みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

シナリオ・スクールための課題(04)

テーマ「出会い」専用原稿用紙4枚

   *

題『息子の不在』

   *

登場人物

野崎榮(35)高村興信所・所員 
庭瀬不二子(65)依頼人代理

   *

○高村興信所・相談室

   庭瀬不二子(65)が椅子にかけている。そこへ別室から野崎榮(35)が入って来る。

 野崎「本日はありがとうございます。ご予約の方ですか?」
 庭瀬「いえ、でも代理なんです」
 野崎「失礼ですが、どなたさまのですか?」
   不二子、恥をかかされたかのように顔をしかめる。
 庭瀬「息子の庭瀬清彦のです」
 野崎「それでご相談は?」
 庭瀬「息子には嫁がおりましたが、10年もまえに子供を連れて家もでまして、それ以来会えておりません。一方的に離婚届をだされ、行方知れずです。わたしも息子も孫の顔だけはとおもっております。探して頂きたいのです」
 野崎「養育費はどうなっていますか?」
 庭瀬「10年まえ、息子を孫に会わせる条件として一括払いしましたが、当時としても法外な金額だったとおもいます」
 野崎「息子さんが来られないはどういった理由ですか?」
 庭瀬「清彦は、もう4年ものあいだ癌で苦しんでいます。時間がないんです」
   野崎、書類に相談内容を書き込んでいく。
 野崎「相談料は結構です。手付金として10万円、調査料として、見積もって25万です。近日中に元配偶者の写真などの資料をご提供ください。息子さんのほうには高村がお電話差し上げますが──」
 庭瀬「(遮って)いいえ、もう一度息子と話してみます」
   不二子、慌ただしくでていく。
   野崎、無表情で不二子の坐っていた椅子を見る。
   書類を持って立ちあがり、相談室をでる。

映画『シン・仮面ライダー』への疑問符(2)

www.youtube.com

mitzho84.hatenablog.com

   *

 庵野秀明の実写作品について、わたしに評価できるのは『ラブ&ポップ』だけだ。原作もので、脚本も他人の手を借りている。アニメの『新世紀エヴァンゲリオン』にしても、テレビシリーズでは庵野以外の人間が大半を書いている。庵野秀明は優れたアニメ演出家かも知れないが、優れた実写作品の脚本家ではないというのが今回の結論だ。アクションについては救いようがない。CGI丸出しの、ゲームのような軽いアクションは身体性を欠いていて魅力がない。クモオーグ篇はまだ赦せるが、そのあとの数体の怪人+2号ライダーは映画の絵になっていない。チョウオーグになってようやく身体性がかろうじてでてきたという感触だ。戦いと戦いとのあいだの作劇は不十分だ。登場人物同士のコミュニケーションがまるでとれてない。場つなぎ的になものに留まっている。この作品が映画らしくなるのは本郷の消滅後、残された一文字が仮面を継承して退場、エンディングを迎えるところだけで、それまでの部分、エンディングのための説明に過ぎない。

   *

 それぞれのパートの問題点を挙げてみよう。その1、クモオーグ篇は始まりが急過ぎる。そこは萬画版を踏襲したほうがよかったのではとおもう。クモオーグが喋れば喋るほど緊張感がなくなってしまう。その2、初戦が終わってルリ子と本郷の説明のための科白。こんなものは映像で見せるべきである。その3、アンチショッカー同盟の登場。ルリ子が早口でショッカーの正体について喋くるのだが、ここで悪の神秘性が消えてしまう。まったく凡庸な惡というものが曝されていて、これもまた緊張感の持続を吹っ飛ばしてしまう。その4、コウモリオーグはなぜ仮面ではないのかとおもわずにいられない。翼のCGIがしょぼすぎて観てられない。そしてやはりコウモリも喋りすぎだ。やはり緊張感がない。コウモリの実演も箱庭的で、直接社会への脅威というものにつづかないのは失策でしかない。その5、サソリオーグは不要な存在。これは存在そのものが場つなぎに過ぎない。ただただ醜悪で、滑稽なだけで、映画に大きな損害を与えている。このパートについてはまるで意味不明で、本気でこんなものをつくるのはコミュニケーション以前の問題で、現実が見えてないということだ。その6、ハチオーグ篇でようやく一般社会への脅威が登場するも、その提示が弱すぎる。ここはひとつ数人の犠牲者でもだしてくれたほうがよかったようにおもう(不謹慎)。以前にも書いたがハチオーグのアジトの陳腐さ、そして戦闘の舞台がダメだ。CGIに頼り過ぎている。そしてまたも身体性を失い、ほとんどアニメのようなアクションが映画として垂れ流されている。ハチオーグはサソリの毒で死ぬよりも、自害したほうが理に適っているのではとおもう。その7、またしても場つなぎの場面。全体として科白の癖が強すぎるので、この作品がアニメだったら許容できただろうとおもう。その7、緑川イチローとの対峙。ここで「パリハライズ」といった語がでてくるし、またも早口演技なので劇場では困惑した。なにをいってるのかが理解できなかった。その8、一文字との戦い。これがまたしても致命的で空中戦闘もどきをやっているのだが、如何せん物理法則を無視した動きなので観ていてキツかった。その9、相変異バッタオーグ篇もCGIいっぱいで萎えてしまった。これも劇場で見せられるのはキツい。映画は実写表現を追求するべきだというのは古い考えでしかないとわかってはいるが、やはり予算も技術も乏しい日本の映画のなかで、こういった表現は薄ら寒いだけだ。その10、チョウオーグとの決戦。玉座破壊の場面以外はできてるとおもう。泥仕合もそれらしくていいとはおもう。本郷消滅時にどうしたものか、マスクがなくなっているのはスクリプターの失態か。それでも泥仕合以降は作品がようやく映画らしくなっている。そのままエンディングまでよくできている。

   *

 ひらすら庵野秀明の作品は、アニメで上手くいった方法を実写映画に持ち込んで失敗しているように見える。劇場の大画面で観て、「これはダメだ」とおもった。Amazon prime videoに配信が入ってみるうちに「わるくない部分もある」とおもったのだが、どうにもこの作品は映画のサイズに合っていない。テレビの作劇なのだ。オリジナルの『仮面ライダー』への偏愛が強すぎて、じぶんがなにをつくっているのかを見落としているのではないか。あまりにも人物や設定の説明科白に時間がかかっていて、描写という点ではおざなり。その上、2時間もある。編集上、カットすべきところが散見された。ほかにもいろいろとツッコミどころはあるが、やめとく。ただいえるのは庵野秀明自身のコミュニケーション不足がそのまま作品に投影されていて気分がわるかった。脚本についてはやはり庵野単独でなく、たとえばアニメ版『人造人間キカイダー』の「ギターを持った少年」のように村枝賢一に脚本協力を仰いだらと強くおもう。庵野の多方面にじぶんの色を求めるやり方は、かれ自身の性質からいっても無理がある。
 Blu-rayはでたし、テレビフォーマット版がえらく好評なのでいずれ買うが、しかしそれならそれで最初からオムニバス方式の映画をめざせばよかったのにともおもう。テレビの作劇にそれほどこだわりがあるのなら、そうしたほうが傷は浅くていい。ともかく、フィギュアを買ったくらいには好きな作品であるので、もし次回『仮面の世界』があるのなら、ちゃんと外部の作家を入れてつくるべきだろう。けっきょく、この作品で積極的に肯定できるのは冒頭とエンディングだけだった。

   *

シン・仮面ライダー[初回限定版] [Blu-ray]

シン・仮面ライダー[初回限定版] [Blu-ray]

  • 池松壮亮、浜辺美波、柄本佑
Amazon

おれの徒然〈29〉「トシヲ!」篇

   *

 いつもいつも年末年始ってのはやることがなくて退屈だ。あしたから6日まで身動きがとれない。3日まえから、6年まえにネームを切った漫画を下書きしている。じぶんの絵がどれほど下手かを思い知らされる。手本を見ないと描けない。今月は金を遣い過ぎた。急ぎでもない買いものをしてしまっている。『横尾忠則遺作集』にしろ、特撮関係の本にしろ、フィルムにしても。今年は楽器を売り払ったり、ギターを2度も買い換えた。ギターを習うか、シナリオを習うかで迷った。どっちもやるつもりだが、今年はここまで。
 季節性の鬱なのか、やたら落ち込んだりしたものの、ひとと話すとそれも軽減されるとわかった。しかし肉体的には靭帯の炎症や、上半身の筋肉がやたら攣るので困ったりだった。

   *

 映画『シン・仮面ライダー』の一文字隼人の第2+1号フィギュアを買った。メルカリで分割払い。¥9,300だった。新品未開封。いったい、なんでこんなものを買ったのかと訝る。遅い遅いクリスマスプレゼントか。でも、25日にCDを買ったっけ。それも不要不急だった。今年はトーキング・ヘッズ1色の1年なのに、エレカシの『ココロに花を』デラックス盤を買ってしまった。金を残すか、『Stop Making Sense』のBlu-rayか、LPを買うべきだった。

   *

 来月は12日にヴィンセント・ギャロの新譜を買う。LP1枚に¥9,500超はどうかとおもうが。そして17日には筒井康隆原作・長塚京三主演の映画『敵』を観にゆく。あとはなんにもできない。まあ、水着は買ったし、磯上通の市民プールで、水中ウォーキング&スクワットをして痩せたい。

   *

 歌誌『帆(han)』第4号はようやく始動した。来年の8月締め切りで寄稿依頼を送った。2月から原稿料の前払いをしたい。当初は1年休む予定だったが、気が変わった。実作の人選はあらかた決まったが、批評の人選があまりできてない。寺山修司のテキスト『怪人20面相はもう踊れない──詩のリズムのための覚書』へのアンサーを募っている。怪人二十面相はもう踊れない.txt - Google ドライブ

   *

 と、いうわけでトシヲ!(*良いお年をの略)

   *

中田満帆/2024年のベスト&ワースト

映画ベスト
第一位『Stop Making Sence 4Kリマスター(リバイバル上映)』ジョナサン・デミ
第二位『Cloud/クラウド』黒沢清
第三位『パトレイバー the Move(リバイバル上映)』押井守

映画ワースト
第一位『雨の中の慾情』片山慎三
第二位『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』阪元裕吾
第二位『箱男』石井岳龍

書籍ベスト
第一位『衣裳哲学』沖ななも
第二位『地平線のパロール(オリジナル版)』寺山修司
第三位『悪魔に委ねよ 大和屋竺映画論集』
第四位『Cloud Book』黒沢清
次点『青空のはてのはて』真鍋昌平

書籍ワースト
第一位『「可能性の文学」への道 織田作之助評論集』*題名、造本、編集に於いて
第二位『私の絵日記』藤原マキ
第三位『音楽のはたらき』デビット・バーン*アカデミック過ぎる

音楽ベスト
第一位『Stop Making Sence』Talking Heads(1984年作)
第二位『タオルケットは穏やかな』カネコアヤノ
第三位『呪文』折坂悠太
次点『Tree』中野ミホ

 

STOP MAKING SENSE (DELUXE EDITION)

STOP MAKING SENSE (DELUXE EDITION)

  • アーティスト:TALKING HEADS
  • Warner Music Japan = foreign music=
Amazon
STOP MAKING SENSE (DELUXE EDITION) [2LP BLACK VINYL] [Analog]

STOP MAKING SENSE (DELUXE EDITION) [2LP BLACK VINYL] [Analog]

  • アーティスト:TALKING HEADS
  • Warner Music Japan = foreign music=
Amazon

blue X'mas


www.youtube.com


www.youtube.com

   *

 今年になってから、いろいろと躰の不調つづきだ。上半身のこむら返り、靭帯の炎症が起こり、きのうからは風邪を引いてる。うごけないほどのものではないが、躰の節々が痛む。そういえばインフルエンザの予防注射をしてなかった。¥2,000だというのに。肝心なことに吝嗇《ケチ》になる。きょうは頭も重いし、やる気もない。ただ時間と思念を垂れ流す。

   *

 筒井康隆原作・長塚京三主演『敵』の予告篇を観る。死ぬのを決めた男の話らしく、いまのおれにふさわしい映画だとおもうも、公開は来月17日だ。それまで金があったらいいけどな。侮辱罪についてのエッセイを書こうとおもう。しかし資料としてじぶんのFBでの投稿を見たら、じぶんだってひとを侮辱してる。しかも年下の女性詩人にだ。これじゃ、エッセイを書いたところで最悪、過古の発言掘り返されて痛い眼に遭うだけだ。やめておく。じぶんのハラスメント加害について音声日記で話す。今年のうちに悪習を絶とうとおもう。最近、いろんなことがあって、いろんな知見を得て、思考を整理していくなかで見えて来たものを尊重しようとおもう。他人を消費物としてでしか、いままで扱って来なかった。無意識に他人を道具のように使ってしまっていた。そういった悪習を絶ちきりたい。

   *

 酒をやめてるので甘いものが欲しくなる。酒は糖質の塊りだ。蒸留酒は糖質ゼロだというが、カロリーは高い。酒を自制できないおれはやめるしかなく、いまはチョコミントのアイスを嘗めている。そうでもしないと気分を保てないからだ。来月からは磯上通の市民プールに通って、水中ウォーキングでもして痩せたい。健康診断で中性脂肪の値を指摘された。なんとかして15㎏痩せたい。

   *

 きのうは作業所の工賃が入ったものの、不要不急の買いものでムダにしてしまった。聴きもしないCDを買ってしまった。talking headsのBlu-rayを買っておけばよかった。きょうもけっきょく時間潰しの1日だ。なにもありはしない。図書館の予約本が届いたが、いまはそこへいけない。ギターウルフを聴く。ふと高校時代に買ったカセットの音楽を懐いだした。たしか「バルブQ」とかいう名のアマチュア・ミュージシャンがだしたものだ。ファズのかかったギターで爆音弾き語りしてた。なかなかおもしろかった。ほかにも地方のスキンズ・パンクのCDを買ったことを懐いだした。メンバーのメッセージつきだった。金はなかったが、音楽への好奇心は桁外れだった。

   *

Blue Christmas
ブルー・クリスマス

おれの徒然〈28〉「鬱がひらく」篇

www.youtube.com

   *

 きのうから左足首が痛い。きのうは時間とともに消えていったのだが、きょうは激痛で何時間も過ごすことになった。以前、右膝でやったのとおなじく靭帯の炎症だった。ところが湿布がすぐに剥がれるので、痛み止めでなんとかやり過ごした。朝にゆくはずだった、心療内科の受診はダメになった。この数年、意欲喪失でなにもできずにいるのだが、どうやら鬱の初期らしく、自殺企図などもある。物事に没入できないというのもある。それらをさっそく薬で解決してもらおうとしたのだが、ダメだった。あしたの10時に予約を入れて、きょうはただ日を潰す。

   *

 あれやこれやとやりたいことはある。シナリオ講座だったり、ギター・ボーカル・ベースのレッスンだったり、そんなことをやりたいとおもっている。というのも、もう10年以上、アルバムの構想があるのに、まったく接近できてないからだ。しかしシナリオは4年以上かかるし、音楽はそもそもおれの声が悪声だったりで前進できてない。これからどうやって生きればいいのかがわからない。

   *

 楽器はそろえた、あとはエフェクターだ。だのにおれは熱くなれない。すっかり骨抜きになったようにPCのまえで時間の空費だ。映画も本もダメだ。ひとつのことに集中できない。きょうはギター教室と、ボーカル教室からメールが来たものの、応えられていない。あと2年のうちに以下の曲をレコードにしたい。

アルバム・デモ『1984年のピープ・ショウ』

 清掃人
 https://soundcloud.com/mitsuho-nakata/demo-1

 水を呑む男
 https://www.youtube.com/watch?v=f1KuA5kaFfE

 うまくやりおおせればいい
 https://www.youtube.com/watch?v=2mNbe4WFALs
 上記の改作 https://soundcloud.com/mitsuho-nakata/202412221st-demo

 1984年のピープ・ショウ
 https://www.youtube.com/watch?v=5u6sjuomnKM

 声/夏の夜
 https://soundcloud.com/mitsuho-nakata/wo1htinljggl

 縁日の世界
 https://www.youtube.com/watch?v=AUUobmCaR7o

 呼び声
 https://www.youtube.com/watch?v=Gd3uY_foq6Q

 kaze-bungaku
 https://www.youtube.com/watch?v=0tqFkmQvMkM

 CQB
 https://www.youtube.com/watch?v=KkRmHP7hBcs

   *

 死について、よく考える。そしてリアルに考えるほどにじぶんの野心や夢といったものがくだらなくおもえて来る。せいぜいのところ、2曲だけ完璧に録音したら、手を引いてもいいとおもう。まあ、あした処方される薬で、心の状態がどう変わるかにいまは賭けているところってわけだ。鬱は夜ひらく。

   *