明日香教授と考える原発と再エネ(上)
「米国では原発の建設費が高く、運転コストも再生可能エネルギーより高いというデータを政府や投資銀行が毎年発表している。国際エネルギー機関(IEA)は原発を再稼働して長期運転した場合の温室効果ガス削減コストが再エネ新設の6倍も高いと報告している。それでも日本では原発が安く、温暖化防止に役立つという言説がまかり通っている」
こう語るのは、東北大学大学院環境科学研究科の明日香寿川(あすか・じゅせん)教授だ。岸田政権が「温室効果ガスの排出削減に役立つ」と主張する原発の発電コストが再エネより数倍も高いという海外データは、日本ではほとんど知られていない。一体どういうことなのか。
環境科学やエネルギー政策が専門の明日香氏は2024年5月7日、参議院経済産業委員会の参考人として、意見を述べた。超党派の国会議員連盟「原発ゼロ・再エネ100の会」でも同日、講師として登壇。24年3月に米国を訪れ、政府関係者らにヒアリングした最新の調査結果などを報告した。明日香氏は経済産業省や環境省など政府の審議会の委員も務めた。
海外データで発電コストを比較
明日香氏が参考人として国会に提示した資料には、海外の詳細なデータが記されている。まず、米政府機関のエネルギー情報局が毎年発表している米国の電源別の発電コストだ。
同局によると、1メガワット時(1000キロワット時)当たりの22年の発電コストはバイオマスが90.17ドルで調整可能電源では最も高く、次いで高効率の石炭火力が82.61ドル、原発が81.71ドル、天然ガスが39.94ドル。これに対して太陽光は33.83ドル、陸上風力は40.23ドル、洋上風力は105.38ドルだった。
原発は再エネの太陽光や陸上風力より2倍以上、コスト高だった。同様のデータはIEAも発表している。
IEAが21年に温室効果ガスの排出削減コスト(1トンの二酸化炭素の排出を削減するためのコスト)を電源別に比較したところ、…
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