善福寺公園めぐり

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西アフリカ4カ国の旅 その5

西アフリカの旅の4日目、ガーナに着いて2日目の続き。

アフリカにきてからずっと海岸沿いを走ってきたが、内陸にあるクマシへ向かう。

17世紀から19世紀ごろにかけてガーナの森林地帯を支配したアシシャンティ王国の都だったところだ。

 

途中、街道沿いのローカルレストランで昼食。

レストラン入口の厨房をのぞくと、餅つき?をしている人がいる。

ガーナーの国民食「フフ」をつくっているところだった。

「フフ」とは、ヤムイモやキャッサバなどを茹でて臼と杵でついてつくる料理で、アフリカを代表するポピュラーな食べ物。地域によってはトウモロコシや雑穀の粉を熱湯で練ったりもするようだ。

米やジャガイモで作られることもあるようだが、こうした「餅の状態」のことを「フフ」と呼んでいるらしい。

 

テーブルの上に「フフ」が出てきた。

食べてみたら、日本のお餅に似た食感で、おいしいこと!

その後もいろんなレストランで「フフ」を食べたが、ここのが一番おいしかった。

「フフ」は粉になっているヤムイモやキャッサバを固めてもつくられるが、一番本式なのは茹でたヤムイモやキャッサバをペッタンペッタン臼と杵でついて餅にする方法で、しかもつきただったのでおいしかったのではないか。

日本から持っていった醤油とも相性がよかった。

「フフ」と一緒に食べた魚や肉の料理。

地元の人たちはナイフはフォークは使わず手で食べるから、右手でフフをつまんで丸めてスープに浸しながら食べていた。

 

それにしても、なぜこんなにも「フフ」がおいしいのか。

実は今でこそ日本人の主食はお米のご飯だが、稲作が渡来するまで日本人の主食は同じヤムイモの仲間のヤマイモ、自然薯(じねんじょ)だったともいわれているのだそうだ。

ヤマイモの味を懐かしむ遺伝子が、体の奥底に備わっているのだろうか。

そういえば芥川龍之介の小説にも「芋粥」という作品があって、平安時代、自然薯でつくった芋粥をおなかいっぱい食べたいという男の物語だった。

昔、沖縄によく行っていて、那覇山本彩香さんの店に通って今でも忘れられないものに「どぅるわかしー」という家庭料理がある。

それは「ターンム」と呼ばれる里芋の一種の田芋を中心にした具だくさんの料理だった。

山本彩香さんは「どぅるわかしー」をつくるとき、蒸したターンムを、ゆでたタームジ(ターンムの茎)と一緒につぶして、賽の目に切って炒めた豚のバラ肉、シイタケ、キクラゲ、カステラかまぼこ、グリーンピースなどとともカツオだしでじっくり炒めてつくる。

味のポイントとなるのはあのねっとりしたターンムの食感。あれはまさしく西アフリカのフフではないか!

 

デザートはパイナップル。毎食ごとにフルーツが豊富だ。

先にも書いたが、今回の旅では毎回の食事に野菜が豊富に出ている。

なぜかといえば野菜はもともと熱帯原産が多いのだから、豊富なのは当然といえるかもしれない。

それに豆類に、主食のヤムイモ、キャッサバ、さらにはトウモロコシなど。

プランテンという甘くない調理用のバナナもある。

少し古いデータだが、英国ケンブリッジ大学代謝科学研究所の疫学部門の今村文昭博士らの研究グループが、2010年の世界187カ国450万人の食事調査から各国の食事の健康度をスコア化し国別に採点したデータがある。

同調査をもとに栄養学的に健康的な10品目(豆類、魚、ミルク、野菜、果物など)を多く消費している国々を並べたところ、上位10カ国にはセイシェルモーリシャス、チャド、中央アフリカ、マリ、カボベルデというアフリカの6カ国が入った。

一方、非健康的な7品目(赤身肉、加工肉、砂糖飲料、脂肪など)を少なく消費している国の上位10位には、ブルンジルワンダマラウイエリトリアエチオピアソマリアシエラレオネというアフリカ7カ国が入った。

ガーナの順位はわからないが、少なくとも日本よりは上で、上位50カ国以内には入っていた。

ちなみに日本は、健康的な10品目のスコアでは187カ国中、真ん中当たりの90番目。非健康的な7品目のスコアでは日本は187カ国中の118番目と下位に低迷している。

ということはつまり、経済的には最貧国が軒並み多いアフリカは、貧しいけれども、いや貧しいからこそなのかもしれないが、食生活の点では健康的な毎日を送っている人々がけっこう多いというのだ。

アフリカには、未来の食生活の希望が灯っているのかもしれない。

 

昼食後、クマシに向かう途中、チョコレートの原料であるカカオの畑に立ち寄る。

幹からぶら下がっているのがカカオポットと呼ばれるカカオの実。

ラグビーボールみたいな形をしていて、このなかに白い綿のような果肉につつまれた種子が詰まっている。

この種子を発酵・乾燥させるとチョコレートの原料となるカカオ豆となる。

一粒もらって口にすると、果肉は甘く、中のタネをかじると紫色をしている。

ポリフェノールの色であり、これが健康にもプラスするのだろう。

 

カカオ畑の隣は学校で、ちょうど授業が終わったところだった。

帰宅する子どもたちはみんな陽気な感じだった。

 

本日の宿はクマシにあるランカスター・クマシ。

ビールに料理、デザートはフルーツ。

(その6につづく)