2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
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幸せ視点の経営を学ぶ、革新的なオンラインスクール hintゼミの主催で行われた本イベント。新著『小さくはじめよう 自分らしい事業を手づくりできる「マイクロ起業」メソッド』を出版した、ビジネス・ブレークスルー大学経営学部教授の斉藤徹氏が登壇しました。本記事では、反発や愚痴を言うタイプや最低限の仕事しかしないタイプの部下への対話のコツを明かします。
斉藤徹氏(以下、斉藤):続いて、「信頼のトライアングル」について参考までにお話しします。これは、お客さんに「期日を遅らせるかどうか」という難しい話をする時には、とても大切だと思います。
長期的に相手から信頼されるためには、3つの要素が必要です。1つ目は、言っていることが真実であること。相手の顔色を見て意見を変えていたら、その時は心地よいかもしれない。でも、できるかどうかわからないのに「やります」と言っていると、結局信用されなくなるわけです。なのでやはり真実を伝えることが大切です。
2つ目は、伝える時には論理的に伝えること。とんちんかんなことを言ったら信用されないですから、真実性・論理性はとても大切です。
ただ、この2つだけで話すと、評論家みたいに聞こえちゃって、(相手は)腹が立ってくるんですね。上司だって評論家みたいに言われたら腹が立ちます。第三者的に言われたら、「いや、あなたがやっているんでしょ」となりますよね。
そこで大切になってくるのが共感性です。お客さんや上司の立場、(相手の)会社の中で置かれている状況も気遣いつつ、「今、こういう状況なんだ」と真実を論理的に伝える。例えば具体的な進捗がわかるように工数表を作ったりして、お客さんと一緒に論理的に考える。この3つがそろうと、お客さんも聞いてくれます。
斉藤:さて続いては、独善型タイプ、部下に反発や愚痴を感じる場合です。「いやぁ、無理なスケジュールだと最初からわかっていたんですよ」「人を投入するか、期限を延ばすか。このままだと頓挫しますよ」という感じになりますね。
「いや、でもリーダーでしょ」「わかりました。じゃあ、お客さんの要望を全部断りましょうか」と。こう言われると、がっかりしちゃいますよね。こういう人は、どうすればいいんでしょうか?
3つのタイプの中では、一番「私メッセージ」で変わるタイプです。このタイプは言いたいことをちゃんと言えるタイプなんですが、評論家的に言っちゃう。だから責めるんじゃなくて、「一緒に解決して価値を生み出そうよ。ワンチームでそういうことをしたいんだ」と伝えることが大切です。
その上で、「能動的な傾聴」と「第三案の共創」です。これは先ほどと同じパターンですが、「私メッセージ」がターニングポイントになります。例えば「何か手が打てませんか?」と(相手が)言った時……。
ここで、「なるほどね。悪いニュースを率直に教えてくれてありがとう。自分は現場にいないから、この危機を見逃すところだった。でも大きなトラブルになる前に、君と一緒にこの問題を解決したい。そのためにも、他に気になることがあれば、ぜひ共有してくれるとうれしいな」と。
こういう「私メッセージ」を伝えると、いろいろ出てくると思いますよ。「問題はいろいろあると思います。やはり一番困っているのは、お客さんのニーズがころころ変わることです」「なるほど。お客さんのニーズが変わりやすいんだ。具体的な例があれば聞かせてくれる?」。
ここでまた、もっと具体的にいろいろ出てくると思います。「なるほど。このまま期待された品質で、期日どおりに納品することは難しそうだと判断しているんだね。その場合、お客さんに相談して、納期の期日を遅らせることは現実的かな?」と。「遅らせなさい」と言うんじゃなくて「どう思う?」と相談します。
「でも、それは話してみないとわからないですね。おそらくお客さんは、現時点では想定していないと思います」「だとしたら、現状を正しく認識していないかもしれないから、まずそれを正確にお伝えすることが大切かもしれないね。どうやって伝えたら、お客さんは話を聞いてくれるだろう?」。
斉藤:そうすると、「個々の仕様変更に伴って発生する工数を一覧にして、仕様ごとにチームが割ける工数と発生する工数を比較する表を作ります。そうすると、『この仕様はやってほしいけど、この仕様は次のステップにしようか』と優先度を考えていただけると思います。論理的にお話すれば、聞いていただける方なので」と、だんだんと気持ちが前向きになってくる。
「それはいいアイデアだね。このチームがさらに成長するチャンスかもしれないね」と伝えます。(こういうタイプは)1人で走りがちなので、ここでちょっとチーム感を出します。「そうですね。率直にお話しして良かったです。たたき台となるデータはあるので、整理して、明日にでもお話ししてみますね」。
「いいね。お客さんとの信頼醸成が物を言いそうだね。昔、自分がやって良かった『信頼のトライアングル』というのがあるんだけど、もしかしたら参考になるかもしれないね」と言ったら、「いいですね。ありがとうございます。参考にしてみます」と、こんな感じですね。
独善型の場合は、自ら考える習慣がある程度身についています。愚痴にしても意見が出るということは、自ら考えているわけです。だから「君の意見をもとに問題を解決して、お客さんの価値を創出したい」と伝えるのが最初のステップですね。
このタイプの人は、ついネガティブなことを言っちゃって、(本人も)反発されやすいという自覚を持っていることが多いんです。そこで耳が痛いことも真剣に傾聴する。そうすると、「あ、この人は違うな」と信頼が芽生えてくる場合が多いです。
また、独善型の人は自ら考える能力を持っていることが多いので、「第三案の共創」では、同調型より一段レベルの高い問いかけをしてみる。「どう伝えれば」と具体的に「How」を考えてもらうのはいかがでしょうか。
斉藤:さて、一番難しい無関心型ですね。(無関心型の人に)「いや、まぁ、お客さんは怒ると思いますよ」と言われると、相当厳しい感じがするんだけど、これもちょっと考えてみました。
ストレートに伝えるのは難しいです。このタイプの人は、いわゆるワークエンゲージメントがとても低いんですね。「とりあえず言われたことをやればいいや」という感覚なので、仕事に対してもう少し前向きになってもらうことが必要です。
そのためには、「誰かのためにやっている」という感覚じゃなくて、「自分のためにやっているんだ。自己成長につながるんだ」と感じられるかどうかがキーになると思います。これは『だから僕たちは、組織を変えていける やる気に満ちた「やさしいチーム」のつくりかた』でも書きましたが、「仕事の意味を感じてもらうこと」がすごく重要だと思いますね。
じゃあ、実際に見ていきましょう。「まあ、厳しいですね」「遅れている原因は何だろう。どんな小さなことでもいいので、聞かせてくれるとうれしいな」「ちょっと原因は出てこないけど、厳しいですね」と。ここでひと呼吸置きます。
「なるほど。率直に現状を教えてくれてありがとう。ちょっと話は変わるんだけど、君はこのプロジェクトを通じて、どんなことを学びたい?」と問いかけてみる。そうすると、「考えたことがなかったですね。ただ生成AIを呼び出して処理するところは、なんかおもしろそうだなと思いましたね」とか。
ポロッとこういうことが出てきたら、「なるほどね。生成AIやプロンプト技術に、趣味じゃなくて仕事として関われることは、今後技術者としての君の成長にも大きく寄与するんじゃないかな。いいことだと思うよ」と伝える。そうすると「実は僕もそう思って、You Tubeで独学で勉強したりしています」とボソボソと言うかもしれないので、しっかり傾聴します。
斉藤:「YouTubeでどういうのを勉強しているの?」。無気力な人でも自分の好きなことはすごく話します。あと将来が不安なことは間違いないんですね。こういうタイプであればあるほど、未来は間違いなく不安なんです。だから自分の未来の成長につながるとわかると、話が変わってくるんですね。うまくハマるとこんな感じになります。
「なるほどね。例えば今回のプロジェクトで、君がさらにAIを組み込む提案をするとしたら、どんなことがある?」と聞く。そうすると、「例えばこういうところに、AIを使ったらおもしろいと思いますよ」「それはおもしろいね。気づかなかったよ」という感じですね。
相手がどんなことを言っても、「今はそんなことは大切じゃないだろう」と思わずに、できるだけ真剣に聞いてあげることです。「なるほど。それはお客さんも興味を持ってくれそうだね。ちょっと営業部に提案してみよう」となれば、「それができると楽しそうですね」と、だんだんワークエンゲージメントが高まっていきます。
一発でこうなるかどうかはわからないですが、質問することで、自分にとっての仕事の意味や、自己成長とどうつながるのかに気づいてもらう。
そして、「そうだよね。僕もこのチームの一人ひとりが仕事を通じて、強みを活かして成長してほしいと思っているんだ。仕事はそういうものだと思うんだよね。そのためにも今の厳しい現状をなんとかしたいと思っているんだよ」と伝えてみる。
斉藤:「そうですよね。ただ、このプロジェクトは問題があって、お客さんがアイデアマンなんですけど、次から次に変更があるんですよ」と彼なりに(考えが)出てきます。「そうだったんだ。それは期限を守りながら、対応できそうなことなの?」と言うと、「いや、厳しいと思いますよ。当初の想定工数を大幅に上回るはずです」。
「そうか。仕様変更もあると、それだけ工数が増えてしまう。そりゃそうだよね。それをお客さんは理解しているかな?」と聞くと、「いや、してないと思います。理解していたら、コストや期日に直結すると思うだろうし、もっと慎重になると思います」「だとしたら、現状を正しく認識して、正確にお伝えしたら、このプロジェクトはもっとうまくいくかもしれないよね。どう伝えたら、お客さんは話を聞いてくれるだろうか?」。
「工数を入れた仕様変更の一覧を作ったら、お客さんは聞いてくれるかもしれないな」「それはいいアイデアだね。それだったら増える工数も一目瞭然で、必要な仕様変更を選択してくれるかもしれないよね」とつなげていく。
この場合だと、「仕事の意味」→「能動的な傾聴」→「私メッセージ」の順番です。仕事に対して「ちょっと前向きじゃないな」と思ったら、まずは「仕事の意味」で興味を持ってもらい、傾聴する。その上で「私メッセージ」を伝える。それから傾聴しながら、共創していくパターンになります。
斉藤:無関心型の場合、仕事に対してやらされ感覚が強いです。「生活のために」と割り切って働いていることが多いので、使命感を持つ鍵になるのは、「この仕事は、自分の未来にとって意味のある大切なものなんだ」と自ら気がつくこと。ここの話が最初にできるといいなと思います。
ただし自分である程度想像したとしても、「いや、君はこうだと思うよ。これをやったほうがいいと思うよ」と仕事の意味をこちらが押しつけちゃったらだめなんです。押しつけないで問いかけること。本人の発言を軸として、対話を通じて仕事の意味を共創していくのが、無関心型タイプの場合はものすごく大切だと思います。
「今の仕事は自分にとっても価値があるものだ。やらされているだけじゃないんだ」となれば、お金だけじゃなくて仕事そのものに関心が湧いてきます。そこが問題解決のスタートになります。このタイプは自ら考える習慣がないことが多いので、焦らないで問題を分解して、無理なく丁寧に進めていくことが大切です。
斉藤:ここで、自ら働きかけて仕事を手づくりする「ジョブ・クラフティング」のお話をしたいと思います。今日はちょっと時間がないので、さらっといきますね。無関心型の方は、ほとんど「与えられた職務を淡々とこなす」だと思います。でもそこから、働きがいを感じる仕事を自ら手づくりすることができるんです。
これには3つのアプローチがあって、まず最初に大切なのは「仕事の意味」です。自分で仕事に対する意味づけを捉え直すと、仕事が楽しくなってくるんですね。
そうすると、「仕事」そのものに意識が向く。内容や段取りに創意工夫を加えてみると、さらに仕事がおもしろくなり、「関係性」もよくなっていく。関わり方を変えるとさらにおもしろくなる。こうやって、だんだんと内発的動機が芽生えてくる。これがジョブ・クラフティングです。
今日はメインテーマじゃないのでお話できないんですが、ご興味のある方は『だから僕たちは、組織を変えていける』公式ページにダウンロードできる講演の資料が7つあります。その中に「④働きがいは手づくりできる」というスライドがあって、今のお話について80ページぐらい書いてあるので、ぜひダウンロードしてみてください。無料です。
実際の対話では、当初想定した案にこだわり過ぎずに、傾聴と対話を繰り返して、相手の考えを軸として採り入れること。つまり臨機応変に「価値を共創していく」感覚が大切です。「一緒に問題を解決する」というイメージでお話しできるといいと思います。
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