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@cosme の顧客体験戦略 〜 訪日客を魅了する店づくりとは 〜|アイスタイルリテール 北尾氏・国際商業 長谷川氏|GLOBALIZED 小売業界の訪日体験 DX

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佐藤菜摘

 本記事のポイント 

  • 旅行者向けコンテンツは不要。日本人客の体験価値向上がインバウンド客の満足度にも繋がる

  • 充実した売り場での体験コンテンツが、SNSを通じた計画来店を促す

  • 訪日客が帰国後もブランドと繋がり続ける仕組み作りが重要

Wovn Technologies株式会社は、2024年11月29日に「GLOBALIZED 小売業界の訪日体験 DX」を開催し、「旅行フェーズに沿った多言語デジタル施策」をテーマにセッションをお届けしました。

パネルディスカッションとしてアイスタイルリテールの北尾氏と国際商業の長谷川氏を迎え、「@cosmeの顧客体験戦略 〜 訪日客を魅了する店づくりとは 〜」と題して、@cosme を例に、アフターコロナのインバウンド客の購買行動の変化や、コロナ前後でのインバウンド消費の変化や、お客様の体験価値向上についてお話いただきました。本レポートではその内容をご紹介します。

【登壇者】

北尾 悠樹 氏
株式会社アイスタイルリテール 取締役

2001年、P&Gジャパンに入社。
営業とトレードマーケティングを約12年間経験。2014年からはアマゾンジャパン合同会社にて約8年間、ビューティー事業部の事業部長などに従事。
2022年8月からアイスタイルに入社し、初めての実店舗事業の運営に携わる。現在は店舗カンパニー長として、変化する業界環境に対応しながら、これまでの経験を活かして実店舗とデジタル領域を融合させたアプローチを推進中。

長谷川 隆 氏
化粧品・日用品業界の専門メディア『国際商業』
編集長

1979年1月、神奈川県横浜市生まれ。2011年2月、国際商業出版に入社し、化粧品・日用品業界の専門誌『国際商業』編集部に配属。経済産業省と日本化粧品工業連合会が策定した産学官で初となる化粧品産業の将来ビジョン「化粧品産業ビジョン」のオブザーバー、「コスメバンク プロジェクト」立ち上げなどに携わる。

 

長谷川(国際商業):
本日は @cosme の実例を中心に、化粧品業界のインバウンドに関する動向をお話します。

国際商業は、約60年の間化粧品業界と日用品業界のメディアを運営しています。私は2011年に入社し、以降化粧品業界の動向を追い続けています。

北尾(アイスタイルリテール):
私は現在アイスタイルリテールで、店舗事業を3年ほど行っています。日用消費財メーカーに入社し、その後 eコマースでの経験を経て、現在に至ります。

 

ローカル客とインバウンド客は、ほぼ同じような購買行動を取るように

長谷川(国際商業):
@cosme 最大の旗艦店「@cosme TOKYO」は、2020年1月原宿にオープンしました。目的は、当時の化粧品爆買い需要を取り込むためでした。
ですがオープン直後にコロナが拡大し、一時期は非常に厳しい状況に置かれました。その後コロナも収束し、ローカル客も増え、徐々にインバウンド客も増え、今では旗艦店での売上は約70億円ほど、インバウンド比率も40%まで伸びています。

実は私たちが GLOBALIZED に登壇するのは2回目になります。2023年登壇時には、アフターコロナにおいて中国人需要をどう取っていくか、と未来展望をお話しました。しかし実際には、訪日インバウンドの動向は想像していたものと全く違う状況となっていました。その象徴的な例が、@cosme です。


北尾(アイスタイルリテール):
まずは、@cosme TOKYO における2023年1月から直近までのインバウンド売上推移をお伝えします。
店舗全体の売上は順調に上がっています。免税実績についても順調に上がっており、構成比は約35〜40%になります。国別でみますと、欧米の方の来店・購買が増えています。コロナ前は、中国の方の爆買いが多くを占めていましたが、今は来店される国籍の幅が大きく広がったことが大きな特徴の一つです。


購入客数ベースでのインバウンド構成比は、約15〜20%でした。この結果から、ローカル客よりインバウンド客の客単価が高いことがわかります。国別では、中国、台湾、アメリカの順に多く、特定の国籍の方だけが高単価の商品ばかりを購入しているわけではないようです。
また、ブランド別の販売数量ベースで1位から15位まで並べてみますと、ローカル客とインバウンド客どちらもほぼ同じブランドを購入していることがわかりました。これも直近のインバウンドの大きな特徴です。



先程売上構成比では35〜40%、客数構成比では15〜20%とお伝えしましたが、この差分は客単価の違いにあります。ローカル客は約5千円、インバウンド客は約2万円ですので、客単価ベースでは約3.5〜4倍の差があります。ただ、1商品あたりの購入単価平均は、ほぼ同じ数字であることから、やはりローカル客とインバウンド客が同じような買い物をしていることがわかります。購入数量では、ローカル客が約3個に対して、インバウンド客は約10個と違いが出ています。

 

@cosme での体験に興味を持ち、計画来店するインバウンド客が半数以上に

北尾(アイスタイルリテール):
インバウンド客の購買行動が大きく変わりましたが、我々は今後どのようにインバウンド対応を進めていけばよいでしょうか。そこで、@cosme TOKYO にご来店されたインバウンド客へアンケートを実施しました。

まず一点目は来店のきっかけです。たまたまと回答した方に比べ、計画的にご来店された方が半数を超える結果となりました。



では、実際にどんなコンテンツに興味を持ったのでしょうか。面白いことに、高級ブランドをお得に買えることよりも、自分の悩みにあわせた商品を探してみたい、日本人のおすすめを探したいといった、「商品購入」よりも「お買い物体験」を目的にしていることがわかりました。

また、計画来店の要因として、SNS を通じた情報発信の重要性がうかがえます。来店者向けコンテンツはインバウンドを意識していないのですが、そこにインバウンド客は興味を持ち、計画的に来店いただけている点が当社のポイントになります。

長谷川(国際商業):
「計画して」という点がすごく大事ですね。やはり、どれほどインバウンドが増えたとしても、化粧品を購入する場所はある程度固定化されてしまいます。

そんな中、@cosme TOKYO にインバウンド客が計画来店する理由は、商品構成が高級ブランドからプチプラまで、全て一つの売り場に揃っているからです。日本では流通別のブランド配置を行ってきたため、@cosme のような売り場作りができていませんでした。

だからこそ、沢山のブランドが一箇所に揃っていることが嬉しいとローカル客が殺到します。インバウンドから見ても、高級とプチプラが融合した売り場はかなり珍しく「面白い!」と思われます。その結果、売り場での体験コンテンツが SNS で拡散され、新たな集客にも繋がります。
このように、販促費をかけずに集客を実現したのが、@cosme TOKYO のお店としての強みです。

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(国際商業・長谷川氏)

 

口コミや売れ筋、手書き POP や SNS 発信など、あらゆる切り口で体験を通じた購買に繋げる

北尾(アイスタイルリテール):
長谷川さんがおっしゃった通り、当社ではインバウンドに対してお金をかけた情報発信はほぼ行っていません。なぜかというと、実際にご来店されたインバウンドのお客様が、やはりローカル客が楽しんでいる姿と似たような体験をしている印象を受けたからです。

特徴的な例が、「ベスコスタワー」コーナーでの体験です。ベスコスタワーは、これまでベスコス(ベストコスメ:@cosme メンバーから投稿されたクチコミ情報をもとに、今みなさんから支持されている商品を表彰するアワード)を受賞した商品を一斉に取り揃えたタワーのことです。ここは当然日本人のお客様が商品を探しにきますが、インバウンド客も商品を見たり、実際に試すなど、同様の体験をされています。他にも「セールスランキング」という形で売れ筋商品を並べているコーナーでも同様の現象が起きています。
このように、@cosme が口コミや売れ筋という切り口でお客様に商品を提案していることが、インバウンド客からも面白いと感じていただけている点だと思います。


(左:ベスコスタワー、右:セールスランキング)

また、当社では手書きの POP をとても大事にしています。これは、各店舗スタッフが口コミや自分たちで使った商品の体感をお客様に一言でわかっていただくために行っています。インバウンド客はその手書き POP をスマホの画像翻訳機能を使いながら見ています。

やはり商品の裏面にある成分表示を見るだけでは効果・効能がすべてわかるわけではなく、誰にフィットする商品かがわかりづらいです。わかりやすい口コミを伝えるために手書き POP を作っていますが、これもまたインバウンドにとっては面白い体験であり、SNS などでも情報がシェアされています。

長谷川(国際商業):
@cosme の口コミには強みがあります。例えば、SNS での口コミの特徴は、可愛い・綺麗・使いやすいなど、形容詞が多いですが、@cosme の口コミでは、商品に対する率直な評価(使い心地が良い / 悪い など)が書いてあることが価値です。これをさらに分析することで、今後は研究開発分野でも活かせるかもしれません。口コミが膨大にあることが店づくりにつながり、さらに体験価値向上につながっている点に独自性があると思います。

北尾(アイスタイルリテール):
1階と2階にあるイベントスペースでは、毎週様々なブランドがポップアップを実施しています。日本や海外で流行っているブランドをお客様に体験していただき、ローカル客にもインバウンド客にも楽しんでいただいています。他にも、実店舗で接客をしているスタッフがオンライン上でも情報発信したり、YouTuber が @cosme TOKYO の楽しみ方をコンテンツとして発信したりしています。こういった情報発信が、体験を通じた購買に繋がっていると感じています。

長谷川(国際商業):
@cosme 札幌ステラプレイス店がオープンした時も、地元のメディアやインフルエンサーの発信力が好スタートにつながりました。やはりオンラインでの情報発信を積極的に展開することが認知度アップのベースになっているのでしょうか?

北尾(アイスタイルリテール):
はい、直接お客様からそのような声も聞きますし、実際に大きく認知度アップに繋がっています。

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(アイスタイルリテール・北尾氏)

 

求めるお買い物体験はどの国籍でも変わらない。まずは、ローカル客のより良い体験を磨き上げる

長谷川(国際商業):
今後の展望と戦略をお話する前に、今化粧品業界が抱えている課題を共有します。
いまは韓国コスメが ASEAN や米国を席巻する中で、日本の化粧品産業のグローバル化が少し出遅れています。

中国のローカルブランドではインフルエンサーの活用が2020年1月から進んでいて、欧米ブランドは2022年下期から、日本ブランドはようやく2023年下期からインフルエンサーの活用をはじめました。これにはすでに同じ土俵で戦えないぐらいの差があり、穴を埋めることは容易ではありません。

ですが、そういった時にインバウンドが一つのカギとなります。
例えば、韓国の方は日本での化粧品購入が楽しいと言います。その理由を調査したところ、売り場には日本ブランドも韓国ブランドも沢山揃っていて、欠品もなく、売り場が綺麗なため、化粧品を選ぶのが楽しく、商品を沢山購入したくなるからだそうです。日本は商品力があるので、「商品」と「小売業のコンテンツ力」の2つが合わさると、新しい競争力が生まれてくると思います。これこそ @cosme が目指す姿であり、橋渡し役になれる部分だという期待もありますので、ぜひ今後の展望と戦略を語っていただきたいと思います。

北尾(アイスタイルリテール):
現在、@cosme TOKYO は「日本旅行」や「買い物」で SNS 検索すると上位に表示され、認知のきっかけとなっています。旅マエ、旅ナカ、旅アトの視点で見ると、お店で楽しさを体験していただいて(旅ナカ)、帰国後に SNS で情報発信し(旅アト)、それがお友達や同じ国籍の目に留まり(旅マエ)、結果として計画来店が5割を超える状況となっています。
一方で、多言語接客ができるスタッフはおらず、基本的に全員が iPad を使用して通訳したり、お店全体の多言語マップを作成したりしています。

当社は、インバウンド向けのコンテンツを作って支持を得ているわけではなく、ローカル客が楽しんでいるコンテンツを届けることでファン化ができています。しかし、よりインバウンド客がローカルと同じようにストレスなく楽しめる店舗体験が必要です。
例えば、韓国の大手コスメショップ「オリーブヤング」のように、セルフレジや免税対応の簡略化など、ローカルと同じように楽しめる店舗体験を目指すべきです。そして、帰国後の情報発信を促す施策も強化したいと考えています。

様々な施策を強化することで、@cosme TOKYO での体験が楽しいと感じてもらえるようになり、ブランド側にも海外のお客様と繋がれる体験を提供したいです。これにより、@cosme のプレゼンスが海外でも向上すると考えています。当社は化粧品商売ですので、リピート客を増やすための仕組み作りも重要で、帰国後もブランドと繋がり、来店されたお客様が次のお客様を店舗に連れてくるというような仕組みを作れば、インバウンド客へのホスピタリティ向上と店舗全体のサービス向上につながると考えています。

長谷川(国際商業):
@cosme の強みは「楽しく化粧品と出会う場所」ですので、@cosme で楽しい体験をできたことこそが価値です。@cosme TOKYO がハブになり、様々なブランドとのコラボレーションを生んでいけることが旗艦店のポテンシャルですし、今後もビジネスの裾野が広がっていくと思います。

北尾(アイスタイルリテール):
まとめますと、お買い物体験はどの国籍でも変わらないと実感しています。今後は技術面や多言語面もより向上が必要だと思いますが、まずはローカル客が楽しいと思えるお買い物を磨き上げることで、結果としてインバウンド客の満足にもつながると思います。

長谷川(国際商業):
@cosme の強みは、国内で多くのお客様と出会えること、外部への送客もビジネスモデルの中にあること、旗艦店の出店により、広域から集客できるモデルを作れていることです。また、ローカル客を意識したコンテンツ作りも行っていますので、海外に出店する際にも、日本のものをそのまま移植するのではなく、その国らしさを活かしていけるのではないかと思います。そうすることで、今後のアイスタイルグループのインバウンドや海外を組み合わせたビジネスモデルが、コロナ前よりも良い形となって発展していくと期待しています。

ご清聴いただきありがとうございました。

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