利用計画は年間わずか0.7トン… 日本にたまり続けるプルトニウム
原発の使用済み核燃料には10万年の隔離が必要とされる高レベル放射性廃棄物が含まれていて、国土が広い米国でも最終の処分地が決まらない。日本では、原発敷地内外の乾式貯蔵施設で「一時保管」した後の行き先として、プルトニウムや高レベル放射性廃棄物を分離する「再処理工場」が想定されているが、受け入れは進むのだろうか。
使用済み核燃料の乾式貯蔵方法を巡る現状を報告します。
初回 関西電力が抱える特殊事情
第2回 米独でも「長期保管」に
最終回 たまり続けるプルトニウム
再処理工場が完成しても複数のハードル
2019年1月22日、佐賀県庁。九州電力は、玄海原発(同県)の敷地内に乾式貯蔵施設を設置する事前了解願を県に提出した。県側が「住民から長期保存の懸念が上がっている」と指摘したのに対し、九電側は六ケ所再処理工場(青森県)が21年に運転を始める予定であることを理由に「搬出できるものは全て持っていく」と説明した。
だが、同工場は今も稼働していない。11年の東京電力福島第1原発事故後は、新規制基準に適合しているかどうかを巡る原子力規制委員会の審査が続いており、「完成予定」が26回も延期されてきた。現段階の完成予定は「24年度上期」だが、耐震性などを踏まえた詳細設計の課題が解決されておらず、27回目の延期が避けられないとの見方が強い。
一方、再処理工場では、本体の完成前に先行して使用されてきた施設がある。各地の使用済み核燃料を受け入れる貯蔵プール(貯蔵容量3000トン)だ。1998年から搬入が始まり、電力各社側は原発内のプールが満杯になるのを回避できた。だが既に容量の99%の2968トンが貯蔵されていて、今後の受け入れ余地はほとんどない。プールに空きを作るには、本体が完成してフル稼働しなければいけない。
しかし、工場本体が完成しても、順調な運転には複数の障壁がある。
関門の一つは、再処理の後に残る高レベル放射性廃棄物(高レベル廃液)のガラス固化だ。日本政府の方針通りに地下300メートル以深の岩盤に閉じ込める「地層処分」をするには、高レベル廃液とガラスを均等に混ぜて金属の容器に入れ、放射性物質を漏れにくくする必要がある。だが、高レベル廃…
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