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日本のDV施策 「一人負け状態」 井上匡子・神奈川大教授

神奈川大の井上匡子教授=横浜市神奈川区で2023年1月13日午後2時45分、大平明日香撮影
神奈川大の井上匡子教授=横浜市神奈川区で2023年1月13日午後2時45分、大平明日香撮影

 ドメスティックバイオレンス(DV)の対策を強化するため、政府は今国会にDV防止法の改正案を提出する。加害者に対して被害者への接近などを禁止する「保護命令」の対象に、身体的暴力だけでなく大声で怒鳴るなどの「精神的暴力」も加えることなどが主なポイントだ。これまでのDV対策や改正案の課題について、国内外のDV施策に詳しい神奈川大の井上匡子教授(法哲学)に聞いた。【聞き手・大平明日香】

 DV防止法改正について、被害者らの思いを3回にわたりお届けします。ラインアップは次の通りです。
第1回 被害者が今思う、精神的DVとは
第2回 DV家庭に育った福山哲郎議員の経験から
第3回 日本のDV施策 専門家「一人負け状態」

 ――日本のDV施策の現状をどう見ますか。

 ◆日本は諸外国における施策と比べて一人負け状態だと思います。欧米だけではなく、アジア諸国と比べてもです。日本はとにかく、被害者の保護や安全確保に関して「(加害者から)逃げる支援」からの脱却ができていません。

 海外では、「加害者が出て行く」という選択肢も含めて、被害者の安全確保や保護を考えます。被害者の回復のためにも、自宅で安心して暮らすことにはメリットが多いからです。また、自宅から離れるにしても、シェルター(一時保護施設)からステップハウス(自立支援施設)を経て、自立するまでの道筋をきちんとつけているところが日本と違います。

 加害者に対する刑事対応も遅れています。諸外国では被害者の保護だけでなく、加害者への法的訴追をDV防止施策の中に組み入れようとしています。実際、刑事処罰に至るケースは限定的ですが、DV施策全体の中では重要な意味を持っています。

 日本のDV防止法にも、接近が禁止されているのに被害者に近づくなど、保護命令に違反した場合の罰則は定められて…

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