平成29年分の確定申告から医療費控除は領収書が提出不要に!?この制度変更で得られるメリットとは?
一定額以上の医療費がかかった場合、確定申告で医療費控除を利用できます。 しかし、「確定申告でいざ医療費控除を申請しようと思ったら、領収書がない!」と慌ててしまった経験はありませんか?
そんな方に朗報です。平成29年(2017年)分の確定申告から、医療費控除の際に領収書の提出が不要になります。
今回は医療費控除の制度とは、そもそもどういうもので、平成29年度からどのように変わるのか、どういったメリットがあるのか詳しく解説します。
【目次】
医療費控除とは?
医療費控除の対象になるもの
医療費控除による節税効果
「医療費控除に関する明細書」の記入方法
1.医療費通知に関する事項
2.医療費(上記1以外)の明細
3.控除額の計算
結局、医療費の領収書はどうすればいいの?
制度変更によるメリットは?
「セルフメディケーション税制」も導入されている
マイナンバーは医療費控除に活用できないのか?
制度変更で医療費控除が受けやすく
確定申告をカンタンに終わらせよう!
STEP1: 基本情報の入力
STEP2: ◯✕形式で医療費控除の金額もカンタンに計算
STEP3: 完成!
まとめ
医療費控除とは?
平成29年度分からの変更点を確認する前に、そもそも医療費控除とは何なのかをご説明します。
医療費控除とは、1年間(1月1日から12月31日まで)の医療費が10万円を超えた場合、所得控除を受けられる制度を指します。自分だけではなく、家族のために支払った医療費も対象です。
個人事業主(フリーランス)で医療費がかかった場合、健康に生命を維持するための支出として考えます。売上に貢献する経費ではないため事業用の経費にはなりませんが、医療費控除として所得からマイナスすることができます。
1年間の家族全員の医療費が対象になりますので、家族の医療費のレシートは必ず保管し、交通費は領収書をもらったり、記録をしておきましょう。
医療費控除の対象になるもの
病院に行けばなんでも医療費控除の対象になるわけではありません。以下に医療費控除の対象になるものをまとめます。
<医療費控除の対象になるもの>
- 医師に支払った診療費・治療費
- 治療や療養に必要な医薬品の購入
- 入院の部屋代、食事費用
- 手術代金(一部例外あり)
- 通院や入院のための交通費
- 出産費用
- 市販の医薬品
参照:国税庁 医療費控除の対象となる医療費
医療費控除の対象になるか、ならないかの判断の基準は「治療」であるかどうかです。予防のための医療費は対象になりません。
このため、健康増進のためのサプリメントやドリンク、美容整形は対象になりません。また、入院や通院のための交通費に関しては、自家用車ではなくタクシーや公共交通機関が対象となるため注意が必要です。
医療費控除による節税効果
医療費の対象となる領収書をまとめたら、以下の計算方法で医療費控除と節税できる金額を算出します。
節税できる金額 = ( 支払った医療費 - 既に受領した保険金や給付金 - 10万円※ ) × 所得税率 ※所得金額が200万円未満の方は、10万円ではなく、所得金額の5%分を差し引きます。
まず、1年間に支払った医療費の合計金額から保険金等で補てんされた金額を差し引きます。さらにそこから10万円、総所得が200万円未満の場合は総所得金額の5%を差し引きます。これが「医療費控除額」にあたり、そこの所得税率をかけると節税金額が算出されます。
ちなみに、保険金等で補てんされた金額とは、以下のようなものです。
- 出産育児一時金
- 高額療養費
- 生命保険、損害保険の保険金
- 医療費の補てんが目的の損害賠償金
なお、後述しますが、確定申告ソフトのfreeeでは医療費の金額などを入力すれば、この計算も自動で行います。
「医療費控除に関する明細書」の記入方法
今回の制度変更の最も大きな点は、「領収書」の提出に替えて「医療費控除に関する明細書」の提出となったという点です。すでに国税庁から「医療費控除の明細書」の提出フォームが発表されています。 (出典:国税庁「医療費控除の明細書」)
これまでは、医療費の「領収書」を確定申告書と一緒に提出していました。しかし平成29年分の確定申告からは、この「医療費控除の明細書」を提出することになります。
「医療費控除の明細書」の入力フォームは、以下の3つの項目に分かれています。
- 医療費通知に関する事項
- 医療費(上記1以外)の明細
- 控除額の計算
1.医療費通知に関する事項
まず気になるのが、冒頭にある「医療費通知に関する事項」ではないでしょうか。健康保険証を発行する健康保険組合から、毎年1年間にかかった医療費の明細を受け取っているかと思います。この明細は「医療費のお知らせ」など、健康保険組合ごとに名称が異なりますが内容は同じです。
平成28年まで、医療費控除には必ず医療機関などの領収書を添付していましたので、せっかく健康保険組合が集計して送ってくれているこの明細通知ですが、確定申告では利用することはできませんでした。この明細通知をもっと活用していこうという動きがあり、今回の変更につながっています。
医療費明細に記載されている内容のうち、次の3点を「医療費控除の明細書」の一番上の欄に記載します。
- 医療費通知に記載された医療費の額
- 1のうちその年中に実際に支払った医療費の額
- 2のうち生命保険や社会保険などで補填(ほてん)される金額
また、入院給付金などを受けている場合は、その金額も記載します。記入に使用した「医療費のお知らせ」などの通知書は、「医療費控除の明細書」と一緒に提出しますので、必ず保管しておきましょう。
2.医療費(上記1以外)の明細
次いで2番目の欄には、医療機関ごとの明細を記入します。
同一生計の家族(妻や子どもなど)がいる場合は、各人ごとに記入し、同じ人が同じ医療機関・薬局を利用した場合は、まとめて記載できます。なお、医療費控除では、通院にかかった交通費も還付の対象となります。その場合は、「支払先名称」に鉄道会社名やバス会社名などを記入し、医療費の区分欄は「その他の医療費」にチェックを付けます。そして、「支払った医療費」欄に交通費の合計額を記入しましょう。
3.控除額の計算
3番目の「控除額の計算」は指示に従いながら計算し、控除額を記入します。 (出典:国税庁「医療費控除は領収書が提出不要となりました」)
なお、毎年の例に従うと、「医療費控除の明細書」は確定申告が始まる前にエクセル版が公開されますので、公開されてから記入していくことをおすすめします。
結局、医療費の領収書はどうすればいいの?
ここまで、「医療費控除の明細書」を記入してみて気になるのが、領収書の扱いです。 領収書の提出は原則不要ですが、冒頭でも述べたように医療費の領収書は5年間の保管が義務付けられています。
後々になって、「医療費控除の明細書」の内容確認のために、税務署が領収書の提出を求めてくる可能性もありますので、領収書は決められた保管期限まで保管しておきましょう。なお、平成29年から3年間は、移行期間として、従来通りの領収書での提出も認められています。
制度変更によるメリットは?
今回の制度変更によって、確定申告をする納税者側は、健康組合から送られる「医療費のお知らせ」を利用して医療費控除の書類を作成できるようになりました。これによって煩雑な記載事項が減ったということと、領収書の提出が不要になったことが納税者側にとっての最大のメリットと言えるでしょう。
また、税務署側にとっても「毎年大量に提出される医療費の領収書を保管しなくてよい」というメリットがあります。
「セルフメディケーション税制」も導入されている
医療費控除に関わるもう一点の変更点として、平成29年から「セルフメディケーション税制」が導入されている点にも注目です。
セルフメディケーション税制とは、国の医療費を削減するための医療費控除の特例で、「スイッチOTC医薬品を年間1万2,000円以上購入すると節税できる」という仕組みです。病院に行かなくとも、自分で薬を買って治療することを推奨しています。
ただし、「医療費控除の明細書」のフォームにも記載されているように、従来の医療費控除だと、このセルフメディケーション税制を併用することはできません。
医療費控除であれば、病院での診察代や治療代のほか、薬局で購入した薬代が10万円以上でも対象になります。一方、セルフメディケーション税制は年間1万2,000円以上購入した「スイッチOTC医薬品のみ」が対象です。両方にあてはまる場合は、どちらか一方を選択する必要があります。
マイナンバーは医療費控除に活用できないのか?
2015年10月に導入された「マイナンバー」。マイナンバーは「税と社会保障の共通番号」ですから、わざわざ「医療費控除の明細書」のような書類を作成せずに、納税額と控除を受けるための医療費の対象額がワンストップで集計できれば便利ですよね。
実際のところ、政府はそういった仕組み作りを目指しています。今後は、マイナンバーカードを使って利用できるウェブサイト「マイナポータル」上で、保険適用医療費データ(上述の健康組合から送られる「医療費のお知らせ」など)を取り込み、電子申告できるようになるということです。
ただ、こうしたシステムの実現には、健康保険組合などの保険者と国税庁が連携して情報を共有しなければなりません。また、マイナンバーの運用にはさまざまな公的機関が関わっているため、調整が難航しているのが現状です。そのため、マイナポータル上での自動集計にたどり着くまでは、まだまだ時間を要することが推察されます。
制度変更で医療費控除が受けやすく
これまでは、医療費の領収書を紛失すると、控除の対象から外されてしまっていましたが、「医療費のお知らせ」の活用によって医療費控除の申請がしやすくなりました。
マイナンバーとの連携という課題は残っていますが、集計漏れを防いで、納税者が損するようなことがなく正確に申告できるという点では、大きく前進したと言えるのではないでしょうか。
確定申告をカンタンに終わらせよう!
最後に、実際に確定申告や医療費控除のための申請書を作成する際、手早くカンタンに終わらせる方法をご紹介します。
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があり、期限までに書類を作成し納税をすることが重要です。
書類の作成には、手書きのほか、国税庁の「確定申告等作成コーナー」や会計ソフトで作成する方法がありますが、「確定申告書の作成は難しいのでは?」と苦手意識をお持ちの方も少なくありません。
そこでお勧めしたいのは、確定申告ソフトfreeeの活用です。
確定申告ソフトのfreeeは、会計の知識がないから不安だという方でも、質問に沿って答えていくだけで簡単に書類を作成することができます。もちろん、29年度からの医療費控除の制度変更にも対応。細かく自分で計算をしなくても、ステップに沿って金額を入力するだけで「医療費控除の明細書」が完成、プリントアウトをするだけでOKです。
以下に書類を作るまでのステップをご紹介します。
STEP1: 基本情報の入力
まずは基本情報の入力です。あなたの事業、事業主であるあなた自身の情報について入力後、青色申告・白色申告のいずれかを選択。提出方法も選択しましょう。
◯✕形式で医療費控除の金額もカンタンに計算
次に、確定申告書を作成する際に必要な情報を入力していきます。年度の取引の最終確認を行った後、◯✕形式で18個質問に答えていきます。 この質問は、確定申告準備のチェックリストも兼ねています。
1:「病気やケガで病院に行ったかどうか」について◯もしくは✕をチェック 2:適用する控除で「医療費控除」もしくは「セルフメディケーション税制」を選択 3:当年度1〜12月に支払った医療費について、画面の指示に沿って記入 4 :行の追加
STEP3: 完成!
まとめ
1年を通して、家族分も合計すると医療費はそれなりの金額になるものです。病院に行ったら領収書を缶や封筒のなかに保管し、年度末に集計するなど工夫して、医療費控除を活用しましょう。