富士フイルムが3年で2000億円強の株主還元、年500億円の自社株買いへ

[東京 11日 ロイター] - 富士フイルムホールディングス<4901.T>は11日、2014─2016年度の中期経営計画を公表し、3カ年で総額2000億円強の株主還元を実施することを明らかにした。営業利益は過去最高を目指すとともに、戦略的なM&A(合併・買収)で利益を上乗せすることで、配当と自社株買いを行う。
このうち、自社株買いは年間500億円を行う予定で3年で1500億円を計画。さらに、配当性向25%を目安に安定配当を実施すれば3年で800億円になる見通しという。
記者会見した古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)は「M&Aも活用して中長期に安定成長できるビジネスポートフォリオを構築し、株主還元を強化する」と述べた。
<ヘルスケアなど3分野を強化>
3カ年の目標は、2016年度に売上高2兆6300億円(13年度は2兆4400億円)、営業利益は過去最高益の2200億円(同1408億円)を目指す。
為替レートはドル100円、ユーロ135円で想定。計画する営業利益は、1円の円安に対し、ドルで10億円、ユーロで8億円の押し上げになるため、「3年間のドルの平均が110円なら100億円、115円なら150億円が加わる」(古森会長)計算だ。
中核事業として、医療機器と医薬品で構成するヘルスケア、液晶材料や電子材料で構成する高機能材料、傘下の富士ゼロックスによる事務機器ー―の3分野を強化する。一方で、コンパクトカメラが苦戦するデジタルカメラ事業は規模を縮小して収益性を改善する。
特にヘルスケア事業の売上高は、2016年度に4400億円(13年度は3820億円)を計画。医療機器では、超音波診断装置や内視鏡、医療用IT(情報技術)システムなどで拡大をねらっていく。医薬品は、新薬の開発費が先行するが、米ケイロン社(テキサス州)などバイオ医薬品受託製造事業を中心に売り上げ増を図る。
ヘルスケア分野は、戦略的M&Aを活用する方針。全社の3カ年のM&A投資は4000ー5000億円を計画。3カ年で、営業利益の増加と株主還元を実施し、株主資本利益率(ROE)は、2013年度の4.2%から、2016年度には7%を目指す。
子会社の富山化学工業が開発した抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠」については、フランスとギニアの両政府が11月中旬から、エボラ熱の治療薬としての承認に向けて臨床試験に入る。承認されれば世界的な需要が見込まれるが、今回の中期経営計画には織り込んでいない。

村井令二 編集:内田慎一

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