共生細菌は細胞に追加能力を与える
今回の研究により、免疫細胞に非常に効率よく定着可能な、人工的な共生細菌を生産することに成功しました。
マクロファージに取り込まれた遺伝操作された枯草菌は分解されることなく増殖することが可能です。
また枯草菌に仕込まれたスイッチを作動させることで、マクロファージの行動を「変化」させることに成功しました。
ただ現時点ではマクロファージのモードを完全に「制御」するには至っていません。
人工的な共生細菌が細胞に与える影響は未知の部分が多く、スイッチはIL-10 などいくつかのサイトカインに対しては予想通りの働きをしましたが、予想外の反応を示すケースもありました。
ただ人工的な共生細菌による利益は、将来的には計り知れないものになる可能性があります。
例えば共生細菌の遺伝子に細胞を幹細胞に変化させるするスイッチと、幹細胞を再び普通の細胞に戻すスイッチを入れることで、脳細胞の一部を幹細胞にして増殖させ、再び脳細胞に戻すといった方法で、細胞の補給が可能になります。
また共生細菌の遺伝子に「DNA修復酵素」や「テロメラーゼ」など細胞の不死化にかかわる因子を加えることができれば、寿命の延長も可能になるかもしれません。
この技術は本質的に人間や動物の細胞の遺伝子を書き換えずに、細菌の遺伝子を書き換え、共生させるだけで達成可能であるため、倫理的な問題を回避できるでしょう。
さらに研究者たちは、豆などの植物の根に生息する窒素固定細菌を共生生物化する計画もするめているとのこと。
細胞と人工的な共生生物との新たな関係は、あらゆる医療上の問題の解決策になるかもしれません。