープドック)というサービスを取材しました。マイナビニュースに掲載されているレポートはこちらです(着けて二晩眠るだけ。睡眠時無呼吸症候群のリスクを「Sleep Doc」でチェックした)。

  • 夏に筆者が体験したサプリムのサービス「Sleep Doc」で睡眠時無呼吸症候群のリスクを見つけました

スリープドックも「加速度センサー」と「ジャイロセンサー」を内蔵する専用のセンシングデバイス、またはApple Watchを身につけて眠りながら呼吸動作によって生じる体の微弱な振動を計測します。計測結果のデータとユーザーの自己診断表の回答をまとめたレポートが提供されるのですが、筆者が受けた判定は「中リスク」でした。

家族によると「寝ている間にいびきをかく」「呼吸が一瞬止まっているように見える」等、睡眠時無呼吸症候群を疑うべき兆候が散見されていただけに、そこそこショックは受けたものの、スリープドックの判定を疑うことはしませんでした。

ただ、夏の間がものすごく忙しくなってしまったので、すぐには病院に足を運べないままでいたところ、9月に睡眠時無呼吸の通知機能を搭載するApple Watch Series 10が発表されました。

  • 46ミリケースのアルミニウム“ジェットブラック”を選択。今年のApple Watchはこのカラバリ一択だったと思います

Apple Watchで「呼吸の乱れ」をセルフチェック

睡眠時無呼吸の通知を受けるには30日間の計測が必要です。アップル新製品レビューの取材と執筆をひと通り終えた後、9月の末ぐらいにApple Watch Series 10を買って本格的に睡眠時無呼吸症候群のセルフチェックを始めました。

睡眠時無呼吸については「眠る前にアプリを起動する」的な手間も要らず、眠っている間に“勝手に”計測してくれます。「通知」機能を活用する場合はヘルスケアアプリからオンにします。オンにして開始してから「30日で1サイクルの計測」を実施。31日目は「1日目」にリセットされ、そこから新たに30日間の計測サイクルが始まる仕様です。

就寝中に正しく計測されたデータが10日ぶん以上たまると、iPhoneのヘルスケアアプリに睡眠時無呼吸症候群のページができて、「呼吸の乱れ」がグラフ上に可視化されます。

  • iOSの「ヘルスケア」アプリに新しく追加されるデータ項目「呼吸の乱れ」の計測結果がグラフ化されます

睡眠時無呼吸の傾向は「高い」か「高くない」かに大きく2分されます。計測結果のうち、50%以上に渡って呼吸の乱れが「高い」と分類されるとデバイスに通知が届きます。筆者は今日もドキドキしながらほぼ毎晩計測を続けていますが、今のところ通知は届いていません。

ただ、いつまでも放っておくわけにはいかないと思っていたので、計測を始めたばかりの9月末に5夜連続で呼吸の乱れが「高い」と出た時に、覚悟を決めて専門医を訪ねました。幸いなことに、筆者がいつも通院している耳鼻咽喉科の医院に、睡眠時無呼吸症候群の検査と治療を扱う施設がありました。

  • 11月は上旬に「高い」を記録することが何度かありましたが、月で均せば今のところ50%以下をキープできています。なおApple Watchによる睡眠時無呼吸の計測は、通知をオンにして開始後からから30日が過ぎると、31日目にカウンターがリセットされて再び「1日目」として、そこから新しく30日間の計測サイクルに入ります

  • ヘルスケアアプリから睡眠時無呼吸の通知を「オン」に切り替えることを忘れずに

いざ病院へ。入院検査を前にちょっと日和見

睡眠時無呼吸症候群は日本国内に300万人の潜在患者がいると言われています。ドクターいわく、睡眠時無呼吸症候群は肥満により気道が塞がれることが原因になる場合が多いそうです。筆者がレントゲンを撮影してもらったところ、あごの骨格形状と老化による舌や喉のまわりの筋力低下により、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあると指摘を受けました。

当然ですが、Apple Watchやスリープドックといったデバイスは、睡眠時無呼吸の兆候を調べることに役立ちますが、治療をするためのデバイスではありません。ドクターのすすめに従い、本格的な検査を受ける方向で説明を受けました。

今回筆者が訪ねたクリニックでは一泊入院による「PSG検査」と呼ばれる精密検査を実施しています。身体に様々なセンサーを取り付けて、睡眠中の脳波や呼吸の状態、心電図に体位などを多角的に計測して睡眠時の呼吸状態を徹底解析するものです。より正確に睡眠時無呼吸の症状を調べて、必要であれば治療に進むのであればこちらの精密検査を受診すべきであることもドクターから説明を受けました。

  • 病院にいただいたパンフレット。いよいよ覚悟を決めて検査を予約しようと思います

現在の筆者の状況はといえば、「日程とか、どうしよっかなー……。」という段階で止まっています。どんな理由をこじつけても言い訳になると思うので、ここで「2025年はぜったい精密検査を受ける」ことを宣言したいと思います。

いや、年内に行けよ! というご指摘をいただいてしまいそうですが、実はお医者様の入院検査室が春ごろまで予約でいっぱいなのだそうです。睡眠時無呼吸症候群の悩みを打ち明けた友だちが「実はオレも……」と話してくるなど、いざ自分ごとになると睡眠時無呼吸症候群に向き合っている方々があらためて沢山いることを実感します。

この冬も筆者は基本的に毎日Apple Watch Series 10を装着しながら寝ています。10月末~11月下旬時点も筆者は幸いまだ通知を受けていませんが、呼吸の乱れが「高い」と評価される日は月間2~3割程度です。

歳をとると健康状態のバランスが崩れてきたり、若い頃のようにふんばりが効かなくなることを自覚して、さらに落ち込むこともあります。でも、今の私たちにはApple Watchのようにユーザーの生活に寄り添いながら健康を見守ってくれる頼もしいデバイスとサービスがあります。私たち皆が長く健康を保ちながら活躍できるために欠かせない最先端のヘルステックを、来年も方々で見つけてご報告したいと思っています。