カーデザイナーは自動車に関連する職種で、時代のニーズに合ったカーデザインを生み出す役割を担っています。未経験から目指すには、どのようなルートをたどればよいのでしょうか?カーデザイナーの仕事内容や必要なスキル、キャリアパスを解説します。
カーデザイナーとは?
カーデザイナーは、自動車の外装や内装のデザインを手掛ける専門職です。機能性や安全性も考慮する必要があり、デザインスキルと技術的知識の両方が求められます。具体的な仕事内容と働き方をチェックしましょう。
自動車のデザインを手掛ける職種
カーデザイナーは、「インダストリアルデザイナー」という職種に分類されます。主な役割は自動車をデザインすることで、外装を手掛ける「エクステリアデザイナー」と、内装を手掛ける「インテリアデザイナー」に大別されます。
自動車はさまざまな部品から構成された特殊な製品なので、デザインを手掛ける上では、機能性・安全性・製造コストなども考慮しなければなりません。美的センスやデザインスキルはもちろん、自動車工学や人間工学の知識が求められます。
チームでの作業が基本
企画段階から試作車の完成まで、長期にわたるプロジェクトに携わり、他部門と密接に連携しながら作業を進めるのが一般的です。所属先にもよりますが、以下のような専門分野に分かれて作業するケースが多いでしょう。
- エクステリア(外装をデザインする)
- インテリア(外装をデザインする)
- クレイモデリング(粘土で模型を作る)
- デジタルモデリング(スケッチを3D化する)
プロジェクトの初期段階では、コンセプト作りのミーティングを行い、販売動向や流行を考慮しながらデザイン提案をします。
その後、チーム全体でデザインの詳細を詰め、問題点の発見や修正を繰り返して、完成度を高めていく流れです。プロジェクト全体を通じて、柔軟な発想力とチームワークが求められるでしょう。
仕事の流れ
カーデザイナーの仕事はデザインだけにとどまりません。コンセプトの立案からスタートし、試作車を作り上げるところまでが仕事です。
- ミーティングでコンセプトを決める
- デザインを具体化する
- クレイモデルの制作と部品の設計をする
- 試作車を完成させる
コンセプトを基にビジョンを描き出した後、スケッチやデジタルツールを駆使してデザインを具体化し、生産部門のエンジニアと協議を繰り返し、美しさと機能性のバランスを調整していきます。
工業用の粘土でクレイモデルを制作した後は、CADソフトで部品の設計をする流れです。製作では立体的な検証をし、細部を磨き上げていきます。最終的に量産モデルが完成するまでには、数年の歳月を要するのが通常です。
カーデザイナーの働き方
さまざまな働き方ができますが、自動車メーカーや大手デザイン事務所に勤務するのが一般的です。ここでは、カーデザイナーの主な勤務先や雇用形態、収入の目安を解説します。
主な勤務先と雇用形態
カーデザイナーの主な勤務先は、自動車メーカーです。企画から量産化に至るまで一貫して関わり、チームで協力しながら新車のデザインを完成させていきます。
勤務先にもよりますが、正社員として長期的なプロジェクトに携わるケースが多いでしょう。インダストリアルデザイン事務所でも、自動車のデザインを手掛けるチャンスがあります。
自動車はもとより、さまざまな工業製品を取り扱うため、幅広いスキルが身に付きます。就職・転職時は、カーデザイナーを目指していることをアピールしましょう。
カーデザイナーの収入の目安
カーデザイナーの収入は、勤務先や経験によって大きく異なります。「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、「デザイナー」の収入は、約509万3,000円でした(※)。
ただし、カーデザイナー以外のデザイナーを含めた金額であるため、実際の収入とは開きが生じている可能性があります。
大企業に所属するカーデザイナーやフリーランスは、さらに高い年収を得られるチャンスがあります。能力やポジションによっては、年収1,000万円も夢ではありません。
※企業規模10人以上
※「(きまって支給する現金給与額×12カ月)+年間賞与その他特別給与額」で算出
カーデザイナーに必要なスキルと資質
カーデザイナーには、創造性豊かなデザイン力だけでなく、多岐にわたるスキルと資質が求められます。これらの要素を継続して磨くことで、魅力的な車両デザインを生み出す道が開かれるでしょう。
デザインスキルと技術的知識
カーデザイナーは、美的センスと造形力を基礎に、デッサン・スケッチ・3Dモデリングなどを駆使して、自動車をデザインしていきます。高度なデザインスキルを備えた人でなければ、デザイナーのポジションは務まらないでしょう。
美術系の大学や専門学校では、実践的なカリキュラムを通じてこれらの知識とスキルを学べます。 また、自動車の機能性や安全性も考慮しなければならないため、人間工学や流体力学に関する専門知識も必要です。
加えて自動車の構造・機能・材質・生産プロセスに関する深い理解も求められます。
コミュニケーション能力
デザイナーというと、自分の世界に没頭して黙々と作業するイメージがありますが、自動車が完成するまでには、技術部門や営業部門といったさまざまな部門のメンバーと関わります。
大手の自動車メーカーであれば、国外にも支社や工場があるため、海外のカーデザイナーと意見交換をする機会も多いでしょう。市場調査やデザイン後の確認作業など、デスクワーク以外の業務も多く、高いコミュニケーション能力と協調性が求められます。
マーケティング力と分析力
自動車のデザインをする上では、市場のニーズや顧客の嗜好を深く理解しなければなりません。開発には数年を要するため、長期的な市場動向を見据える必要があります。
カーデザイナーには、優れたマーケティング力と分析力が求められるでしょう。 また新車のコンセプト会議では、流行のデザインや価格に見合う素材を提案する機会があります。
ターゲットユーザーの具体的なイメージを描き、彼らの価値観に合致したデザインを生み出せるかどうかが試されます。
カーデザイナーになるまでのステップ
どの企業においても、全くの素人がカーデザインを手掛けることはありません。未経験者は、学校で基本的なスキルを身に付けるところからスタートしましょう。カーデザイナーになるまでの一般的なルートを3つのステップで解説します。
学校で基本的なスキルを身に付ける
カーデザイナーを目指す近道は、デザイン系や工業系の大学・専門学校に進学することです。デザインの基礎力を磨くとともに、自動車業界特有の知識や技術を習得しましょう。
多くの学校では、3DCGソフトの操作やスケッチ技術など、実践的なスキルを習得できるカリキュラムを用意しています。「カーデザイン学科」や「カーデザイン専攻」のある学校であれば、自動車メーカーとの連携プログラムを通じて、業界の最新動向を学べます。
学校を選ぶ際は、卒業生の進路や講師のプロフィール、インターンシップの有無などをチェックしましょう。
カーデザイナーに役立つ資格を取得する
カーデザイナーを目指す上で、特定の資格は必須ではありませんが、取得しておくと有利な資格があります。
例えば「プロダクトデザイン検定」は、商品開発に必要なデザイン知識を評価し、「色彩検定」や「カラーデザイン検定」は、色に関する技能を証明します。「3次元CAD利用技術者試験」はCADスキルを示す資格として有用です。
「Illustrator・Photoshopクリエイター能力認定試験」も、デザインツールの習熟度を示すのに役立ちます。
これらの資格は、専門知識やスキルを客観的に証明し、就職活動で自己アピールする際の強みとなるでしょう。資格取得を通じて学んだ知識は、実務でも活かせる貴重な財産となるはずです。
ポートフォリオを作成して就職に臨む
カーデザイナーを目指す人は、学校を卒業した後にポートフォリオを作成して、就職・転職に臨むのが通常です。
ポートフォリオは、自分の「作品集」であり、履歴書・職務経歴書と並んで重要度の高いものです。自己PRと実践力をアピールすることで、カーデザイナーとしての夢に一歩近づけます。
ポイントは、スケッチやレンダリング、3Dモデリングなどの作品を含め、アイデアの展開プロセスを明確に示すことです。自動車の構造や機能、最新トレンドへの理解も評価の対象となるため、幅広い知識を反映させましょう。
カーデザイナーのキャリアパス
カーデザイナーになった後のキャリアパスには、大きく分けて2つの方向性があります。1つは企業内でスキルを磨きながら昇進していく道、もう1つは独立してフリーランスとして活躍する道です。それぞれに魅力があり、個人の志向や目標によって選択が分かれます。
企業内で昇進する
カーデザイナーとして企業内でキャリアを積むと、デザイン全体を統括するディレクターやプロデューサーへの昇進の道が開けます。プロジェクト管理能力やリーダーシップといったより高い能力が求められ、責任も重くなりますが、収入アップがかなうでしょう。
大手企業でデザイン全体を統括するポジションに就けば、年収1,000万円近くになることも珍しくありません。企業内でのキャリアアップは、安定性と高収入を両立できる魅力的な選択肢といえるでしょう。
フリーランスのデザイナーを目指す
企業でスキルを磨いた後に、フリーランスのデザイナーとして独立する人もいます。仕事の内容や量を自分の裁量で決められるため、人によっては高収入が期待できます。柔軟なスケジュールで仕事ができるのもメリットでしょう。
ただし、フリーランスとして成功するには、優れたデザインスキルだけでなく、自己管理能力も必要です。自ら顧客開拓をしなければならないため、営業力が乏しい人は安定収入が得られないかもしれません。
最新のデザインツールやトレンドに常にアンテナを張り、自己研さんを続けることが求められます。ポートフォリオの充実や人脈作りにも力を入れましょう。
カーデザイナーは夢が詰まった仕事
カーデザイナーには、創造性と高い技術的スキルが求められます。一人前になるまでの道のりは長いですが、自分がイメージした車が世に送り出される喜びはひとしおでしょう。優れた自動車をデザインできれば、世界的に認められるチャンスがあります。
未経験からカーデザイナーを目指す人は、大学や専門学校で必要な知識・スキルを身に付けるところからスタートするのが一般的です。仕事・求人情報一括検索サイト「スタンバイ」で、カーデザイナーの仕事内容や待遇をチェックし、働くイメージを膨らませましょう。