ウクライナとの戦争で多くの戦力を消耗しているロシア軍ではあるが、航空優位性を維持する空軍の被害は陸海と比べる消耗は少ないとされ、未だ1200機以上の戦闘・攻撃機を保有している。しかし、この内の約半数が深刻な老朽化に直面しているとされる。
ポーランドメディアのDefence24は、ロシア軍が保有する戦闘・攻撃機1200機の約半数に相当する550機が耐用年数の終わりに近づいていると報告している。退役が近づいている550機の内訳は、Su-25攻撃機が約160機、Su-27戦闘機が100機、Su-24M戦闘爆撃機270機と、ほとんどがソ連時代に開発生産された旧型機である。さらに、数十機のMiG-29とMiG-31の両戦闘機も運用寿命の終わりに近づいているとされる。これらの機体が一度に寿命を迎えるわけではないが、2024年末までに約60機が寿命を迎えたとされる。
ただ、これらの機体の内、ウクライナ戦争に主力機として投入されているのはSu-25ぐらいで、それ以外の機体はウクライナで見かける事はほとんどない。実際、Su-25が36機撃墜されているのに対し、Su-24は14機、Su-27に限ってはわずか3機のみだ。総数から考えれば少ない。Su-27の被害も3機のうち2機は地上に駐機していたものが攻撃を受けた形で出撃していたわけではない。前線で確認されるロシア空軍の機体は主にSu-30、Su-34、Su-35とソ連崩壊後に生産された近代的な機体がほとんどだ。当初は機体性能が高い機体を単純に前線に投入していたものと考えられていたが、旧式機が寿命を迎えつつあり、飛ばせない状態であるとも推測される。
例えば、1970年代後半に量産が始まったSu-24M戦闘爆撃機。ウクライナ空軍の機体はイギリス・フランスから供与された射程250kmの巡航ミサイル「StormShadow/SCALP」を搭載できるよう改良して、主力機として活躍しているが、ロシア軍のSu-24Mは開戦当初こそ、投入が確認されていたが、損害が多く、その上、可変翼は整備が大変で、消耗が激しいこともあり、今はほとんど見る事はない。現在のロシアの空爆の主力兵器である滑空誘導爆弾UMPKも搭載できないことも理由とされる。これといった近代化もされておらず、270機ある全Su-24Mは退役を待つだけとされている。
ロシア空軍は1970年代に開発された数百機のSu-27とMig-29戦闘機を保有しており、戦前には近代化された80機程のMig-29と100機程のSu-27が配備中とされていた。しかし、ウクライナ戦争では両機ほとんど運用しておらず、それ以外の空域でもほとんど見かけることはない。この両機はウクライナ空軍では主力戦闘機として今も前線を飛び回っているが、ロシア空軍は既に戦力してみていないとされ、ほぼ運用していない。人的・物的リソースを近代的な機体に回しており、整備がいきわたっていない可能性もある。
ロシア空軍が保有する近代的戦闘機
現在のロシア空軍の主力攻撃・戦闘機はSu-30、Su-34、Su-35、Su-57と2000年以降に生産された近代的な航空機がメインで、Su-30SM/SM2が120機、Su-34が150機、Su-35が110機、Su-57が20機が運用中とされ、この内、300機以上をウクライナ戦線に投入している。しかし、2025年1月12日時点でSu-30が12機、Su-34が37機、Su-35が7機、Su-57が1機と計57機が少なくとも破壊されている。ロシアの航空機メーカーは2022年に27機の戦闘機を生産し、その数は2023年には24機に減少。2024年は上半期で6機と生産数は年々低下している。
また、戦争により、戦闘機の出撃回数は増加。Su-30、Su-34のベースとなっているSu-27は5000時間の飛行時間に耐えるように設計されているとされるが、エンジンサイクルは更に短く、機体寿命を迎える前に何度かエンジンを交換する必要がある。実戦を経験していることもあり、エンジン及びパーツへの負担と摩耗は訓練よりも高いとされる。そして、エンジンやパーツの生産は滞っている。ロシアは海外にも多くの航空機を供給しており、海外顧客向けのエンジンも生産せなばならない。エンジンやスペアパーツの生産が滞れば、運用中の機体の稼働にも影響してくる。
現状、ウクライナ空軍の戦力差は大きいが、ウクライナは今後100機以上の西側製戦闘機を取得する予定であり、その差は縮まることになる。長期化すれば、整備が間に合わず、運用率の低下が懸念される。