2022.03.17
驚きのフレッシュさ! 果肉感たっぷりのいちごジャムの作り方。プロの技は煮るタイミングを分けること
真っ赤な見た目と華やかな風味、甘酸っぱい味わいが魅力のいちごジャム。毎年3~5月ごろになると手ごろな値段の小粒いちごが登場するので、「自家製ジャム作りにチャレンジしてみたい!」と思っている人も多いのでは?
でも、いざ作ろうとすると、巷にはいろいろなレシピがあり、「煮つめる加減が難しそう…」「どの作り方がベストなのかわからない…」と悩みがち。
そこで今回は、自家製ならではのフレッシュさが際立ついちごジャムの作り方を紹介します。教えてくれるのは、季節の手仕事が得意な料理研究家の小島喜和さんです。
ジャムに適したいちごの選び方、果肉を加えるタイミングなどのポイントを押さえれば、感動するほどおいしいいちごジャムができ上がります! さらに、記事の最後には、ジャムの瓶詰めの方法(瓶の煮沸消毒の方法)も丁寧に解説しているので、多めに仕込むのがおすすめです。
果肉がゴロゴロ! フレッシュないちごジャムを作るポイントは?
ポイント① いちごは果肉が赤いものをチョイスして! 色、甘み、酸味のバランスがいいジャムになる
いちごジャムはどんないちごでも作れますが、おすすめは切ったときの果肉の断面が赤いもの。色がきれいに仕上がり、甘みだけでなく酸味などのいちご本来の風味がしっかり感じられます。写真左のような「色が濃く、小粒のもの」が比較的赤いことが多いので、買うときの判断材料にしてみてください。
いちごの旬が終わりになる頃(3月~5月初旬くらい)に、形が不揃いで小粒のいちごが出回るので、その頃にジャム作りをするといいでしょう。
ポイント② いちごに砂糖をまぶして一晩おき、しっかり水分を出すことで、とろ〜りとした仕上がりに!
いちごは煮るまえに、砂糖をまぶして一晩おきましょう。浸透圧の関係で、いちごから水分がたくさん出てきます。
おく時間が短いと水分が少なく、火にかけたときに砂糖が焦げやすくなるので注意が必要です。焦げるのを防ぐため、水を加える方法もありますが、その分、いちごの風味も薄まってしまいます。だから、すぐに作りたい気持ちをぐっとおさえ、いちごに砂糖をまぶしたらしっかり一晩待ちましょう!
ポイント③ 先にいちごの水分を煮詰め、いちごの果肉はあとで加える「プレザーブスタイル」でフレッシュなおいしさに!
一般的ないちごジャムのレシピでは、最初からいちごから出た水分と果肉を一緒に煮る方法をよく見かけますが、小島先生がおすすめする作り方は、果物の原形を残して煮る「プレザーブスタイル」。最初にいちごから出た水分だけを煮詰め、あとから果肉を加える方法です。
この方法で作ると、いちごの果肉を煮る時間が比較的短くてすみ、いちごの粒のごろっとした感じを残せて、とってもフレッシュな味わいに仕上がります。
いちごの果肉をあと入れにするいちごジャムの作り方は、初めて聞きました。確かにいちごの粒が残って、とってもおいしそう! 小さめサイズのいちごはリーズナブルなので、ジャム作りにおすすめなのはありがたいですね。
それでは実際にレシピを見ていきましょう。
果肉はあと入れ! フレッシュないちごジャムの作り方
<材料>(容量150mlの耐熱瓶2個分)
- いちご…2パック(正味500g)
- 砂糖(グラニュー糖)…300g ※いちごの重さの60%量
- レモンの絞り汁…大さじ1
<下準備>
・いちごは洗って水気をペーパータオルで拭き取る。
<作り方>
1. いちごを切る
いちごはヘタを包丁で除く。
「ヘタの付け根の芯の部分が残ると、口当たりの悪いジャムに仕上がります。包丁で緑色の部分が残らないよう取り除きましょう」
縦半分に切る。
「いちごは半分に切ることで、水分が出やすくなります。小粒のものは切らずにそのままでもいいですが、そうすると食べるときにあっという間に使い切ってしまうので(笑)、今回は切りました。より果肉のフレッシュさを味わいたい場合は丸のままでも構いません」
2. いちごにグラニュー糖、レモンの絞り汁を加える
ボウルに切ったいちごを入れ、グラニュー糖を加える。
「砂糖は好みのもので構いませんが、今回は、すっきりした甘さで色がきれいに仕上がるグラニュー糖を使用しています。きび砂糖などのブラウンシュガーを使うと、コクのある仕上がりに。ただし色が若干くすむので、その点だけ念頭において選びましょう」
レモンの絞り汁を加える。
「レモンの絞り汁は変色防止のため、このタイミングで加えます。一般的ないちごジャムのレシピでは、いちごを煮た仕上げにレモンの絞り汁を加えることが多いのですが、煮るまえにレモンの絞り汁を加えたほうが、よりいちごの色が美しく保てます」
ゴムベラなどで混ぜて、グラニュー糖を全体にまぶす。
3. ラップをかけて一晩おく
ラップをかけて一晩おく。
「初夏など気温が高い時期は冷蔵庫に入れましょう。冬場で温度が低く直射日光の当たらない場所に置く場合は室温でも構いません」
冷蔵庫で一晩おいた状態。いちごからたっぷりの水分が出ていれば、ベストな状態。
4. いちごの果肉と水分に分け、水分だけ火にかける
いちごの果肉だけを別のボウルにすくう。
いちごから出た水分と底に沈んだグラニュー糖を鍋に入れ、強めの中火にかける。
「鍋は直径22cmの鋳物ホーロー鍋を使用しました。鍋は厚手のホーロー鍋や銅鍋がおすすめ。アルミ製の鍋は、フルーツの酸に反応してしまうので、不向きです。薄手の鍋やステンレス製の鍋も焦げつきやすいので、あまりおすすめではありません」
煮立ってアクが出てきたらすくう。
「沸騰すると泡が立ち、アクが出るので端に寄せ、レードルですくって取り除きます。アクは何度も取り除く必要はなく、一度取り除けばOKです」
5. 110℃まで温度が上がったら、いちごを加える
鍋に温度計を入れ、110℃になるまで加熱する。
「温度計がない場合は、泡の状態で判断しましょう。煮汁が飴状になる一歩手前の状態が110℃の目安です。最初は泡が細かいですが、110℃になると上写真のように大きな泡がところどころに出てきます」
110℃になったら4で取り分けておいたいちごの果肉を加える。
「110℃は、ジャムにほどよい濃度をつけるのに最適な温度です。煮汁が110℃に達しておらず、シャバシャバの状態でいちごを加えると、煮詰まるまでに時間がかかり、フレッシュな生のいちごならではのプレザーブ感がなくなってしまいます。逆に温度を110℃以上に上げると、いちごを加えたときに煮汁が飴のようになり、カチコチにかたまってしまうことも。鍋の中をよく観察して、ちょうどいいタイミングを見逃さないようにしましょう」
6. アクを除きながら15分ほど、中火でぐつぐつと煮る
火加減を弱めの中火〜中火に落とし、ときどき底から混ぜながらちょうどいい濃度(仕上がりの見分け方はこちら)になるまで煮詰める。いちごの果肉を加えたあとはアクが出続けるので、絶えず取り続ける。
「ジャムはゆっくり弱火でことこと煮るというイメージを持っている人がいますが、それは間違いです。強めの火加減で、短時間で仕上げるのがポイント。フレッシュ感が残り、色つやよく仕上がります。アクは面倒でも白っぽい泡が残って見た目が悪くなるので、丁寧に取り除きましょう」
15分ほど煮たいちごジャム。まだアクは出る。
7. とろみがついたらいちごジャムの完成
いちごに透明感が出てきてとろみがついたら、火を止める(確認方法は以下の囲み参照)。最後に表面に残っているアクをすくう。
【ジャムの仕上がりを見分ける目安①】
煮汁をレードルにとって指でなぞると跡が残る状態。すぐに跡が消える場合は、もう少し煮詰める。
【ジャムの仕上がりを見分ける目安②】
煮汁を冷水(氷を入れると○)に垂らすと、途中で散ることなく、底に沈むならOK。煮汁が水面近くで散ってしまったらNGなので、もう少し煮詰める。
ジューシーで甘酸っぱい! 真っ赤ないちごジャムは幸せの味
真っ赤でつややかないちごジャムができあがりました。早速、トーストにたっぷりのせていただくと、いちごの風味と甘酸っぱさが口いっぱいに広がります。ただ甘いだけではなく、酸味もしっかりあり、あと味軽やか。何より、ゴロッと入っている果肉がジューシーで、高級なスイーツをいただいているよう! まさに至福の味わいです。
【いちごジャムの食べ方アドバイス】バター、クロテッドクリーム、生クリーム、クリームチーズ、マスカルポーネチーズなど乳製品と好相性!
「私はバターを塗ったトーストにたっぷりいちごジャムをのせるほか、クロテッドクリームを塗ったスコーンにのせるなど、乳製品と組み合わせる食べ方が大好きです。また、いちごジャムはお菓子作りにも活躍します。いちごタルトを作るときに焼いたタルト生地に塗ったり、焼きたてのクッキーにサンドしたりするととってもおいしいですよ」
【ジャムの保存】長期保存するなら、覚えておきたい「瓶の煮沸消毒」基本の方法
自家製いちごジャムを作ってから2週間以上保存する場合は、必ず煮沸消毒した瓶で密閉して保存しましょう。ただし、100円均一ショップなどで売っている瓶には、熱湯に入れると割れてしまうものもあるので、必ず瓶の耐熱温度を確認してから使用してください。
2週間以内に食べきる場合は、清潔な保存容器に入れて冷蔵庫での保存で問題ありません。
1. 瓶をお湯に入れて煮沸する
瓶はよく洗う。鍋にたっぷりの水を入れて火にかけ、小さい泡が出てくるくらいまで温まったら瓶を入れる。パッキンがついている場合は、パッキンも一緒に入れる。
2. 沸騰したら1分ほど煮る
沸騰したらそのまま1分ほど煮る。
3. 瓶を取り出し、口を下にして網にのせて乾かす
1分ほどたったらトングなどで取り出し、網にペーパータオルを広げたところに瓶の口を下にしておき、そのまま自然乾燥させる。熱いのですぐに乾く。
4. 瓶とジャムがともに熱いうちに瓶にジャムを詰める
瓶が熱いうちに熱いジャムを瓶の9分目を目安に詰めてふたをする(熱いので火傷しないよう軍手などをして作業するといい)。瓶のふちにジャムがつくとカビが生えるので要注意。もしふちにジャムがついてしまった場合は、しっかり拭き取ること。あれば食品用のアルコール除菌を湿らせたペーパータオルを使うといい。
5. 3分ほどたったら、一瞬だけふたを緩め、空気を抜く
ふたをしてから3分ほどたったら一瞬ふたを緩め、すぐにふたをし、瓶の中に充満した熱い空気を外に逃がす。シュッという音とともに、空気が外に出て、中が真空状態になる。
6. 逆さにおいて、冷ます
瓶を逆さにして冷めるまで、そのままおく。逆さにすることで、ふたの間の空気を密閉する。
7. 冷蔵庫に入れる
完全に冷めたら冷蔵庫で保存する。未開封で2か月ほど保存可能。開封したら2週間以内を目安に食べきる。
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小島喜和さん
テーブルトップディレクター。季節のめぐりとともに暮らす日々。手仕事を行う楽しさ、美味しさを伝えることをライフワークに、自身の料理教室では「味噌」や「梅干し」など、【季節の手仕事教室】を開催している。『四季を愉しむ手しごと』(河出書房新社)など著書多数。
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