第94回選抜高校野球大会は大阪桐蔭が4回目の優勝で幕を閉じた。約40人の部員をまとめ、西谷浩一監督(52)が「天性のリーダー気質」と認める主将の星子天真(てんま、3年)は10歳で誓った目標があった。
グラウンドでの優勝インタビュー。星子は「この代で(甲子園の)春夏連覇を目指せるのは自分たちだけ。3回目の春夏連覇を達成したいと思います」と宣言した。
1年前の春。星子はボールボーイとして甲子園のグラウンド脇にいた。初めての雰囲気に「圧倒された」というが、同じぐらい驚いたのが甲子園で戦う難しさだ。1回戦で智弁学園(奈良)に6―8で敗戦。「自分たちと比べてレベルの違う先輩が実力の半分も出せていなかった。技術があるから出せるわけではない。勝ちたい気持ちが強い方が勝つのが甲子園」と知った。
その経験を生かし、今大会の準々決勝でチームが6本塁打を放つと、準決勝の試合前に大振りにならないよう、西谷監督よりも先に選手たちに伝えていた。
熊本県出身。熊本の星子と聞けば、1996年夏の甲子園決勝の松山商(愛媛)-熊本工で、同点の十回裏1死満塁で三塁走者として右飛でタッチアップして「奇跡のバックホーム」で生還を阻止された星子崇さんが有名だ。星子は「もちろん知っています。よく聞かれるんですけど、親戚ではないです」と笑う。
野球を始めた小学2年、テレビで見た甲子園で藤浪晋太郎(阪神)と森友哉(西武)を擁した大阪桐蔭が春夏連覇を果たした。その2年後の2014年には夏の甲子園優勝を果たし、「TOIN」のユニホームへの憧れはさらに強くなった。当時、小学校で20歳の成人の半分の年齢を祝う行事「2分の1成人式」で、作文に「大阪桐蔭で春夏連覇したい」と書くほど思いが強かった。
父は中学時代に野球部主将で、母も中学でバスケットの主将、兄も福岡大大濠で主将を務めた主将一家。星子自身も仲間に声をかけてチームを引っ張ることにやりがいを感じる性格。小学生の所属チームやソフトバンクホークスジュニア、中学の硬式チームでも主将を務めてきた。
大阪桐蔭でも昨秋、主将に就任したが、当初は「嫌われたらどうしよう」と人間関係を気にして強く言えなかったという。中学までは技術面で引っ張ることができたが「高校では周りも技術が高い選手が多い中で何ができるんだろう」と悩んだ。
昨年末、OBで17年センバツ優勝時に主将だった福井章吾(トヨタ自動車)が大阪桐蔭のグラウンドを訪れた際に相談した。福井から「一方的に言うよりも、もっと周りを巻き込んだ方がいい」と助言された。まずは自ら雑用などを率先した上で「一緒にやろう」とチームメートに促すようになった。
無敗のままセンバツ優勝を果たし、約8年前に掲げた目標に半歩、近づいた。だが、休むことなく新たなチーム作りが始まる。「1年生を含めて3学年で夏の頂点を目指したい」。168センチの主将の視線は早くも次に向いている。【安田光高】
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