中国は昨年末、新型の強襲揚陸艦「076型」を進水させた。2021年に一番艦が就役した075型に続く、強襲揚陸艦(LHD)になり、世界初の電磁式カタパルトを搭載したLHDだ。
China's first Type 076 amphibious assault ship, the Sichuan, was launched. It features a groundbreaking electromagnetic catapult and arresting technology. pic.twitter.com/AJCgs6yzI6
— Global Defense Insight (@Defense_Talks) December 27, 2024
昨年12月27日、中国の国有造船企業「滬東中華造船」は上海の造船所で新型の強襲揚陸艦「076型」の一番艦の進水式を行った。船体番号「51」と記された記念すべき一番艦である同艦には中国西南部の省「四川」が命名された。当初、進水は2025年初頭とされていたが、前倒しされた形だ。報道によれば、四川は乾ドックで建造が始まってから僅か14か月で進水している。076型の満載排水量は4万トンを超え、ツインアイランド式の艦橋と全通飛行甲板を擁し、電磁式カタパルトを搭載、軽空母としても運用できるなど、米海軍のアメリカ級強襲揚陸艦と並ぶ性能を持つとされる。
076型強襲揚陸艦
China's first domestically developed and built Type 076 amphibious assault ship, the Sichuan, left the dockyard in Shanghai on Sunday morning. https://t.co/jZwRmYGacl pic.twitter.com/FT9ZY0NbC1
— CCTV+ (@CCTV_Plus) December 29, 2024
076型の建造計画は滬東中華造船の親会社である中国船舶工業集団の708研究所が2020年7月に「XX6プロジェクト」という名によって発表した入札要請通知によって知られることとなった。708研究所は076型の前型である075型を開発した部署だ。入札の内容には電磁カタパルト、固定翼航空機搭載および統合電気推進システムが含まれており、中国国内では新しい強襲揚陸艦「076型」だとメディアやミリタニーマニアが湧いた。しかし、その時は入札の段階に過ぎず、実際に建造されるか未定、その性能については具体的な推測でしかなった。
空母能力
今回、進水、公に公開された事でそのスペックの一部が明らかになっている。満排水量は41000トンとされ、米海軍のアメリカ級の45000トンに少し劣るが、全長は260mと、サイズは同等だ。何より注目すべきは強襲揚陸艦(LHD)として初めてカタパルト、しかも電磁式カタパルトを搭載している点だ。これは中国3隻目の空母「福建」で実現している電磁式カタパルトと同じものが搭載されるとされ、必要な電力は2×21MWガスタービンと6×6MWディーゼルの両エンジンによって生成される。
米海軍は短距離離陸・垂直着陸(STOVL)型のF-35Bがある事でLHDでも航空機の運用を可能にしているが、中国は今のところSTOVLを持っていない。しかし、電磁式カタパルトによって航空機の運用も可能になる。艦載機には現在開発中の第5世代ステルス戦闘機J-35が搭載される予定だ。同機は福建にも搭載される予定でカタパルト対応されている。この他、無人ステルス攻撃機のGJ-11(攻击11)の搭載も噂されている。GJ-11は空対空作戦を実行できる空対空ミサイル、空対地・対艦ミサイルの搭載能力があり、それはいずれも衛星誘導、レーザー誘導も可能で、その攻撃能力は非常に強力とされる。他にもWZ-7無人機が候補とされている。076型には艦載機運用のため内部格納庫、両側に2基の大型エレベーター、前部デッキセクションに1基の小型エレベーターがある。また、ツインアイランド式の艦橋を採用したのも、艦載機の運用効率化のためとされる。
兵装
自衛のための兵装は強固で、24発の短距離対空ミサイルHQ-10ミサイルを搭載したランチャー3基と、H/PJ-11 30mmCIWSが3基。さらに、24発デコイランチャー4基を搭載している。センサーには054B型次世代フリゲート艦で使用されているものと同じデュアルバンド回転AESAレーダーを搭載している。
揚陸艦としての性能はまだ不明な点は多いが、エアクッション型揚陸艇(LCAC)2艇と1000人規模の海兵隊員の輸送が可能とされる。
増える強襲揚陸艦
中国は現在、076の前型である075型強襲揚陸艦の建造も進めている。同型は8隻の建造を予定しており、これまで3隻が就役、4隻目が建造中だ。075型は076型よりも若干サイズは小さいが4万トンの排水量、全長230mを擁する。30機ほどのヘリコプターが搭載可能で、同じく1000人規模の海兵隊員、小隊規模の戦車・砲兵部隊を輸送できる。今のところ固定翼機の運用能力は無いが、中国がSTOVLの開発に成功すれば、航空機を搭載する可能性は高い。
076型の建造予定数は不明だが、海洋進出を進める中国は驚異的なペースで軍艦の建造を進めており、既に隻数はアメリカを超え、世界最大で、その差を更に広げている。更に新造艦により、質において、その差を縮めている。