ライト文芸だのキャラノベだの新文芸だの、いろんな呼び名が次々に出てきてわけわかんない、いったいぜんたいどーなってんのー!という声にお応えして、最近のラノベがどうなってるのか大雑把に解説しちゃうよというコーナーです。
まあ基本的に主観なので、補助線程度に受け止めて、あとは自分の目で確かめろ、というスタンスでお願いします。
Inkarnateっていうファンタジーみたいな地図がつくれるサイトを利用しました。だんだん楽しくなっちゃって、あれこれ国名っぽく書いたり、意味もなく船とかタコとか追加したりしてしまった。
ライトノベル
さて、「ライトノベル」の特徴といえば、それは「小説王国」と「オタク連邦」の交易中継点であることだと思うんですよね。
しばしば「ライトノベルは小説ではなく漫画の仲間だ」などと言われますが、それは半分正しく、半分間違っていて、ある視点から見たときライトノベルは間違いなく「小説王国」の一地方にすぎませんが、別の視点では漫画・アニメ・ゲームと並ぶ「オタク連邦」の一員でもあるのです。
という意味を込めて地図では「ライトノベル公国」などとしてみました。封臣でありながら独立国。ノルマンディー公国的な。
細かいところを解説していきましょう。
少年向けラノベ
ライトノベルの中心地域であり、「最狭義のライトノベル」の範囲と言っていいでしょう。レーベルとしては電撃文庫や角川スニーカー文庫、富士見ファンタジア文庫、MF文庫J、ファミ通文庫、小学館ガガガ文庫、講談社ラノベ文庫、集英社ダッシュエックス文庫、GA文庫、HJ文庫などがあります。
少女向けラノベ
こちらはちょっと複雑です。近年はアニメ化も少ないためかオタク側からは「少年向けラノベだけがラノベだと思ってた」と勘違いされることがあったり、あるいは小説側からは「あれは古くから『少女小説』と呼ばれているものであってラノベの一部ではない」などと言われてしまったりします。でもまあライトノベルです。レーベルとしては、集英社コバルト文庫、角川ビーンズ文庫、ビーズログ文庫などがあります。
新文芸
「新文芸」とは、カドカワが提唱した分類で、「ネット上でユーザーが生成したコンテンツを書籍化したもの」となります。要するに「小説家になろう」や「カクヨム」から書籍化された作品のことです。ついでに言うと、VOCALOID曲を小説化した「ボカロ小説」や、フリーゲームを小説化した「フリゲ小説」なども、実は新文芸に含まれます。
まあ読者のあいだでは全く知られていない呼称なのですが、書店ではそこそこ広まっているようなので、Web系の小説を探すときは「新文芸」という棚を探してみると良いかもしれません。絶対「ウェブ文芸」とか「ネット文芸」とかのほうが分かりやすいよなあ。
レーベルとしてはカドカワBOOKS、MFブックス、アース・スターノベル、GCノベルズ、TOブックス、レジェンドノベルスなどがあり、アルファポリスやエンターブレインから刊行されるノンレーベルの単行本もあります。「ブックス」「ノベル」「ノベルス」「ノベルズ」はどれかに統一してほしいですね。
新文芸は、その多くが四六判(文庫よりも大きめのサイズ)の単行本として、新文芸専門のレーベルから刊行されています。レーベルコンセプトとして「大人向け」を標榜することが多く、そのため後述の「ライト文芸」と混同ないし同一視されることもあるので注意が必要です(一時期、出版社の側から「ライト文芸」と名乗っていたという事情もある)。
ライト文芸
「一般向けのライトノベル」あるいは「ライトな一般文芸」。とりあえず「ライト文芸」「キャラ文芸」「キャラノベ」といった複数の呼称があり、おおむね同じ範囲を指しているものの、ときどき違う意味で使われたりするややこしいジャンルです。
レーベルとしてはメディアワークス文庫、富士見L文庫、集英社オレンジ文庫、講談社タイガなどがあり、あるいは新潮文庫nexや小学館キャラブン!のように一般向け文庫のなかのサブレーベルになっているものもあります。完全に一般向け文庫の範疇で発売されていても、それっぽい作品はライト文芸という括りに放り込まれたりします。講談社ノベルスやハヤカワ文庫JAや角川ホラー文庫あたりもライト文芸に入ったり入らなかったり。
私のようなラノベ読者からすれば「新文芸」も「ライト文芸」もライトノベルの一部なのですが、小説王国の住人たちのなかには「ラノベと一緒にするな」という人も多いので、とりあえず地図では色を変えて区別しています。ラノベ定義論のややこしいところですね。
児童文学
明確な定義はないようですが、ティーン未満に向けた小説=「児童書」、ティーンに向けた小説=「YA(ヤングアダルト)」とされることが多いのではないかと思います。「児童書」と「児童文学」は概ね同じ意味です。
ジャンル小説
ジャンル小説とは「ミステリ」や「SF」といった物語のジャンルによる小説の分類のことです。もちろん、ライトノベルにも一般文芸にも児童文学にも、ミステリやSFは存在しているわけで、本来であればその総体を「ジャンル小説としてのミステリ」「ジャンル小説としてのSF」として捉えるべきなのでしょうが、ここではもう少し狭い領域をイメージしています。
すなわち、ハヤカワ文庫や創元SF文庫/推理文庫、あるいは講談社ノベルスのように、そのジャンルに特化したレーベルがあり、そこに「SFファンダム」や「ミステリ論壇」といったファンコミュニティがくっついているような想定です。常連客が太い専門店みたいな感じでしょうか。
そのあたりの感覚にしたがって、今回の地図では「ジャンル小説」を島にしてみました。基本的には一般文芸の範囲に入りますが、ちょっと独立性が高くて、ちょっとライトノベルと親和性が高い、みたいなイメージです。
ライト文芸のところでもちらっと書きましたが、講談社ノベルスやハヤカワ文庫JAへは昔からラノベ作家が出稼ぎに行ってますし、作品によっては完全にライトノベルとして扱われていたりしますよね。そういう意味では、ライトノベルと非常に「近い」ところだと思います。
一般文芸
「一般文芸」ほど曖昧な言葉もなかなかありませんが、ラノベ読者としては「ラノベ以外の大人向け小説」くらいの漠然とした意味で便利に使わせてもらっています。とは言っても、ライト文芸の登場もあり、かつてないほどライトノベルと一般文芸の境界が曖昧になっていて、もはや区別する必要など無いのではないか、というところまで来ているようにも思えます。
「一般文芸」の意味で「純文学」という言葉を使う人がいますが、はっきり言うと間違いです。「純文学」は「大衆文学」と対置して使われる言葉で、大雑把に言えば、芸術性に重きを置いたものが純文学、娯楽性に重きを置いたものが大衆文学です。もちろん大衆文学と純文学の境界も曖昧なのですが(笑)
とりあえず、司馬遼太郎も東野圭吾も宮部みゆきも池井戸潤も大衆文学作家として扱われていますし、ライトノベルもまとめて大衆文学の括りに入ります。ちなみに直木賞は大衆文学、芥川賞は純文学の賞です。このあたりは意外に知る機会がなかったりしますが、覚えておくといろいろ捗ります。