ついに17期目に入るアトム通貨!成功の秘訣を聞いてみた
東京の高田馬場・早稲田地域発祥の地域通貨である「アトム通貨」。
アトム通貨はその名の通り、手塚治虫の名作「鉄腕アトム」をモチーフにした通貨です。地域通貨は通常その地域でのみ使われますが、アトム通貨は全国展開されており、さらに2020年4月より17期目に入るという異例の発展をしているため注目が集まっています。
そこで今回はアトム通貨の発展の理由についてアトム通貨の運営に携わる手塚プロダクションクリエイティブ部プランナーの日高海さんにお話を伺いました。
アトム通貨の理念は手塚治虫が作品に込めた思い
ー本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、まず「アトム通貨」とはどのような地域通貨なのでしょうか。
日高 海さん(以下、日高):アトム通貨は2004年に高田馬場・早稲田の街で誕生した地域通貨です。「10馬力」、「50馬力」、「100馬力」、「500馬力」の全部4種類です。
アトム通貨の貨幣単位は「馬力」で、1馬力=1円として計算されます。アトムの力が10万馬力であることから、地域通貨にもアトムのようなパワーを持たせたいという気持ちを込めて設定に至りました。
ーアトム通貨はどのような経緯で誕生したのでしょうか。
日高:アトム通貨は、株式会社手塚プロダクション、早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)、早稲田大学周辺商店会連合会、高田馬場西商店街振興組合の4者の協働事業として始まっています。
当時、子供たちに役に立つこと、また、商店街の活性化に繋がることをしたいと弊社は考えており、WAVOCは学⽣にボランティア活動を推進したいと考えていました。高田馬場・早稲田地域を活性化させたいという思いが一致し、そこからこのプロジェクトが始まり、当時話題であった地域通貨を導入することにしました。
漫画「鉄腕アトム」の中で、アトムが⾼⽥⾺場で誕⽣したというエピソードがあるため、ありがたいことに、地域の方から「鉄腕アトム」は愛されていました。
そこで、アトムを通貨のシンボルとして使用し、手塚が作品に込めた思いを通貨の理念に反映し、アトムの1歳の誕生日である2004年4月7日にアトム通貨をスタートしました。
ーアトム通貨の理念とはどのようなものなのでしょうか?
日高:「未来の子どもたちのために」をテーマに、「環境」、「地域」、「国際」、「教育」の4つの推進を理念として活動しています。
「鉄腕アトム」をはじめとする様々な作品に手塚は、人と人とのつながりの大切さや、子どもたちの未来や地球の未来を危惧したメッセージを込めており、これらのメッセージを集めた著書『ガラスの地球を救え』に記された手塚の願いをもとに、アトム通貨の理念を決めさせていただきました。
アトム通貨は現金での購入はできず、この4つのいずれかに該当する行動をした方に配られています。
長く続く秘訣は地域の方々の強い気持ち
ーアトム通貨は非常に思いの込められた通貨ですね。アトム通貨が4月から17期目に入るとのことですが、ここまで長く続く秘訣はあるのでしょうか。
日高:地域の方々の「地域を活性化させたい」という気持ちが強いことが一番の要因だと思います。
アトム通貨はボランティアの参加などでも配布されますが、主に加盟店が理念に沿った行動をしてくれたお客様に配布することによって流通しています。ただ、配布するお店が配布した分だけ、アトム通貨分の金額を負担することになります。
例えば、あるお店ではレジ袋を利用しないお客様にアトム通貨を配布しています。スーパーを利用したことがある方はわかると思いますが、レジ袋は通常1枚2円です。アトム通貨は一番安くて「10馬力」ですから、金額的な部分だけでいうと損をしています。ただ、それ以上に「地域を活性化させたい」という気持ちから加盟店の皆さまが配布をしてくれています。
ー地域の方々が一丸となって利益のためではなく、地域を盛り上げようとしていることが長く続いている要因なのですね。
日高:そうですね。ある中華屋さんでは「マイ箸」を利用してくれるお客様にアトム通貨を配布しています。
まず最初にその中華屋さんではマイ箸を販売しました。購入したお客様の箸にはケースに名前を書いてお店で保管してくれるんですけど、名前が書いてあるので、お店の方がお客様の名前を覚えるんですね。
お店の人は、常連のお客様でもなかなか名前を覚えることはないと思うのですが、ケースに名前が書いてあるので、お客様を名前で呼べるんですよ。普段所属しているコミュニティ以外で名前で呼ばれる機会ってなかなかないと思うのですが、名前を呼び合うことによって対話が生まれる、また、お客様は家に帰って来たような気分になれ、お店とお客様のコミュニケーションがより活発になりました。
アトム通貨を導入することによって経済的な効果は見込めませんし、負担になる部分もありますが、それ以上の還元がある、ということでアトム通貨を導入してくれています。アトム通貨を地域を活性化させる一つのツールと考えて、さまざまなお店が独自の方法を発案し実行してくれています。
他にも、理容室では自分のタオルを持ってきてくれた人に配布したり、クリーニング屋ではクリーニング後のハンガーを持ってきてくれた人に配布したり、精肉屋では子どもが1人で買い物に来てくれたら配布したりしています。
ーお店が独自の方法でアトム通貨を活用しているのですね。アトム通貨の汎用性といったところが他の地域でも使われるようになった要因なのでしょうか。
日高:アトム通貨を導入した地域では、それぞれの地域の問題解決にあわせてアトム通貨を活用しています。地域コミュニティの再構築や商店街の活性化、ボランティアの推進、震災の復興、観光事業の振興などさまざまです。
最⼤12の⽀部を設けておりましたが、現在では、新宿区(⾼⽥⾺場・早稲⽥エリア)以外では新座市、春日井市、女川市で流通しています。
アトム通貨は4つの理念に沿った行動をした方に配られますが、さまざまな地域で「アトム通貨は良いことしたことによってもらえる」、「アトムは良いことのシンボル」となっていることは嬉しいですね。
これからも地域を活性化できる通貨でいたい
ー2020年4月より17期目に入るとのことですが、何か特別な取り組みはありますか。
日高:大きく何かをするといったことはありません。最近ではキャッシュレス化が進んでいることにより「電子マネー化はしないのか」とよく聞かれるのですが、紙幣でしかできない、アナログだからこそできるコミュニケーションがあると思うので、電子マネー化する予定もありません。
アトム通貨で経済的な効果を求めてはいないので、今後も地域の問題を解決し、地域を活性化できる、地域に愛される通貨でありたいと思います。
ーありがとうございます!アトム通貨がここまで長く続いている理由がとてもわかりました!
日高:色々説明させていただきましたが、アトム通貨はコレクションとして集めて、楽しむこともできるので丸山さんもぜひ集めてみてください(笑)。各地域によって紙幣のデザインが異なりますし、期によってもデザインを変えているので楽しいと思います。
ーぜひ集めさせていただきます(笑)お時間をいただきありがとうございました!
株式会社 手塚プロダクション
著作権事務局 クリエイティブ部 プランナー
2019年に株式会社サイバーエージェントに入社。 クレジットカード、キャッシュレス、カードローンの記事作成を担当。 愛用クレジットカードは楽天ゴールドカードでネットショッピングでは楽天市場を利用するようにしている。楽天ペイ、楽天Edyも使っており、楽天のダイヤモンド会員を維持している。最近はスマホを楽天モバイルに変えるか悩んでいる。 ヤフーカードやPayPay、Kyashなども利用しており、お得にポイントを貯めることが趣味。