変わった国会の“景色”……裏付けられたある「データ」
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ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第394回)
14980、14048、10415、11978、14476、13376、12264、12290、11522、10981、13763,10056、13360、12917……、私がいつもスーツのポケットに忍ばせている歩数計から、9月以降の週平均歩数を並べてみました。
国会の“景色”が変わったと言われますが、なるほど、この歩数からもそれが裏付けられていると感じます。振り返ると、秋から冬にかけて平均1万歩を割り込む週がなく、とにかく歩き回っていました。
この期間は立憲民主党代表選、自民党総裁選、衆議院選挙、その後の政界の動き……いつになく慌ただしく過ぎていきました。政治の舞台である永田町周辺の取材拠点は、「院内」と呼ばれる国会議事堂だけでなく、首相官邸、衆参議院の議員会館、自民党、立憲民主党などの各政党の本部、これに閣僚が関わる霞ヶ関の中央省庁も加わります。電車などの移動手段もあるものの、徒歩で移動することも多いです。ちなみに院内にある記者室から議員会館のある政党の会議室までは500~600歩、記者室から自民党本部までは約900歩かかります。往復すると結構な歩数になります。
いわゆる「与党一強時代」は、法案などの決定事項が主に与党で決められるケースがほとんどでした。このため、意思決定の舞台は院内、官邸、自民党が主でしたが、ここにきて飛躍的に増えたのが、各党との協議です。与党の自民・公明両党と立憲民主党だけでなく、国民民主党や日本維新の会なども加わります。「自公」「自立」「自国」「自公国」「公国」「野党各党」「立維」……こうした“略称”のついた会談、協議がひっきりなしに行われており、関心も高まっています。
それは院内だけでなく、議員会館にある会議室で開かれるケースもあり、そのたびにわれわれは院内と議員会館を行き来します。記者会見などで必要な機材が足りない時、記者室に走って戻ることもあり、気が付いたら、上記のように歩数がかさんでいたというわけです。多い時には1日に2万歩に及ぶ時も。「情報は足で稼ぐ」と言いますが、永田町の取材も例にもれません。ただ、歩数はウォーキングによるものではないので、必ずしも健康にいいとは言えないのですが……。
国会は会期末を12月21日に控え、補正予算、政治改革、政治倫理審査会、いわゆる「年収の壁」などをめぐる税制協議など、重要審議が続きます。政治改革については与野党の折り合いがつかず、各党がそれぞれの法案を駆け込みで提出するに至りました。
自民党は政策活動費の廃止を盛り込んだ規正法改正案、第三者機関を設置するための関連法案を提出、ただ、政策活動費については使途公表に配慮が必要な「公開方法工夫支出」を添えており、野党は「新たな抜け道」と反発しています。立憲民主党は参政党、社民党とともに企業・団体献金の禁止を盛り込んだ政治資金規正法改正案を共同提出しましたが、禁止対象から政治団体を除いたことに対し「抜け穴」と指摘する声もあり、野党の足並みは揃っていません。一方、第三者機関の設置については与党の公明党と野党の国民民主党が法案を共同提出するという異例の事態になりました。
「夜も土日も(審議をして)、この会期の中で成案を得ようという思いは与野党一致している」(自民党・小泉進次郎政治改革本部事務局長)。
衆議院では特別委員会での審議も始まり、各党は年内の決着を目指しますが、これらの法案は現時点では過半数の賛成を見通せるものはなく、混とんとした状況です。
国会では「表」では本会議や委員会が開かれている一方、「裏」では各党協議も行われ、調整が続いています(もっとも「裏」の動きは公開されるケースも出てきました)。まさに「熟議と公開」(立憲民主党・野田代表)ということでしょうか、少数与党ならではの“景色”が展開されていますが、これがどういう形で結実していくのか。師走とは「師が走る」慌ただしい月という意味ですが、例年よりも記者が走っている気がする今年の年末です。
(了)