民主党と自民党が消費税増税合戦をすることになって、もはや動かしがたい流れとなった税制論議だが、当ブログが何度も繰り返し主張するように、日本の税収で一番不足しているのは所得税である。
財務省のウェブページに、租税負担率の内訳の国際比較が出ている。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/021.htm (註:現在はリンク切れ=2012.1.26追記)
リンクを張っただけでは、読者の多くはリンクに飛んでご覧いただくことをしないと思うので、下記にリンク先に掲載されているグラフを示す。欧米諸国と比較して、日本の個人所得税負担率が低いことは一目瞭然である。
そして、なぜ日本の所得税収が少ないかというと、それは超高所得者が応分の負担をしていないからである。それを示すのが、同じく財務省のウェブページに掲載されている、平成19年度の申告納税者の所得税負担率のグラフである。
http://www.mof.go.jp/genan22/zei001e.htm#02 (註:現在はリンク切れ=2012.1.26追記)
これも同ページからグラフを借用して貼り付ける。
一目瞭然、1億円を超える超高所得者の税負担が軽くなっている。
これが、日本の税制がいかに超高所得者を優遇しているかの動かぬ証拠である。
超高所得者が、分離課税だらけの所得課税の恩恵を受けていることはいうまでもない。
この財務省のウェブページには、他にも面白いグラフがたくさん載っているので、是非ご覧いただきたい。
[追記1]
id:statsreadさんからいただいたコメントを以下に紹介します。
元の統計の方もざっくりと読ませていただきましたが、
「超高所得者が、分離課税だらけの所得課税の恩恵を受けていることはいうまでもない。」
というところが重要なんでしょうね。
所得階級が5000万円を超えたあたりから「株式等の譲渡所得等」の割合が急上昇しています。
譲渡所得は申告分離課税で税率が総合課税の税率よりも低いので、結果として実効税率が下がってしまいます。
このあたりのことは、多分意外に知られていないことではないかと思うのですが、過去の記事で既出かもしれませんが、本記事からのリンクがないようでしたので、ちゃんと説明しておかないと誤解を招いてしまうのではないかという気がします。
逆に言えば、分離課税の問題を解決しないで、総合課税の税率のみを上げると、ここで指摘される問題がより深刻化してしまう危険性があります。
ご指摘の通りで、その点がこのエントリで私が主張したかったことです。そしてこれは、菅首相のブレーンの一人といわれ、税調専門家委員会の委員長を務める神野直彦氏が、著書『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書、2007年)で特に強調していた事項の一つで、その傍証となるグラフを紹介したというのがこのエントリの本意です。要は、菅首相のブレーンの学者は、何も消費税増税を菅首相に進言しているのではなく、税制の抜本改正は所得税から行えと主張しているわけです。
[追記2]
このエントリに言及した記事を、別ブログ「きまぐれな日々」に公開しましたので、よろしければあわせてご覧下さい。
きまぐれな日々 「金持ち天国」の日本 ─ 「やせ我慢根性」から脱却せよ