しかし、足早にサークルを目指す参加者の誰も、財布を持っていない。その手に握られているのは、スマートフォンのみ。
この光景が「pixivMARKET」の特徴を端的に示していると言える。 イラストSNS「pixiv」を運営するピクシブ株式会社が主催する「pixivMARKET」は、すべてが電子決済で行われた“日本初のキャッシュレス同人誌即売会”だった。
6月10日、会場で行われ生配信されたライブペイント「pixiv ONE」も盛り上がり、Twitterではpixiv関連ワードが複数トレンド入りした。
史上初キャッシュレス即売会「pixiv PAY」
世界、特にアジア圏の新興国ではキャッシュレス社会が浸透しつつあることは度々報道されている通りだ。日本でも2016年に「Apple Pay」が導入されるなど徐々にキャッシュレス化は進行しつつあるが、世界的にはまだまだ遅れをとっている。
「pixivMARKET」は電子決済限定の同人即売会ということで、イラストレーターや漫画家らの間では注目を集めていた。
近づいていた台風の影響で朝から空模様が崩れていた6月10日、開場の正午12時前には、すでに池袋・サンシャインシティのイベントホール付近には人だかりができていた。
イベントスタッフ曰く、早朝5時頃にはすでに列整理は始まっていたそうだ。 開場全体の拍手で開場時刻が告げられると、各々、目当てのサークルへ足早に向かう。
今回、サークルでの取引のすべては電子決済アプリ「pixiv PAY」にて行われた。 ピクシブとしても初めての試みであったため、サークル参加も無料、一般参加の入場も無料ということで、計300サークル以上、来場者数は3000人を超える結果となった。
電子決済、即売会のメリットとデメリット
「pixiv PAY」は、アプリをインストールしクレジットカードなどを登録しておけば、会場の各ブースで購入したいものを伝えれば、あとは提示されたQRコードを読み取って支払いをするだけ。つまり、アプリ起動、QRコード読み取り、商品の受け取り、という流れで買い物が完了する。 2017年夏にリリースされた「pixiv PAY」を盛り上げる意味で、今回の開催に踏み切ったというピクシブ。
サークル参加者および一般参加者に話を聞いて回ったところ、様々な意見が出たので以下、参加者から挙げられた現時点でのメリットとデメリットをまとめている。
特に「価格設定の幅が広がる」という声は多く上がった。メリット:
売上管理がスムーズになる(現在庫数を登録する機能はない)
価格設定の幅が広がる
脱税対策になる
釣銭がいらない(釣銭間違いがなくなる)
財布を出し入れしなくて済む
売上をそのまま購入に使える会場の声
通常、即売会ではお互いの手間を考慮して500円や1000円といったキリのいい価格設定が好まれる傾向にある。
その際も、極力釣り銭が出ないようにぴったりの金額を用意しておくことが暗黙の了解になっているが、電子決済であれば双方その手間もなくなり、細かい金額での適正な値段設定が可能となる。
実際会場では、細かい価格設定をしているサークルもいくつか確認できた。
6/10池袋サンシャインpixiv MARKET販売リストです。今回は同人誌の頒布はありませんのご注意下さい。
— m3w/Gee (@m3w_gee) 2018年6月9日
また、イベント独自の決済方法のみでのお支払いとなっておりますのでイベント要項をご確認の上どうぞ宜しくお願い致します→https://t.co/DAgDzOGC3M
当日は三輪士郎本人も参加予定です。 pic.twitter.com/01Hc9bOsYT
一方で、そもそもサークル側も一般参加側も「pixiv PAY」を初めて使うという人が大半で、慣れの問題でもあるだろうが会場では小さなトラブルも起きていた。 筆者は12時の入場直後、主に壁サー(壁側に配置されている大手サークル)の列を見ていたが、そのいくつかは当初「現時点では現金決済の方が早い」と口にしていた。デメリット:
慣れもあるが、現時点では現金決済の方が早い
混雑時、他人が注文したQRコードを読み込むなどのトラブルが起きた
キャンセル処理に時間がかかる
決済手数料が上がれば、商品価格に反映される可能性がある会場の声
逆に、長蛇の列が形成されるわけではないサークルの場合、「釣銭を用意しなくていいのが楽でした」など多くが好意的な感想だった。
ブースでの配布終了後、ご自身もブースで売り子をされていたイラストレーター・redjuiceさんに聞いたところ、「(QRコードの)読み込みに数秒時間がかかったり、気になる点がなかったわけじゃないです。でも、これくらいの会場規模であれば問題なかったし、取り組みとしては先進的だと思います」と振り返る。 また、手数料問題については、アプリ責任者の重松裕三さんが「『pixiv PAY』単体での収益化は考えていない」と否定。現在も決済手数料のみで、現時点で手数料を上げる予定はないとした。
筆者自身も「pixiv PAY」を利用して気になったものを購入してみたが(この日、不運にもクレカが上限金を超えていたためその場で現金チャージした)、決済・商品受け渡しまで10秒もかからず。 「え、これで終わりですか?」とこちらが不安になって確認し直してしまうほど、あっけないものだった。
また、「コミックマーケット」などで大きな集客力を持つ人気サークルが複数参加していることを考えると、「pixivMARKET」では会場の入場導線が一つしかなかったため、開場時の混乱も予想された。 しかし、蓋を開けてみると大きなトラブルもなく、課題は残しながらもキャッシュレスと即売会との可能性を感じさせるものとなった。
「pixiv PAY」の今後の展望
ほかにも「pixiv PAY」には、電子決済だけではなく、サークルから購入者にメッセージを送れる機能なども用意されている。「次回のお品書きを直接ご連絡したり、Twitterやpixiv上のやりとり以上にサークルと一般参加者とのより密な関係をつくれる可能性がある」(重松さん)
また、今後の機能としては、現時点では追加予定はないものの、成人向け商品の販売時の年齢認証や、列をなくすために事前決済ができる取り置き機能、(購入者のトレースができるため)転売対策への活用の可能性にも言及。 重松さんは開催を振り返りつつ、今後の予定については「来場者数も想定もしくはそれ以上で、好意的な声もいただきました。イベントは成功だったと考えています。アンケートもとっているので、反響を踏まえて次回については考えていきたい」とした。
「pixiv ONE」も大盛況
キャッシュレスとは直接関係がないが、会場で行われ、生配信もされたライブペイント「pixiv ONE」も盛況だった。 アニメ『Re:CREATORS』特典イラストはじめ、書籍やゲームのキャラクターデザインなどを手がける望月けいさん、そしてアニメ『キズナイーバー』キャラクターデザインはじめ様々な作品に参加するイラストレーター・アニメーターの米山舞さん。2人が1時間でそれぞれ1枚を描き上げるライブペイントに挑戦するという企画だ。
「pixivMARKET」会場内で同時開催されたイベントということで、当日、解説席には豪華な飛び入りゲストが続々。
前回参加者の爽々さんをはじめ、飛び入りでredjuiceさん、絶叫さん、佃煮のりおさん、岸田メルさんといった漫画家やイラストレーターが入れ替わり立ち替わり出演した。 合間には、refeiaさんによる塗りやレイヤーなどの専門的な解説を挟み、お絵かきをたしなむ徳井さんも「めっちゃ勉強になる!」と感嘆する場面もしばしば。
あっと驚く構図の秘密が配信半ばで明らかになった米山舞さんの独創的な発想、キャラを前面に押し出しながら小物や色味でクールにまとめた望月けいさんの技法。 それぞれが自分の持ち味を発揮しながら、わずか1時間で1枚のイラストを仕上げる手腕には、会場からも大きな拍手が送られた。
【#pixivMARKET】60分間のドローイング配信イベント#pixivone 、終了しました♪60分間でこんな素敵な作品が完成しました!会場で生で見ていただいた方、ご視聴いただいた方、ありがとうございました😘後日アーカイブをyoutubeのpixivチャンネルにアップさせていただきますので楽しみにお待ちください☆ pic.twitter.com/GMq3Oi7eXH
— pixiv@pixivMARKETお疲れ様でした! (@pixiv) 2018年6月10日
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2件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:2072)
問題はQR決済の専用アプリが乱立している、会計時にアプリ起動の手間が必要(コミケの壁サークルでは一般参加者を捌けない)、回線が混むとQRコードそのものが開かない致命的欠点がある。
ならアプリ起動が不要で、タッチのみで瞬時に支払い完了可能なSuica、地方から参加されている方のためにもnanacoをそのまま導入すれば良い。
《参考》
スマホ決済、利用者わずか17% MMD研が調査 - 産経ニュース https://www.sankei.com/economy/news/180613/ecn1806130038-n1.html
以上の理由より個人的にはQR決済はどこのアプリか関係なく利用したくない。
CKS
結局行けなかった〜 普段電子決済に結構頼ってて、便利だと思ってるので応援したい。払った時音とか鳴るのかな