記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2025/3/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
年齢を重ねるにつれ、誰かの名前や経験した出来事、行った場所、言い回しなどが出てこない「うっかり忘れ」は多くなっていきます。この記事では、うっかり忘れが加齢に伴い増えていく原因と日常生活でできるうっかり忘れの予防対策について解説していきます。
加齢に伴い知っていたはずのことを忘れたり、なかなか思い出せなくなったりする「うっかり忘れ」は、加齢に伴い脳の前頭葉が委縮することが原因で起こるといわれています。個人差はあるものの、加齢に伴い脳は少しずつ委縮し、新しい情報を留めておいたり、整理し素早く取り出す力も衰えていきますが、これは脳のなかに無数に存在する神経細胞が徐々に死滅・減少し、脳内の情報伝達のネットワークが縮小されるために起こる現象です。
加齢による委縮は脳全体に及びますが、作業記憶を一時的に保存・整理する前頭葉は、委縮による機能低下の影響を受けやすいといわれています。前頭葉が情報を取得・整理し、使用するための優先順位を付けたりする能力は、加齢とともに衰え50代になる頃にはピーク時の70%程度になるといわれています。
繰り返し見聞きしたり、経験したことを作業記憶として留め、整理して使えるようにする前頭葉の働きは、「ワーキングメモリ」とも呼ばれています。うっかり忘れの大きな原因は加齢に伴い前頭葉が衰え、ワーキングメモリや記憶力が衰えることが影響している可能性があります。以下の対策でワーキングメモリの容量を確保し、記憶力を鍛えることは、うっかり忘れの予防につながる可能性があります。
ワーキングメモリの容量には限界があり、限界を超える容量の情報を整理・保持することはできません。容量には個人差がありますが、たくさんの作業を同時進行しようとするとワーキングメモリの容量を多く使うことになり、限界を超えるとひとつひとつを正しく記憶できなくなったり、情報の取捨選択がうまくできなくなったりするようになります。
物事に優先順位をつけ、ひとつずつ着実に終わらせていき、常に1〜2個分のワーキングメモリの空きを確保するようにすることで、うっかり忘れを予防できる可能性があります。
記憶は何度も出し入れすることで定着しやすくなり、出し入れの作業を繰り返すことは脳に程よい刺激を与えることにもなります。以下の方法で記憶をアウトプットする習慣をつけることで、うっかり忘れを予防できる可能性があります。
本人が心地よいと感じる程度の軽い有酸素運動を行うと、血流が促進されることで脳に酸素が行き渡り、活性化しやすくなるといわれています。ウォーキングやサイクリングなどの適度な有酸素運動を習慣化することで、記憶力が働きやすくなり、うっかり忘れを予防できる可能性があります。
新しい記憶は、まず作業記憶・ワーキングメモリとして前頭葉で整理・保存されます。その後、重要な記憶と判断されたもののみ、短期記憶を司る海馬に運ばれますが、前頭葉の働きは加齢に伴い低下していきます。若い頃と同じ状態に戻すことは難しいかもしれませんが、日常生活のなかでワーキングメモリの容量を確保し、記憶力を鍛える対策を取ることで、うっかり忘れが予防できる可能性があります。また、生活習慣病予防を心がけ健康を維持することも、脳の機能を保つことにつながります。