焦点:ドル高騰は米企業利益に「大きな逆風」、多国籍企業ほど打撃
[ニューヨーク 5日 ロイター] - ドルの上昇が突然止まらなくなったことで、米企業の利益には三重の脅威が生まれつつある。つまり海外事業のコストを押し上げ、海外売上高を圧迫するとともに、恐らく最も懸念されるのが、今後の海外需要の弱さにつながることだろう。
主要6通貨に対するドル指数は6月以降で約8%も上昇。米経済の土台が欧州など他の地域よりもずっとしっかりしている以上、こうしたドル高の勢いがすぐに消えると予想するアナリストは少ない。
S&P総合500種<.SPX>の構成企業にとっては、ドル高騰が大きな逆風になる。なぜなら非常に多くの銘柄は多国籍企業であり、全体としても海外市場の売上高比率が約半分を占めるからだ。
みずほ証券(ニューヨーク)のチーフ投資ストラテジスト、カーミン・グリゴリ氏は「海外事業の低調さを理由に業績が予想に届かない企業が出てくる。それが失望を生むだろう」と述べた。
グリゴリ氏によると、特に欧州市場は今後の米企業利益にとって重要な要素なので、欧州での不振は重大な意味を持つという。
さらに投資家やアナリストは、急速なドル高が第3・四半期の企業利益に及ぼす影響を計算し始めているものの、第4・四半期や来年に絡むリスクはまだほとんど織り込まれていない。
例えばトムソン・ロイターのデータでは、第3・四半期の増益率見通しは2カ月前の約11%から6.4%まで切り下がった。それとは対照的に第4・四半期の見通しは7月1日時点の12.0%が11.1%とわずかに下方修正されただけであり、来年の見通しに至っては11.5%から12.4%に上昇している。
ワンダリック・セキュリティーズのチーフ市場ストラテジスト、アート・ホーガン氏は、第4・四半期にドル高の影響を当てはめてみれば、S&P総合500種を構成する多国籍企業の相当数で業績見通しが下方修正されるとみている。
<フォードの警告>
みずほ証券のグリゴリ氏によると、海外売上高比率の高い米企業は、S&P総合500種全体や海外売上高比率がほぼゼロの企業に比べて、第3・四半期の増益率見通しの下振れが大きい。
同証券のデータでは、海外売上高比率が60%以上の企業の場合、7月31日から9月29日までに増益率見通しは1.5%ポイント下がった。この間、S&P総合500種全体は1.0%ポイント、海外売上高比率がほぼゼロの企業は0.4%ポイントの低下だった。
9月29日にはフォード・モーターがロシアや南米における損失拡大を理由に、2014年の税引き前利益見通しを下方修正した。これが来たるべき事態を暗示している可能性がある。
ウェドブッシュ・セキュリティーズの株式取引担当マネジングディレクター、マイケル・ジェームズ氏は「1つの企業の例を幅広く適用し過ぎてはならないとはいえ、フォードがもたらしたマイナスの心理はかなり劇的だと思う」と指摘した。
<ハイテクが最も打撃か>
今後2週間は、海外売上高比率の高いいくつかの米企業の決算が明らかになる。
海外売上高比率が約77%というファストフードチェーン運営のヤム・ブランズは7日に、同83%程度の半導体のインテルは14日にそれぞれ決算を発表する予定。
トムソン・ロイター・スターマインによると、過去30日間にアナリストはヤム・ブランズの1株当たり利益予想を平均で5.4%引き下げた。ただインテルの予想は0.2%上がっている。
セクター別で見ると、ハイテク企業の海外売上高比率は57%で最も高い。S&Pダウ・ジョーンズ指数のデータからすれば、第3・四半期はこのハイテク企業がドル高の悪影響を最も受けるかもしれない。
ハイテク株はこれまで、第3・四半期の利益見通しの修正を最も頻繁に行っている。ただトムソン・ロイターのデータによると、下方修正と上昇修正の割合は2.1対1と、S&P総合500種全体の3.3対1を下回っている。
(Caroline Valetkevitch記者)
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