甘口ピーナッツ

多めの写真やTwitterに書ききれないことを書く

私的GOTYs 50本超一挙詰め合わせSP 2004~2024年版

はじめに 簡単で大まかな概要

 こんにちは、ジミーです。これは、私が2024年までに遊んで「メチャクチャ面白い!」「感動した!」「こりゃあGOTY(Game of the Year)間違いなし!」と個人的に太鼓判を押したゲームを、何とかかんとか厳選して一本一本敬意と愛着を持って詰め合わせた記事です。書いている現時点が大体年末年始なので、福袋兼年賀状としてご覧ください。もちろん、いつ読んでも大丈夫なようにもなっているはずです。タイトル数にして、

56本

 あります。いま指折り数えたので、合っていると思います。とても頑張りました。頑張った極個人的な理由は次項に書いてあります。

 これを読んだ皆さんのゲーム人生と重ね合わせて、ああこれは面白かったよなと述懐する端緒になったり、セール等に合わせた新しいゲーム探しのきっかけになったら幸いだと思います。どうぞよろしくお願いします。また、これが好きならこいつも好きだろ?というものが思い当たりましたら、TwitterのリプライやDMに送っていただけると、とても幸いです。旧知の方でも未知の人でも大歓迎です。では、よろしくお願いします。

Twitterとsteamのアカウント情報

 基本的に1人用ゲームをわんさかとやっているので、記事の内容や雰囲気やゲーム遍歴を拝んで、良いね!と思われたら、よかったらフォローやフレンド登録してくださると助かります。

Twitterアカウントは @jimmy_9609

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 です。どうぞよろしくお願いします。

はじめに 長くて固い概要、あるいはこれを書かなければならなかった理由

 思えば、長らく「ゲーム」というものに触れ続けてきた人生である。

私の「コントローラー」の原点は、この金ピカ64コン。

 幼少期には姉のお下がりの真っ赤なゲームボーイポケットを手に入れて、小躍りしながら起動して六つの金貨を探す旅に出立し、駄々と交渉の末に買い与えられただろうニンテンドー64はなぜか鈍い金ピカで、近所の駄菓子屋で吊るしの中古ソフトを選んでは悪友らと端子吹き吹きパーティに興じていた。

 中高生になってもこのゲーム習慣は概ね変わらず、PSPを手に入れては学校近くの公民館でちょっと一狩り緊クエを回し、あるいはアセンブルの強弱談義をしつつ千マシやら指ガトやらを選び取っては軽フロート脚で逃げ回ったりと、このシャカシャカ鳴る変な箱の中で繰り広げられる小世界に魅了されっ放しの人生を送ってきた。

PSP-3000、震えあがるほどの名機だった。青春の7割を捧げた。

 他にも思い出を探せば枚挙にいとまがない。ジャイロ機能を活かした無重力で空に落ちていくシネマティックアクション、クリスタルを巡る時間を越えた物語では別れの無情に泣き腫らし、デーモンを殺しソウルを獲る物語の果てに立つ篝火に触れた謎の感慨は今もこの胸を焦がしている。大作とされるソフトを遊んだ数は決して多くないしレトロな領域には通じていないが、一個人として大いに遊んだぞ、好きだぞ、という自負が確かにある。

 そして時が経ち、今は「steam」なるゲーム配信サービスで古今東西値段交々のゲームを買い倒している。これは禿頭にバルブを差した異常者集団が運営している摩訶不思議な代物であり、原理は不明だが私のような末端ゲーマーでもこうして記事を書けるくらいには数多くのゲームを遊べる素晴らしいサービスである。製作者の皆さま共々、本当にありがたい。神。

この狂ったバルブ禿頭を拝むために友人宅に通った記憶がある。柿沼くん、元気だろうか。

 そんな私も年を重ね、応じて遊んだタイトルの数も増えてきて、その感想も織々と心中に溜まっていった。折に触れてはTwitter(現X)で感想を書くものの、

「まとまった感想を書きたい

「面白かったことを誰かに伝えたい

この感覚を保存して誰かの観覧に耐え得る状態にしたい」

そんな欲求が日に日に募っていった。 じゃあさっさと書けばよかろう物を、しかし私の内心は一筋縄には行かず、それどころか指を動かすにつれて、

「なんであのゲームはレビューしないのか?」

「これの感想を書くならあれにも触れないといけない」

「もっと体系的に語った方が良いのは分かっているだろう?」

「どうして散発的に書くのか、もっと良いものを書きなさいよ」

「幼少期のはともかく辿れる範囲のソフトはキッチリやった方が良いですよメガネクイッ

 などと、五月蠅煩い声が反響して心を抓むのである。正直言ってカスであり、口だけ番長、眼高手低も甚だしい。なのでこの内野の有象無象をまとめて粉砕するべく、この記事を書くのである。すなわち、

 steamのゲームライブラリで自分の琴線に触れたタイトルをジャンルごとに列挙し、それぞれについて考えたことや付随情報を列挙して誰かが読める状態にしていく。これをもって過去の自分の怠慢と怠惰を赦し、来年以降の自身の自由かつ自在なレビューを可能にする。

 という寸法である。詰まるところ正しく自己満足な代物なのであるが、もとよりこういうレビューな文章は概ねそういう性質を帯びるものであるし、先述の通り他人の観覧指摘に耐える内容に仕上げることが内心を宥める条件なので、これを読んでくださる諸兄にもきっと満足していただけることと信じている。

 自分語りはここまでにして、本題に入っていく。

■ここからゲームレビュー■

アクション/メトロイドヴァニア

 飛んだり跳ねたりしてキャラが動くのが、やはりプリミティブに面白い。慣性制御やマップの把握を通して世界を踏破していき、その上で待ち受ける敵やボスを打倒していく。アクションとはそういう根源的な欲求を満たしてくれるものだと思い、そういったゲームを並べている。

よく動く王道アクションゲーム

 中でもアクション性、コントローラやキーボードを通してキャラを操作してダンジョンをクリアする喜びに特化したゲームを、多く遊んできた。

洞窟物語(Cave Story+)

 正直この項はこのタイトル1本で良いのでは?と思わされるくらいのビッグタイトル。2004年にフリーゲームとして公開されてからこっち、多くの移植とリメイクを重ねてなお面白い名作。何しろ雑誌『タイム』の「All-TIME 100 Video Games(歴史上最も偉大な100のビデオゲーム)」に選ばれるほどなので、世界が認めたと言っても過言ではないだろう。

 サイドビューで繰り広げられる「島」を舞台にした広大な探検、自作音源が奏でる8bit音楽群をバックにしつつステージ内を飛び回り、時には抒情的なドット絵美術に足を止め、時にはコミカルなキャラの掛け合いに笑みをこぼし、時には荒々しい弾幕を搔い潜ってチャージビームをお見舞いする。作品としての緩急が鮮やかで、ゲームとして大事な要素が詰まった大名作。いつ遊んだって面白い。

ケロブラスター

 そんな超絶大名作を作り上げた開発室Pixelが送り出してきた次回作。同じくサイドビューでテンポはゆったりめ、柔らかなドット絵雰囲気の中で会社員カエルが銃を携え古今東西のトラブルをシューティングしていくお話。登場キャラクターが会社の中でもちもちワイワイやりながら、想像よりシビアな世界の危機に立ち向かっていく姿がどこかシュールで中毒性が高い。

 何と言っても難易度調整が絶妙。各ステージ各場面ごとに意図をビンッビンに感じるし、ギリッギリいまの手札とスキルでクリアできるか!?というヒリつき感が毎ステージあったことを未だに覚えているし、その分クリアできた時のカタルシスは大変に良く、その快感のままに次のステージに転送されていく流れには重厚な様式美すら感じた。おまけにストーリー追加系周回要素もあっててんこ盛り!アクションゲームの入門に何やろう?という方にはぜひおすすめしたい一作

The Plucky Squire ~ジョットと不思議なカラクリ絵本~

 「むかしむかし ジョットという 勇ましき見習い騎士がいました」から始まる王道メタアクションゲーム。絵本の中の住人である主人公が、描線太やかな2D=絵本内とテクスチャ艶めく3D=子供机上を行き来しながら、悪い魔法使い(本当に悪い)を倒しに行くのが気持ち良い。同時期に『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』を並行して遊んでいて、今の子どもはこんな上質なパズルアクションからゲーム人生を始められるのか……!と勝手に感動していた。

 手応えのあるパズルを解いては進むあの楽しさに心から身を任せてコントローラーを握る感覚、とても素朴に楽しい。また詳しくは語れないけど、ゲーム中=絵本内に登場するキャラクターたちの役割がだいぶ絶妙で、特にラストシーンに至る一幕で彼が存在する意味に気付いて思わず膝を打った記憶がある。作中に直接は登場しない、絵本の持ち主である「子ども」の存在を常に中心に置いている作劇もまた見事。自分にもし被保護者を幼少から育てる栄誉が巡ってきたら、彼のゲーム体験の入り口にしたい作品の一つ。

CrossCode

 こ~れとんでもない名作です。MMOをベースに敷いた見下ろしアクションゲーム。人々の依頼を聞きつつドット絵で描かれた世界を旅したり仲間と協同して家を建てたりして遊びつくすんだけど、とにかく全体的に魅力的で愛着が湧くように出来ている。。細部まで作り込まれた不思議なくらいこの世界のことが好きになるし、もっと先に進みたくなるし、じゃあ先に進みたく思っている主人公は誰なのか?この世界はそもそも何なのか?という広い問いに自然と行きつくのが本当に鮮やか。

 実は太古の昔に遊んだ記憶しかないし何なら最終盤を切り拓いたのを最後にクリアした記憶がないけど、それでも「面白かった」という感覚は確かに残っているし、そういう記憶に焼き付くという意味でも正しく名作なんだろうと思う。もうだいぶ感覚が薄れてきているし、積みゲーを遊び倒したらまたクロスワールドに遊びに行っても良いのかも知れない。なぜならとても面白かったので……。

Horizon Zero Dawn

 泣く子も黙る超絶大名作アクションゲーム。ポストアポカリプス世界を生き残った人類が、なぜか人間を絶対に許さない機械獣たちに弓やら爆弾やらで対抗して狩り合っていて、そこに選ばれた子である主人公が現れて世界の真実と自分の母を探して放浪する、という筋書き。リアリティが異常なまでに秀逸で、キャラの服装からアーカイブ散らばる地形から機械獣の生態系まで、細部まで作り込まれた文明崩壊後の世界が遠大に続いていてもう完全にオープンワールドの金字塔。

 アクション部分もだいぶ練り込まれている。弓で弱点狙って精密射撃をしてもよし、爆弾で攪乱して殴りかかってもよし、スキルツリーを伸ばしながら野良で組み合って戦い方を覚えて、更に強化を積んで山の向こうに行こう、みたいなステップを自然と踏めるように出来ている。当然機械獣も群れを成したり身の丈ビル大だったりと一筋縄ではいかず、また周囲を取り巻く人間たちも思惑せめぎ合い、総じて重厚なゲーム体験を構成している。ラストシーンの優しさが一等好き、あの読後感は中々味わえない

DAEMON X MACHINA

 おれたちが大好きなハイスピードメカアクションにハクスラ要素と掴み投げを足して3で割らなかったような、凄まじいゲーム。特にかの有名な『アーマードコア4』『マクロスプラス』『交響詩篇エウレカセブン』のメカデザインを手がけた河森正治御大によるパーツ群を自由自在に組み合わせて自分だけの最強ロボを作って火星の空を飛べる部分が、もう最高。不快感が全くない浮遊感と操作性に息詰まる鍔迫り合いとライフの削り合いが求めたものそのもの。本当に最高。

 登場キャラクターたちもたいへん魅力的。正義を貫く騎士道マンから倫理観と言葉の区切り方が決定的におかしい偏屈野郎まで多種多様のキャラクター取り揃えていて、しかも共闘したり敵対したりがめまぐるしくってとても愉快だった。アクションも探索や雑魚撃破やの雑用から「謎の機体が単騎で現れたから撃破しろ」的なきな臭いミッションまで多種多様で、何度遊んでも楽しいソフト。でも隕石は勘弁な!

Project Nimbus: CODE MIRAI/Complete Edition

 途中まである量産機駆るキャラクター操作を転々としつつ世界観を把握していく過程で、一般兵が乗る機体のモッサリした視点を体感させてからの、ワンオフ主人公機の超絶大出力圧倒的性能を体感させるのはもはや何らかのポルノ。癖のある操作性すら機体に慣熟し達成する喜びに昇華されてて、気持ちよさ全振りロボットアクション。あり得ない加速で敵の可変機をブッちぎり、高出力ブレードで敵艦艦橋を両断して、ついでに人工衛星を押し返したりしながら世界を救おう。

 良い意味で平成セカイ系ボーイミーツガール全開のキャラ設定に真っ白でビット兵器搭載の主人公機、赤いライバル機を駆るのはツンデレロシア少女(cv.小清水亜美)と渋いおっさん(cv.藤原啓治)で主人公陣営との掛け合いも絶妙と、ロボットアクションに求めていた要素の一極点を丁寧に仕上げたような素晴らしい作品になっている。いやもうマジで次世代型同士で踊るようにミサを打ち合いブレで切り結ぶ感覚は唯一性があまりに強いので、ぜひ遊ぼう。

Sifu

 青年が勝ち得た異能を駆使して父の仇を討つ流麗カンフーアクション。退廃や先鋭な中華美術を背景にあらん限りの功夫で敵を殴り倒し薙ぎ払い、命絶えるにつれて年を重ねて更に技に磨きを掛けて街の奥深くに挑んでいく。ローグライク性と作品の根幹設定をリンクさせた点が実に見事であり、またプレイヤーも更に一手入れるための立ち回りや技の組み合わせを見出して主人公の成長を追体験でき、アクションゲームならではの望外の楽しさを併せ持っている。

 最初はたどたどしく拳を振るうだけだったのが、二周三周するにつれ流麗な拳法を繰り出せるようになる体験がたいへん気持ちが良く、それを彩る舞台美術と魅力的なボスたちがまた印象深い。余談だが、日頃SNSで面白ゲームと映画を激押ししているジェット・リョー老師の激押しツイート群を見てこのゲームの購入と『葉問(イップ・マン)』シリーズの一気見を敢行して薫陶を受けたという経緯があり、この場を借りて勝手に御礼申し上げたい。カンフー映画成分、とても健康に良く面白いです。

祇(くにつがみ):Path of the Goddess

 んも~大好きなゲーム!跋扈する妖怪を払い乱れた山を鎮めるために地所を巡る巫女様と、そのお供を忠実にこなす剣士の流離譚。信仰ある山の民に力を与えてマップの各所に配置、剣士と一緒に妖怪と戦わせることで鳥居まで進む巫女を護る形式なのでアクションストラテジーに近い。多種多様なジョブとアクションを切り替えながらどうやったら護れるか?と頭を捻るのが楽しい。

 全ての構成要素が魅力的。特定の時代に依拠せず総体として「日本」を思わせる景勝や意匠、護らねばと自発的に思わせる嫋やかな巫女に民草、襲い来る妖怪たちは一癖も二癖もあるデザインをしており、これら全てを伝説のゲーム『深世海』を手掛けたCAPCOM最強チームが細部に神を宿すような作り込みでモデルとモーションと楽曲を詰め込んでるんだから、そりゃあもう面白いに違いない。買いですよ、買い。

メトロイドヴァニアの極み

 任天堂が生み出したスペースアクションの名作『メトロイド』とコナミが送り出した電気ホラーアクション『悪魔城ドラキュラ(英題: Castlevania)』、この二つに端を発するサイドビューの探索アクションを総じてメトロイドヴァニアと呼び表す。箱のようなステージで延々と接続されたマップ構造や、過去に通った部屋を新装備で壊して別の道を切り拓いたりと、サブジャンルとして比較的特徴が強く、馴染み深かったり好んで遊ぶ人も多いに違いない。私はメチャ馴染みがあるので、たくさん遊んでいる。

Momodora: 月影のエンドロール

 steamで遊べるメトロイドヴァニアと言ったら恐らく『Momodora』は外すことのできないタイトル群だ。中でも『月影のエンドロール』はシリーズの集大成を冠するにふさわしい仕上がりになっている。斬撃と弓射で敵を翻弄し、ローリングとダッシュで距離を詰め、あとは戦いながら動きを覚えて打倒していく質実剛健なアクション性を備えている。ソウルライクでシビアで苛烈なボスの攻撃を掻い潜った浄化の一撃で斃した時の感慨はひとしおだ。

 楽曲もストーリーも折り紙付き。剣と魔法と巫女の使命と神々の思惑が複雑に絡み合い、そして要所に挟まれる身の丈10m巨大女性。今作から始めても全ったくプレイやストーリー把握に影響は無いし、サクッと始めてしまうことができる。それはそれとして前作に当るゴシックテイストが増した『Momodora: Reverie Under The Moonlight』と姉妹作で巫女騎士成分が強い『ミノリア』もどうぞよろしく、これもとっても面白いんだ。

Axiom Verge

 そして何故か語られることは少ないけど間違いなく大名作な一本がこっち。ステージ構成や雰囲気はメトロイドの、舞台美術やキャラクター群の意匠はギーガーの影響を多大に受けつつ独自のSF世界観とブッ飛んだアクション性を混ぜ込んだ異色作。プレイ体験自体はメトロイドライクのはずなのに、異空間の中を延々と彷徨いながら壁を砕いたりすり抜けたり武器を切り替えたり敵を変異させたり肉をブチ撒いたりしながら進むもんだから、もう気を確かに持ちながら遊ぶだけで精いっぱい。でもそれが段々と癖になっていく。

 この面白さの根源は未知の巨大さにあると思っている。オペレーターさんの巨大女性頭部(タイトルバナーの方。可憐だ)に対して探求する主人公はちっぽけで、襲い来る敵も空間も移動ユニットでさえあまりに大きく、しかもこちらの解釈を徹底的に拒んでくる。圧倒的な機械的異空間の中で必死に主人公が生きようと足掻く、そんな途上に道中の諸々の情報がイチイチ開示されるはずはなく、だからこそプレイヤーの知的好奇心が絶え間なく刺激される。そういう意味で真に探索アクションをやっているんだと思う。驚くべきこと(?)に続編も出ているので、ぜひこっちも買おう。

Transiruby

 閉鎖空間の中で少しずつ出来ることを確かめながら、マップを踏破してボスと対峙し撃破し新しいスキルを獲得して次のステージへの扉を開く、というメトロイドヴァニアに必要な要素全てを超絶高精度に搭載したタイトルがこちら。ドット絵はかなり大きめの描画で統一され、楽曲も古き良き8bitの風情を存分に出しており、遊んでいて懐かしくも新しい感じがする一作。

 特徴的なのが、作者様のTwitterを拝むとわかる通りエゲツない精度でマップが構成されている点。これはありがたいと知覚できるユーザビリティ溢れる要素から、言われるまで気付かなかった微細な違和感の刺抜きまで、さまざまな仕掛けと配慮が凝らされていて、プレイヤーがゲームを楽しむ素養を限界一杯まで引き出そうとしてくれるのがわかる。スマホゲームを出されているころから大好きな方なので、ぜひ次回作も楽しみにしたい。

両手いっぱいに芋の花を

 基本軸には『ウィザードリィ』めいた3DダンジョンRPGを据えてあるが、それにしても精度が高い。レベルデザインが非常にしっかりしていて常にヒヤヒヤしつつ戦い抜けるようになっているし、でも突破口を思いつかないと一瞬で焦げ肉になるような、それでいて細やかなところまで手が込んでいてストレスフリーに戦いに身を投じることができる、そんな稀有なゲーム。

 前衛を立て、弓矢を射掛け、回復にも気を配りつつ氷魔法で足止め、でも次は相手の大技が来るから……などとウンウン唸りながらパーティの死力を振り絞って生きたり死んだりするのがまあ楽しいこと。毎日どうやって攻略しようかと悩みながら日々を過ごしていたし、ストーリーも確かリアリティラインが大変エグかったことをまざまざと覚えている。ダンジョンに潜りたくなったらこれを遊ぼう。

超絶新感覚系アクション

 もちろん飛んだり跳ねたり戦ったりの既知なアクションの組み合わせで煩悶するのも充分楽しいけれど、そうじゃない未知のアクション、眼が震え息が止まり脳が汗をかくような画期的なゲーム体験をしたい、あるいは操作すること自体が恐れ多くなるような震えあがるゲーム体験を味わいたい、そんなときだってあるはず。この項には自分がそう感じたゲームをまとめた。

Dandara: Trials of Fear Edition

 『DANDARA』である。もうこのタイトルだけ覚えて帰っていただいても構わないくらいに新感覚なゲームだった。ゲームを始めて大体10分、操作開始から5分の時点であ、ありえねえ!と30回くらい叫んでしまうくらいにはあり得ない、そんな馬鹿なとため息を付きたくなるような異常さを煮詰めたゲーム体験。詳しくはPVやトレイラーを観てほしいが、なんと壁や天井に自由に移動が可能なのだ。

 いや見ている分にはふ~ん何か早そう?という印象かも知れないが全ッくそんなことはない。画面の変数が増えれば増えるほど全てが変貌する、敵がいれば弾を避けて移動して移動先からの射角はああ移動する床がいや天井か画面が回転してあれ敵は上が下で、という具合にとにかく気が触れる勢いで加速するのだ。そしてもちろん乗りこなした感慨と全能感はあまりにも絶大で甘美なのは言うまでもない。異常空間の圧政を打破し、困難を乗り越えた先で黄巾たなびかせた救世主に君もなるのだ。『DANDARA』である。

Hyper Light Drifter

 台詞無し、説明無し、使命在り。幻想的なポストアポカリプス世界を無敵の剣戟と有限な弾丸と、そして何より無制限に加速するダッシュで切り抜けるアクションRPG。特にこのダッシュが魅力的で、押し寄せる敵を掻い潜り危ない橋を渡り切るには使いこなすのが必須なのに、あまりにも暴れ馬なのだ。人には過ぎた力を必死に制御しながら戦いに身を削る主人公とシンクロするようにのめりこみ、暴れるボスの後ろに瞬時に跳び込んで斬撃を浴びせまた飛び退る、そういった未体験の快感が待ち受けている。

 台詞は無いが設定は入念に作り込まれており、マップ内のアーカイブや痕跡でそれを伺い知ることが出来る。しかもそれらが超絶美麗なドット絵で描き込まれており、プレイヤーは雪山に半ば埋まった巨神兵や水没した残骸を目にしながら残光蠢く遺構内部に侵入をしていくことになる。しかもアポカリプティックサウンドを思わせるシンセサイザー楽曲が不安と寂寥を掻き立てるものだから孤独な使命感に拍車がかかる。唯一無二のハイスピード剣戟アクションの行く末をどうか見届けてほしい。続編もあるので。

SANABI

 SANABIはもうね、すごいんですよ。ベストゲーム。最愛の娘を田舎に置いて、軍に捧げたワイヤーアンカー内蔵義手を振るって機械兵をなぎ倒し、巨大企業に牛耳られた都市の内部を探索して全ての真実を明らかにする話。救出対象でありながらなし崩し的にオペレーターになった少女が可愛げあるドット絵モーションで場を和ませつつシビアなチャイナパンクに染まった街並みを縦横無尽に駆け巡るのがたまらなく気持ち良い。

 ワイヤーアクションは『海腹川背』よりもスッキリしていて加減速可能で爽快たっぷり。中空で瞬時に判断してワイヤーを伸ばして敵を打倒するけど、その行動の全てが予定調和であったような錯覚を覚える操作感の気持ちよさがあって、一流の軍人になったような気分で街を飛び回れる。何よりストーリーが代え難く良い。重要なことは何だったか、SANABIとは何か、その全貌を探しにワイヤーを辿ってついにそれを目にして思わず溜め息をつくあの感覚は、生涯忘れがたい。

九日ナインソール(NINE SOLS)

 『SANABI』が現代~近未来中国の雑居でネオンなパンク世界だとしたら『九日ナインソール』は古代中国、道教や崑崙や〝道〟思想が厳然と存在していた世界をベースとした技術進歩の果てを描いた、いわゆるタオパンクというものだ。どのSFにも描かれる不老不死という命題を道教の神仙思想に絡めて行き過ぎた科学技術で味付けした手腕が見事で、そのどん詰まりっぷりや人々の精いっぱいの足掻きも台詞の端々やアーカイブから拝めるのがまたにくい。

 プレイ感は先達たちが言う通りパリィ主体のソウルライクだが、速度やバランスの調整からか無理ゲー感は不思議なほど無い。段々と慣れた指先が跳躍と斬撃と貼札起爆を自然と行うようになる陶酔、息を吸うように剣戟を弾き、貯めたゲージを吐き出す快感がたまらない。科せられた使命と代えがたい宝物、それらを天秤に掛け、決断し、後悔に塗れながらもその道を違えずに進むキャラクター達。その理念同士を骨肉で以てぶつけ合い権利を奪い取り、その末に果たされた本願は歪みの無いものなのか。どうか見届けてほしい。

SHINOBI NON GRATA

 時は幕末の騒乱の中、幕府転覆を企てる忍軍に対抗する一人の忍者。飛び寄る雑魚を刀でバッサと切り捨てて、大鬼来たらば手裏剣、クサリガマ、そして必殺エレキテルで一掃する。そんな痛快爽快ハードコア忍者アクションゲームである。煽り文にもある通り『魂斗羅』風味が強いが、それにしても出来栄えが良い。極彩色の背景ドット美術にFC音源の美味しい部分を集めた楽曲群。操作感も抜群のレスポンスで、非の打ち所がない。

 いや2面やそこらであっさり挫折して、仕事の忙しさにかまけて積んでいるのが正直なところだが、それでも面白かったのだ。突っ込んでみては敵の猛攻に討ち死んでみて、死んでみては敵の出所を割り出して忍術の波状攻撃で完封して見たりすり抜けを敢行してみたりと、古き良きトライアンドエラーを見越したゲーム作りがされている。ニューレトロというか何というか、これを作った作者様がひたすら天晴れ。次回作のロボットゲームも大変おもしろそうなので、大いに期待している。

ペッパーグラインダー(Pepper Grinder)

 もう起動画面だけでも見ていって下さい、私はここだけで元を取ったと確信しました。一番下に録画データを貼ってあります。私は何を隠そう起動画面フェチで、起動からゲーム開始までのシークエンスが綺麗だったり思想が通ってたりすると大変気持ちよくなるサガなんですが、見てくださいよ。ロカビリーな曲流れる企業ロゴから一転、リコイルスターターの残響と共に勢い良く飛び込むハードロックなEDM、マシンガンのようなドラムロールと凶暴な電子音!もう最高なんですよ。ええ。わかりますか?

 打ち棄てられた少女がドリル片手に悪い奴らをブッ壊す!という竹を割ったストーリーがゲーム全体の勢いにマッチしている。先行き構わず削り続ける凶暴な螺旋運動を御しながら断崖や天空や街区を掘り進み、突き抜けた先に待ち受ける巨大ビートルのドテッ腹にドリルを叩き込んだら俺の勝ち!という馬鹿げた勢いが愛おしくなるゲーム。アクション性が唯一無二で、いつまでもドリルを掻き鳴らしていたくなる。名作。

Ace of Seafood

この世界では多くの生物が射撃能力を持つ

 という訳の分からない電波文章選択肢に「はい」と回答をするところからこのゲームは始まる。そして他の魚を射撃能力で以て殲滅して遺伝子を集め、群れを少しずつ築きながら生活圏を広げ、いつしか海洋の覇者となれる日を夢見ながら岩礁や棚壁や潜水艦跡に棲む強魚介類の群れとの縄張り争いに明け暮れる、そんな狂ったゲームだ。

 ネタゲーの片鱗を纏ってはいるが、その実とても良くできたSTGシミュレーションだと思う。魚介ごとの武器種や機動力の差異が明確で分かりやすく、敵の群れを見つけてから自身の群れを展開させてからのビームとミサイル飛び交う三次元戦闘の末に勝利と遺伝子をもぎ取っていく一連の動作は、弱肉強食の言葉そのもの。もちろんオープンワールドらしく、ちょっかい出したら即死の巨大海洋生物も潜んでいたりと、スルメのように遊べる一本。

Iconoclasts

 白状するが、このゲームのことはよく覚えていない。何しろ遊んだのが数年前の上に当時の私は碌なレビューも残さない青二才だったのだ。ただ、とても大事なゲームだったということ、ラストシーンで各員の主義主張が泥臭くぶつかり合い、全てが瓦解し、その中で主人公が何かを掴み取った、という記憶だけが朧気に残っている。

 ドット絵がよく動くアクション性、ネジとボルトと歯車が快活に噛み合うバトルシステム、総じて「良いゲームだった」という感覚が、心の隅に残っている。PVや何やを拝んで興味を覚えた人は、ぜひ遊んでみてほしい。そして私が忘れてしまった面白さや感動を感じてくれたら、幸いである。

アドベンチャー/アクションノベル

 アクションゲームが自分が握りしめたコントローラやWASDキーをいかに上手く叩くかに重点を置いたと乱暴に語るなら、その部面をマイルドにしながらストーリーの要素をグッと押したのがアドベンチャーだろう。言葉の定義だから辞書を引いた方が良いのだが、私がそう思うのだからそういう項目である。

セカイを旅して懸命に生きた

 大きな世界が広がっているゲームがある。現代のコンクリートジャングルを精密に再現したものから、およそ想像の世界の中にしか無い国家まで、多種多様だ。そんな世界の中を旅すること自体に重点を置いた、小難しい操作や限界を追求する動作を脇に置いた、世界や人生や選択を体験することをゲームの肝に据えたゲームを思えばいくつか遊んできた。

Journey(風ノ旅ビト)

 かつての栄華が見る影もないほど荒廃し砂塵に覆われた世界、過去の文明の残滓とその残り香に触れては崩れ往く風景に嘆息する。そういう物事を堪え難く愛するような人間になったその原風景は、たぶんこのゲームを通して得た感覚が形作ったものに違いない。それほどに自分の中で大きく、また大事な部分に据わった作品だ。あらゆるゲーム媒体に移植が行われている。非常に素晴らしい、不朽の名作と言ってよい。

 操作は比較的制限されている。回数制限のあるふんわり浮遊と他プレイヤーとの交信に使う合図、その2つだけだ。しかしこれらだけで、むしろ限定されているからこそ可能な要素を駆使して驚くほど胸を打つゲーム体験を実現していて、後から振り替えるだに恐ろしいゲームだったと再確認するのだ。段々と自由が増え、世界を知り、山に近づいていく。先の見えない一歩一歩を確かに踏みしめながら進む行為は、正しく「」なのだろうと思う。

Sable

 個人的にオープンワールドのゲームの中で一番推しているのがこの作品。とにかく画面音楽設定雰囲気その他、全てがビタッと決まっている。特に最近のゲームでたまにある「終わり方は自分で決めて良い」という様式を、主人公が属する部族の掟「自分のなりたい役割を探す旅に出なさい」という作中の構造と綺麗にリンクさせた時点でこの作品の勝ちは決まったようなものである。

 砂漠や山岳や雪山を自分が組み上げたグライダーで滑走し、山があればそこに登って風光明媚な世界を総覧し、街に行き着けばそこで生きる人々に混ざってみたり、巨大な宇宙船が墜ちていれば内部を探索し、新しい装束を遺跡の奥で手に入れたら袖を通してみたりする。そんな様々に散発な経験をしながらあてどもなく旅する最中に、ふと何を目標にしようか?と思い、無意識に舵取りを決定し、自然と足が向いた方向になぜか自分が成りたかった衣装と仮面が待っている。そういう精緻な構造が内包されていて、とにかく凄まじいのだ。

Outer Wilds

 もはや説明不要の、宇宙探索オープンワールドアクションの金字塔。空に散った同族たちが奏でる音響と手記をたよりに遥かなる宇宙の謎を、ループする世界の真実を解き明かす話。宇宙船の操作難易度や一回機会を逃した後の次の周回までのもんにょり感があるが、それらが良い方向に転じる頃に物語が急展開を見せ、あっけに取られながら時間が巻き戻っていく。他では得られない甘美な感覚だ。

 インターネット上の有志が凄まじい熱量でオススメを叫び続け、今なおその勢いが衰えることはないだろう本当に稀有なゲーム。過去の文明が遺した痕跡に触れてその生き様と目的を辿り、不可知の茨の向こう側から聞こえる旋律に耳を傾け、次に行くべきはどこかと海図片手にコックピットで唸り、星辰の良い折にリフトオフする、何とも自由な旅を体験できることか。あなたもぜひ行くと良い、薪のそばで待っている。

Stray

 これも説明不要なくらい有名になった一作。天井が閉ざされ秩序が崩壊しつつあるコロニーの中で、一匹の猫とドローンが各々の目的のために旅する話。雑居なサイバーパンク世界は数あれど、猫の視点で駆け巡る作品はそう無いだろう。都市や下水や工場内を気ままに歩き回りながら、猫ならではの解決方法で世界を少しずつ変えていく。

 猫があくまで外界からの無口な異邦人として描かれているのもポイントだろう。関わりを持つ相棒のドローンや機械人類たちの願いを聞いたり聞かなかったりしながら、その志の行く末をプレイヤーと一緒に見守る奇妙な役割を担っている。風景も環境も絶えず変化し、その世界全体でコントローラーを握った我々に何かを訴えかけてくる。猫は気にかけないかもしれないが、少なくともその世界を見つめてはいる。

プレイヤーを揺らし、思わせ、考えさせる

 もちろん世界を旅した時点で心に何かが残るのは必定だが、それに付けてもこちらの価値観を揺らし考えさせ、あまつさえ主体的に語り掛けてくるインタラクティブなゲームも数多くある。時として一生の傷を負うこともあるし空恐ろしいには違いないが、だからこそ多くの人を魅了するのがアドベンチャーゲームの神髄の一つだろう。

OneShot: World Machine Edition

 何かもう説明不要な気がしてきた。体験型アドベンチャーゲームの決定版、見知らぬ場所で目覚めた子猫を導きながら、彼を救世主と呼ぶ奇天烈な衆目と共に世界の中心を目指す話。ゲーム自体は非常に素朴な風合いで出来ており、特別な操作は必要ない。人を探し、話を聞き、物を作って持っていく。それだけだ。

 そんな素朴なやりとりやキャラクターとの交流の中で、あるいはその旅路を歩く中で、またその果てで、プレイヤーは何かを考えさせられる。素朴であるがゆえに考える時間が大いに与えられており、探求の旅を続け情報を集めるうちに思考が煮詰まってゆく。そうしてこちらを屈託なく見つめてくる黄色い瞳を前に、一発限りの選択を行う。総じて大好きなゲームだ、二度と開くことはないが。

Keylocker | Turn Based Cyberpunk Action

 体制への反抗と革命の凱歌はおおむねのゲーム作品に流れるテーゼだが、この作品ほどそれを前面に出して尖らせて突き抜けたゲームはお目にかかったことが無い。抑圧され音楽を奪われた少女が、自分が生まれ持った能力をぶつけ続けることで世界を決定的に変革させてしまう話。極彩色のドット絵と卓越した楽曲群に支えられたファンキーなストーリーラインにやられっ放しだった。

 ドラムからシンセサイザーまで様々な楽器を操り、様々な装束や文化を融合させながら栄え切ったサイバー文明社会を駆け抜ける姿には、原義通りの「ロック」と「パンク」が底通している。攻撃のためのQTEすら音楽を奏でる行為とマッチングさせており、プレイヤーが音楽を忘れることは一瞬たりとも無い。魅力あふれるキャラクターたちと対話を繰り返しながら、彼女の当てどない革命の行く末を見届けよう。

VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action

 サイバーパンクを語るなら確実に外せないビッグタイトルの一つ。近未来都市の片隅でバーテンダーをしながら来客と会話しつつ酒を提供し、その素性を知っていくうちに外界の有様をプレイヤーに開示していく過程はたいへん官能的。もちろん進めていくにつれて客や主人公にも変化が訪れ、物語の様相が変貌していく。

 やってくる客やマスターはもちろん主人公自身も一癖も二癖もある人物であり、そんな彼らを彩る8bitな雰囲気の彩色がまた美しい。日々のSNSチェックやジュークボックスを触ってプレイリストを自分で選べる辺りも没入感があり、本当に画面越しに彼らに出会っているような気すらしてくる。そんな生き方を選んだり選べなかったりする/した彼らの人生をカウンター越し/画面越しに眺めながら、ふと自分の人生を眺しては発泡酒で洗い流して、新しい一日に期待してしまいたくなる。そんな抒情的なゲームだ。

Coffee Talk

 システムが似通う『VA-11 Hall-A』が合成酒を煽ってパンク世界をカッ飛ばす作品なら、この『Coffee Talk』は本当のコーヒーを探求しながら沈思黙考する作品だと思う。多文化共生を巡る問題はファンタジー世界の常であるが、慌ただしいシアトルの夜更けに起きる問題はまた根深い。それはエルフとサキュバスだったり、父と娘だったり、宇宙人と地球人だったりする。そんな彼らに一杯のコーヒーを出しつつ対話に耳を傾け、根深い悩みに触れ、行く末を見守る。時として主人公にも選択の余地が与えられたりと、変幻自在なゲームだ。

 落ち着いたジャズピアノが包む店内で彼らを迎えてはその推移を拝むのはある種ノベルゲームなのだが、コーヒーを吟味して出すという行為が大変インタラクティブな感覚をプレイヤーに与えている。また詳しくは言えないが、システムとストーリーを密接に絡めたある一点ではゲームデザイナーのモハメド・ファーミ(Mohammad Fahmi)氏に拍手喝采だった。本当にすごい。次回作である『Coffee Talk Episode 2: Hibiscus & Butterfly』も併せて、彼らの生き方に寄り添ってみるのも良いだろう。

In Stars And Time

 草原の真ん中で目が覚める、というシーンから始まるRPG。これはね~~本当にすごい。一見ファミコンめいた白黒レトロな画面と楽曲を採用したRPGに見せておいて主人公がある地点からの繰り返しに囚われた様子を見せつつ、その「ループ物」って要素の料理の仕方が大変巧み。暖かな街の探索や時を止められた王城の探索を重ね、また死んでは戻って一歩ずつ先に進み、最奥部に潜む魔王にまみえる。どこかで聞いたことがある要素のツギハギに思えるのに、唯一無二の体験を与えてくる。

 恐らく、主人公の人格と周囲を取り巻く仲間たちがその立役者だろう。天真爛漫に使命に燃える巫女、快活に笑いつつも繊細な一面も併せ持つ戦士、現象の探求を目的に同行する皮肉屋な研究者に、底抜けの元気さと料理の腕前がとりえの子ども。後ろ向きで捉えどころのない主人公が、魅力あふれる星々たる彼らと巻き戻る時間の中で何度も対話しいくつもの分岐を触れていくにつれて内心を微妙に変化させていき、また彼らの尊く柔らかい部分に触れ、気付き、何かの希望を見出したところで、時が巻き戻り、また草原の真ん中で目が覚める。

救国のスネジンカ:Sentinel Girls2

 敵国との終わりの見えない戦争にマルフーシャ(前作主人公)が参画して磨り潰されそうになり、ついに立ち上がった妹スネジンカが機械兵どもをバッタバッタと撃ち滅ぼす爽快STG。基本的にはローグライク要素のあるタワーディフェンスで、使用制限のある武器を使い捨てながら能力をあげて各地の戦場を巡っていく。巨大な壁を護ったり列車後部に詰めたり市街地戦に繰り出したりしながら100日間を生き延びる彼女たちの闘争を、共産主義リアリスムを感じる背景美術と世界観設定が美しく残酷に彩っている。

 タワーディフェンスなんてある種作業であるはずなのに全く飽きが来ない。理由は3つ、サポートキャラとして呼べる愛嬌と魅力あふれるキャラクター群に、その同伴者によって変わるストーリーラインと間隙のささやかな団欒の時間、そして周回ごとに明かされる退廃し切った世界を生きた彼女たちのアーカイブの存在だ。グッと唇を噛み締めるごとに無限に味がして、次の戦いへの決意にみなぎる。作者の前作『溶鉄のマルフーシャ:Sentinel Girls』で同志マルフーシャの雄姿を網膜に焼き込んでから遊ぶと楽しさ倍増間違いなし。おれは今作は先生が推しだったんだ、ちくしょう。

Inscryption

 暗いロッジで目覚めた主人公、机の反対側に座る静かに狂った老人から有無を言わさずカードを握らされ、命のロウソクを立てられる中でカードゲームに興じる、というサイコホラーなカードローグライクだ。プレイヤーが死亡するとその時点での山札の数字からランダムに能力がピックされて次の周回で選べるようになるし、ある程度まで進めるとロッジ内の謎解きを通して新しいカードを手に入れることもできる、たいへん良くできたローグライクだ。

 そのうち、手札に入ってきたカードたちの何枚かが喋り出すのに気付く。彼らはバトル場に出るのを嫌がるし、同じ手札に入るとペチャクチャと会話をしている。そんな彼らの会話を尻目に少しずつ運と実力を身に着けた末に奇妙な老人を打倒する。そうすることでローグライクゲームは終わる。当然終わるはずである。たいへん、たいへん、たいへん良くできたローグライクなのである。ぜひ、遊んでほしい。

トチ狂った閉鎖空間でSAN値を削れ!

 SAN値とはSanityの数値、登場人物やプレイヤー自身の正気さや精神の健全さを数値化したもので、近年TRPGを中心に広く人口に膾炙しつつある概念だ。全身が総毛立つような恐怖で以て主人公とシンクロしその内心を理解する一助になったり、そんなことは関係なくスリルを楽しむ一度きりのスパイスとしてホラーを楽しんだりする。そんなゲームも遊んできた。

Observation

 何かが起きて孤立した宇宙ステーション、目覚めた博士はステーション補助AIの助けを借りながら船内を捜索し、ふと目をやった窓の外には「物理的にあり得ないもの」が映る、というコズミックホラーのトロの部分みたいなゲーム。宇宙系SFを齧った方は「宇宙船」「AI」の時点で嫌な予感がしているだろうがその期待をおおよそ裏切らないし、何よりプレイヤーの視点が博士ではなく当のAIくんの方であり、船室のドアを開けたりロックしたりして弱い人間を導く二人称の役割を担うという構造がもう気持ちが良い。〝〟じゃん。

 基本的にはポイントクリック探索であり、船内から船外から様子を総覧しては博士を助けたり事件の真相を探ったりしていく。閉鎖空間の作り方も宇宙船らしいUIもあらゆる部分が魅力的で、常にカメラの視点で彼女を見ているものだから映画の中を探検しているような気持になる。総じてコズミックホラーSFの王道を知り尽くした人が作ったことが良く分かる、素晴らしいゲーム。

MOUTHWASHING

 どこか懐かしさのあるアメリカンレトロに彩られた貨物船の船内で起きた事件の前日譚とその末路を描いたホラーゲーム。分岐も無く滔々と彼らの生き様を追うだけなのに、どうにも癖になる。限られた動作と台詞を紡ぐ各キャラの意図や目的を解釈しつつ、主人公を操作しつつ何が起きたのか、これからどうするべきなのかを確かめていく過程が胸をえぐる。

 画面から得られる情報量が少ないからか、却って異様な迫力と深みが発生している。また時系列もバラバラに語られるので誰が?なぜ?という考察が常に発生しながらゲームが進行する上に、そもそも主人公は何が目的なのか?という信頼できない語り手問題も絡んでくるので、いくら考えても味がする。同じパブリッシャーが提供する『THRESHOLD』も一緒に遊んでローポリホラーの味わいを噛み締めつつ、何とか飲み込めたら良く口を洗って、そんな責任は忘れてしまおう。マウスウォッシュ!

DREDGE

 世界観の組み立て方ががとにかく凄まじい。漁村が点在する諸島の中で魚を獲りつつ住人の悩みや不安を聞き、それを解決しては釣竿と漁船のアップグレードをして次の島に向かうアドベンチャー。PVを見るとわかる通り漁船の移動方法も釣魚のQTEも真新しいものは無いはずなのに、海域全体を取り巻く臭い立つような饐えた雰囲気に後押しされると臨場感がまるで違う。全てが混然一体となってプレイヤーに襲い掛かってくる。

 普通に釣りをしている最中に、海洋に対して人が古来抱いていた根源的な恐怖を具現化したような異形の魚介類が突然大当たりとなかりに釣れるものだから、報酬系がバグるのも相まって心臓に悪い。そんな怪異に対する住人の対応も、無関心や恐怖、崇拝から敵対まで様々だ。主人公はそんな彼らと取引をしつつ時に手助けをし、そしてフードを被った人物と邂逅したり、夜中の水平線に曳光を見たりしながら、海の底に眠るそれに引き摺り込まれていく。素晴らしいゲーム体験だった。

IN OTHER WATERS

 遠宇宙で新しい惑星系を開拓してはその資源を探索する任を負った一人の海洋学者、そして辿り着いた異星の海で消息を絶った彼女から意味深なメッセージを受け取り単身赴いた女性が、その星で起きた出来事を辿りながら謎に満ちた海洋惑星を歩く話。上で紹介した『Observation』と同じように、プレイヤーは彼女の分析とナビゲートを補助するAIとなって物語に組み込まれていく。あくまで鳥瞰する視点で会話相手になりつつ彼女の踏跡を追体験していくのは中々幻想的な体験だった。

 我々にとって完全に未知の生態系、文字通り作者オリジナルの世界が広がっているので、名前を付けるのも主人公、分析結果の図解も世界初の資料がギッシリと、架空戦記やケイ素生物概念が好きな人にもバチッと嵌るだろう。UIの色合いや雰囲気も非常に美しく、これらが気に入った方は作者の次回作『シチズン・スリーパー』もぜひ遊ぼう。溺れるような高精度SF世界に飛び込もう。

サブノーティカ(SUBNAUTICA)

 ご存じ海洋探索SFの金字塔。こっちも完全架空の海洋生態系が我々を出迎えてくれるが、『IN OTHER WATERS』と比較してこちらは3Dアクション要素も兼ね備えているので、見たこともない進化を遂げた彼らが群体として生きる様をリアルタイムで拝めて非常に刺激的。彼らを眺めたり獲ったり食べたり飲んだりしつつ、浅瀬から深海までねっとりと作り込まれた大海でのサバイバルライフを満喫しよう。

 私は遺された航海ログのようなものに目が無いのだが、非常に気持ち良く欲求が満たされた記憶がある。生きて帰ることを前提に語られた文書が焼け焦げた宇宙船の中に落ちてたり、「ここに集結だ!」の勇壮な文句と共に示された座標に向かえば大穴の開いた脱出ポットが転がっていたり、大変良い。当然海洋恐怖概念も生々しかったりメカメカしかったりする方向性でふんだんに設けられている。『Subnautica2』の発売も控えているので、そちらも楽しみにしたい。

ビジュアルノベル

 もちろん世の中にはキーボードやコントローラを振り回して遊ぶアクションや、エリクサーの使いどころやちからの種の与え先をウンウン悩むRPGの他にも、その世界観やストーリーを見せて魅せるその一本で以て成立しているゲームジャンルも存在している。ノベルゲーム、というジャンルだ。あいにくガシャボコと戦うことばかりを志向してきた我が闘争人生だったが、近年そういったゲームを遊んだこともある。

じん、と染み入る

 おおむね全てのノベルゲーム、ビジュアルノベルがそういう、映像や音楽や映像で以てプレイヤーの情動や精神を揺らすことに重点を置いていると理解している。順にみていく。

アンリアルライフ

 これはとんでもないゲームですよ。サイコメトリ能力を持った記憶喪失の少女が喋る信号機とやりとりしつつ、ゆるくて寂しい不思議な世界を旅する探索型ビジュアルノベル。卓越したドット絵技術とゲームデザイン、砕けゆくガラスのようなワルツ的ピアノ楽曲でタイトルコールは支えられ、しかし話全体としてユーモアは決して忘れない。とんでもないゲームなんですよ、これは。

 いやもう雰囲気が本当に最高なんですよ。詳しくは下の動画(switchより)を見てほしいんですけど、たった30秒の中に私が撃ち抜かれた魅力が全部詰まってると思ってます。決定音に採用された優しいピアノ音に静やかに動くエレベーターのモーター音、遠くに見える月を主人公と一緒に眺め、ほうと息をつく頃にちょうど階上に着いている。あまりにも美しい。hako生活先生、これからも良いゲームを作ってってほしい。

ghostpia シーズンワン

 そんな先生が所属するインディーゲームのレーベル「ヨカゼ Yokaze」から昨年リリースされたゲームタイトル。製作者曰く「読む映画」とあるがその称に違わず、踊るようなUIに笑い出したくなる楽曲群、そこから叩き込まれるストーリーラインは間違いなく映画に類する何かだった。要所に走るグリッチノイズや全体を取り巻くビデオテープ風味な構造、そして合間に挟まる穏やかなCM。総合芸術としてプレイヤーに、何かを伝えんと襲い掛かってくる生命力溢れるゲームだ。

 時間が停滞して死ぬことすら出来ず、漫然とした忘却に微睡む北国の街に外から人がやってきて、様々なルーツを持つ主人公たちに変化が起きていく、という話。特に主人公の独白や分析は映画ではマンネリとしてしまうだろう量をテキストだと自然に読み進めることが可能で、大変面白く読んでいた。忘れたいもの、忘れてしまったもの、忘れさせようとしているもの。北国の小さな街で様々な思惑が交錯し、それを少女たちが闊達に吹き飛ばしていく有様を見ながら読む手が止まらなくなる、良いゲームだ。

ファミレスを享受せよ

 もう言葉を尽くすより下の動画(PV)の、最初の1小節を聴いてほしい。このシンセサイザーの和音で繰り広げられる抒情的な音楽、黄色と青に塗り分けられた世界、手のひら、ファミレス、満月。そして立ち上がる『ファミレスを享受せよ』のタイトルコール……。これにビビッと来た人はまず間違いなく買うと良い。確実に幸福なゲーム体験が約束されている。

 ゲームシステムとして、基本はポイントクリックと会話の選択肢を選んで進めていく古色ゆかしいノベルゲームなのだけど、癖のありそうな店客に開かないドア、窓の外に広がる宇宙と満月に、ボタンの壊れたドリンクバー。それらを推し進めていくうちにパズルのピースが嵌ってゆき、やがて真実に辿り着いた時の快感は得難いもので、その後に訪れる選択は度し難いものだ。驚くべきことにマルチエンド搭載である、貴方も満月の下でファミレスを享受しよう。

未解決事件は終わらせないといけないから

 これはですね、タイトルからの1クリックがあまりに気持ち良すぎてベストゲームになりました。押したと同時に起きる画面変化で事件のあらましを一瞬でプレイヤーに伝え、同時に流れ来る抒情的なピアノ音楽で背筋を自然と伸ばせしむ。こういう細かいところに配慮したゲームが、大好きなんです。ある一つの未解決事件を巡った、切実な思い交錯する物語。

 過去に扱った未解決事件を引きずって世捨て人同然となった刑事の元にある女性が現れ、対話をする。その対話を通して刑事の頭の中の情報を整理し、誰が、いつ、なぜ喋ったのかを正しい位置に合わせて、繋ぎ合わせていく。ゲームとしての謎解きに没頭して会話パズルを組み合わせロックを解除していくうちに、段々と事件の全容が明らかになっていく。嘘とはぐらかしの裏側に流れる崇高な黄金の精神に気付いた瞬間に、椅子の上でゾワゾワと打ち震えじっと噛み締める感覚、忘れがたい。

和階堂真の事件簿 TRILOGY DELUXE

 これこそオールドスタイルなクリックして証拠を集めて推理して犯人を捜す探偵アクションなのだが、まあ内容が良い。昼行燈な探偵に謎めいた事件、癖の強い蔵、孤立したホテル、宙づりにされた死体、祟りと嘯く因習村のババア、噂好きなオバチャン、記憶喪失、容疑者となった探偵に元気な助手クンと、探偵モノを遊ぶのに必要なものが全部そろっている。なのに旧世代なラインをなぞるのではなく現代らしい語り口を用意していて、非常に新鮮で楽しい。

 荒く見せつつも高精度に事件を叙述して見せるドット絵芸術に不穏で胡乱な雰囲気を形成するジャズめいた楽曲、何より短い時間の中に探偵推理モノに求めていたものの全てが詰め込まれていて、読後感はまさに圧巻だった。作者である「墓場文庫」氏の次回作であり先日体験版を配信していた『都市伝説解体センター』が、この作品のゲームシステムをさらに発展させた代物に仕上がっていたので、気に入った方はぜひこちらの方もウィッシュリストに入れておくと良い。

悩める主人公のインナーワールド奇譚

 こちらの心に染み入る以前に訴えかけてくる感情やパッションが未整理の、ある種トゲトゲしい、プリミティブな感情だったりするものをいくつか遊んだ。それは精神の迷宮に囚われていたり、日常の疑問から抜け出せなかったり、退屈から抜け出す手掛かりを探し求めたりするゲームであり、それらを身をもって味わえるのは望外の喜びであった。言語化が困難だが、それでも良さはあった。

Milk inside a bag of milk inside a bag of milk

 自分と世界との認知の釣り合いを懸命に取りながら、少女が母の頼みをきいて牛乳を買いに行こうとする話。アポカリプティックサウンドめいた電子音にネオン輝く色彩にグリッチノイズ、視界に映る人物はおよそ人とは言えない形をしており、俗に言う「奇ゲー」の範疇に入るのだろう。しかしその実恐ろしいまでの少女の自己分析と内省と衝動を、彼女自身に寄り添うイマジナリーフレンドとして一身に浴びるので、心が凄まじいことになる。

 正統な次回作である『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk(通称Milk2)』も一緒に遊ぶと解釈や考察も進むだろう。真にそばにいられたなら、彼女の悪戦苦闘を解きほぐす手助けをしたかもしれない。しかしそういった解剖学的視点は彼女には不要なもので、あくまで彼女自身の思考の堂々巡りを、自分のことを自分で必死に掴まえて制御して自分の人生を送ろうとしている煩悶を主軸に描かれている。上にも書いたが、ここまでの自己内省をゲームという形式に落とし込んだ時点で震えあがる

上に天井がある。

 強めのストレスに晒された学生が自室の中を彷徨ううちに屋根裏への執着を見出して、何とかして解決しようとするポイントクリックアドベンチャー現実が虚構に段々と侵食されていく過程が如実に描かれており、ビジュアルノベルとして完成度が高い。サイコホラーに見せておいて屋根裏への上がり方≒脱出の仕方≒救われ方にも触れているのでヒーリングな側面もある。

 特徴的なのが、エンディング後の世界を探索できること。アパートの一室を歩き回りながらあの悪夢的な出来事を述懐して、呪いを解いた先まで描いたのがたいへん画期的に思えた。何でもないかも知れない、当たり前のことかも知れないけど、自分の中の曖昧な不安と対峙するのはきっと誰しも通る道だし、その時に大事になるのは会話相手なんだろうと思う。エンディング上で書いた『Milk』シリーズが気に入った方は、きっと好きになるはず。なんたって2人が描かれた公式アートがあるくらいなので。

Endless Monday: Dreams and Deadlines

 先延ばし癖のあるデザイナーである主人公が、締め切りを数日後に控えた週末に職場のオフィスに缶詰めしながらオフィスを探検したり友人に電話したりスマホゲーの誘惑と戦ったりする話。もうこの時点でだいぶどうしようもないし、それは主人公も自覚していたうえでどうしようもないと諦める堂々巡りなのだが、その末路がマルチエンドに用意されているのも含めてインタラクティブなゲーム。

 キャラクター群がとにかく魅力的。自分のダメさ加減を思い知りながらも変われない主人公に、そんな主人公を買ってくれてる酒豪の先輩に、クールな同僚に、トラ・ガール。彼女らが短い週末の中で濃密な体験とインスピレーションをデザイナー脳みそに与えたり与えなかったりしつつ、月曜日の脱稿を目指す。思い当たる節のある独白に胸をやられたり、奇想天外な展開に顎を抜かれたりしながら、終わらない週末に身を投じよう。

 キャラデザがまじで可愛いんだ、これが。人類の至宝ですよ。

シューティング

 特にシューティングな部分に重点を置いているなあと思った作品を、人間が駆けるFPS/TPSと飛行機が往く見下ろしに大別し、アクションの部分から移動して据えている。鉄砲をバンバン撃ったり戦闘機をビュンビュン飛ばしているときにしか得られない栄養もあるのだ。

ファースト/サードな人間シューティング

 中でも人間がバカスカ撃ちあうゲーム。と言ってもPvPの素養が無いので、PvE、それも対戦要素の添え物ではなく純粋にストーリーを魅せてくれるものを中心に遊んだ。

Titanfall2

 巨大二足歩行戦車「タイタン」とリンク可能な最強の兵士「パイロット」が戦場を駆けるSF世界、新人パイロットの主人公が敵の奇襲に遭って墜落した先で恩師のタイタンを託されて、孤立無援の中タイタンのAIと心を通わせつつ戦端を切り拓く話。タイタンが文字通り戦場を変えてしまうという設定を、1対多が当然のキャンペーンモード内で存分に暴れ回ることで実感させる手腕が見事。武器もアクションも素朴なハンドガンから曲者まで取り揃えていて、大変楽しい。

 特徴的なのが、上で書いた恩師のタイタンに遺ったAIの存在だ。味方との通信が回復するまでは彼に相談しながら戦場を移動していくわけだが、機械らしい堅物な側面から妙な冗談を言うところまで全てが愛おしく、ピンチに陥ったところに自立起動したタイタン=彼がミサイルを注いで救出してくれるシーンなんてたまらない。徐々に信頼関係を築きながら敵の傭兵団を薙ぎ払い、奴らの野望を阻止しよう。新作『Titanfall3』、いつまでも待ってます。信じて!

近畿霊務局 - Kinki Spiritual Affairs Bureau

 これもね~凄いですよ。スレたショートカット地方公務員が、村落に湧いた違法幽霊どもとドンパチしながら除霊を敢行する話。PVをご覧いただくと分かる通り、アサルトライフルはガンガンぶっ放すわ花子さんは増殖するわ廃校は占拠されてるわ武装巫女集団まで出てくるわと、心霊系ミリオタの悪夢みたいな内容が満載されている。しまいには墓石をブッコ抜いて「弾避けになって良い」などと嘯きやがる。とんでもねえ仕掛けのゲーム。

 この胡乱な勢いに任せてゲハゲハ笑いながら物語の中盤まで進むと、仕掛けが起動する。一世を風靡した頃のCoDのキャンペーン何とか摂取できていたあのストーリーライン、全てのしがらみが絡み合って抜け出せないエグめのイデオロギー衝突に多重リトライ必須の骨太銃撃戦、大きな存在に成すすべもなく磨り潰される味方、一夜限りの戦友に託された約束、酌み交わされる酒、遠くの爆発、タバコ、涙……。あらゆる情報と情動が完璧なムービーシーンと共に脳髄に叩きつけられ、コントローラーを握る手が止まらなくなり、一気にクリアする他なくなってしまう。作者のアプデも日夜入ってるのでおすすめですよ、これは。

カルトに厳しいギャル-CULT VS GAL-

 ポップな重音テト楽曲とギャルな見た目のエージェントに粉飾されたゴアッゴア系レトロFPS。勃興してきた武装カルト教団施設を潰すよう命を受けて、主人公(ピアスバチバチ系ギャル)がオペレーター(堅物制服組)のサポートのもと殴り込みをかける話。基本的には前後左右に移動しつつ敵を撃ち、次の階層への入り口を見つけたら飛び込んでいき、ボスを見つけたら道中拾ったショットガンやら何やらを叩き込む、いたって単純なシステム。極めつけにナイフ攻撃でカルトどもを攻撃するとどうだ、首が吹っ飛ぶのみならず彼女が高々と中指を立てるのである。最高すぎる。アーメンハレルヤピーナツバターだ。

 ストーリーを進めていくにつれて敵組織の人物関係や主人公の素性、そもそもカルト宗教とされてきた組織の全容もプレイヤーにはおぼろげに開示されていく。しかし当のキャラクターたちは意にも介さず気持ちよくカルトを皆殺しにするべく邁進するものだから、一周回って気持ちよくプレイすることが出来た。先述した重音テトの主題歌が延々と流れているのがどうにも中毒性が高く、リピートしているのに全く苦にならずナイフを振るい続けられたのも良いゲーム体験だった。次回作も期待しています。

ATOMIC HEART

 全身銀色の全頭マスク・コンパニオン・メカ・ガールが搭乗するトレイラー映像で一時期話題を独占した、ソビエト連邦のにおいとアトモスフィアがプンプンするTPSアクション。ある画期的なテクノロジーの発表会に居合わせた主人公が、その盛大な破綻に巻き込まれながら任務と真実を追い求めるゲーム。社会主義リアリスムの毛色が色濃く出た舞台美術や設定に台詞回しと、歴史ifを描いたゲームタイトルとして外せない一本だ。

 あの時代の社会主義リアリスムを彩る赤と拳と夢と希望が最強のテクノロジーを手に入れたらどうなるか?それが最悪の形でブッ壊れたらどんなザマになるか?をかなり気持ちよくエミュレートしていて、世界を歩き回るだけで大変楽しい。腰の曲がったしわがれ老婆は力強くショットガンをメカ集団にブッ放して「クソッタレ!」と叫ぶし、その他にも欲しい要素が満載されている。まだDLCが控えている様子なので、引き続き楽しみにしていたい。滅びた主義主張の美学は美しいので。

戦闘機を飛ばしていくシューティング

 戦闘機をビュンビュン飛ばすシューティングゲームがある。こちらは実は歴史に対して自分の造詣があまり深くないので多くを語ることはできないが、それでも面白かったという体験を保存することはできる。面白かったゲームがある。

斑鳩(IKARUGA)

 21世紀初頭、往年のゲーム制作の老舗Treasureがアーケードゲーム向けに開発し、その後多方面に移植が行われた見下ろしSTGの金字塔。その弾消し手段の特異さからパズル的とまで言われるゲーム性、鳥類を基礎としたボスグラフィックの異常なまでの格好良さ、そのボスを含めた機体の名前は全て仏教由来と、異色尽くしのゲームデザインであり、今もファンが絶えないと聞く。

我、生きずして死すこと無し。理想の器、満つらざるとも屈せず。これ、後悔とともに死すことなし。

 の文句と共に飛び立つ鳥の如き自機、決死と勇壮を感じさせるオーケストラ楽曲に背を押されながら、敵の弾丸に向かって文字通り体当たりしては吸収しビームを放ち、帝国基地の奥深くに単身飛び込んでいく。クリアするのに大分苦労した記憶があるし何なら最後まで到達したかも定かではないが、世界観や雰囲気を知るにつれ思い入れの深まる作品。今も名が知れる昔のゲームは、きっと良いゲームだ。

DRAINUS

 これはですね、見下ろしSTGを始めたいんだけど何から始めたら?な方に対して胸を張っておすすめしたい一本です。バカスカ撃ち合う絵面がメチャクチャ派手な上に質実剛健なシューティング合戦とカスタマイズ要素も完備、敵の基地を薙ぎ払う爽快感にアッと驚く仕掛けにカタルシス溢れるラストバトルまで、欲しい要素が全部詰まっている。もうびっくりするくらい良くできていた。

 圧政を敷く帝国の最新戦闘機を奪取して、果てしない反抗と闘争の旅に出撃するという王道の流れが気持ち良く料理されていて、遊んでいるうちに燃え上がった記憶が今でもある。もちろん先述の通り初心者の方にもオススメだし、STGを識ってる友人に訊いたところ「これはあれの、ここはあの作品のオマージュだ……ベネ…………」的なことを呻いていたので、そういうのが好きな人にもきちんと刺さるはず。

DEVIL BLADE REBOOT

 これも、初心者の方から上級者の方にまで勧めたいSTG。がなり立てるハードロックなシンセサイザーの楽曲を背景に、画面狭しとせり出してきたフル武装の大ボスメカ戦闘機とまるで殴り合うような弾幕合戦を繰り広げられるのが非常に気持ちが良い。避けたくなる弾幕をしっかり避けつつ弾頭を撃ち込み、ギリギリのところで勝ち抜く快感ったらない。テンポも非常に良いのでリトライが簡便で、自身のワザマエの伸びも自然と意識しやすくなっている。

 個人的に好きだったのが、ステージとステージの間のシークエンスだ。ボスを斃すと同時に機体がブーストを掛けて基地から離脱、吹き飛ぶボスと建造物を背景にスコア表がジャカジャカッと出てきて、それを読み終える頃に自機が既定の位置に飛び込んでいき、シームレスに次の面が始まるという勢いを殺さない細やかな作り込みが、非常に気持ち良かった。総じて、とても良いゲームだった。

パズル

 飛んだり跳ねたりアクション性のあるものからジックリ考え込まされるものまで、パズルゲームもいくつか遊んだ。残念ながらパズル筋が弱いのであまり好んで選んだりはしていないが、それでも見た目が好みだったり、フォロワーさんに誘われて遊んだりと、ある程度まとまった数を遊んだ。

3Dアクションパズルで脳を灼け

 上で挙げていたゲーム群の中にもパズル要素が含まれる作品は複数あるが、あくまでパズル要素を軸に据えた作品を選んだ。

Portal

 超絶王道パズルアクション、何を隠そうsteamを作った会社Valveが最初期に作ったゲームなんだから面白くないわけがない。管理社会の行き着く果てみたいな模範的ディストピアの中で目覚めた主人公が、テストと称されるパズルステージに挑みながら研究施設の最深部を目指す話。マザーと呼びたくなるような皮肉交じりの人類愛に満ちあふれたAIボイスに導かれたり逆らったりしながら、その手に握られたポータルガンで物理的に道を切り拓こう。

 基本的なギミックはプレイヤーが持っているポータルガンで任意の2か所に入口と出口を作るというだけの単純な仕組みだが、これをあらゆる方向で駆使させるステージギミック群が襲い掛かってくるので飽きることがない。正統な次回作である『Portal2』も一緒に遊ぶと世界観の解像度があがるし、mod開発やスピンオフ制作も活発だ。歯ごたえのあるパズルアクションをやってみたい、ディストピア世界を堪能したいという人にはおすすめのタイトルだ。

2D見下ろしパズルで脳を焦がせ

 2Dアクションだ!と思って開けたらパズル要素の塊だったり、雰囲気ゲームかしらと思って起動したらメチャクチャ手の込んだ謎解きだったり、そういう経験はないだろうか。どうあっても出会いは一期一会、大変楽しく遊ばせていただいたゲームがある。

TUNIC

 島の波打ち際に打ち上げられたキツネ頭の主人公が、世界を探索しながら解き明かす話。このタイトルを「パズル」と呼称すること自体が微妙なネタバレな気もするが、インスパイア元だろう『ゼルダの伝説』だって広義のパズルゲームなので、これはしょうがない。剣を振るって草を刈り、盾で敵の攻撃を防ぎつつローリングで戦闘を構築する。他にも魔法の杖や花火爆弾やを駆使しながら襲い来るポップな敵を打倒していくのがアクションとしてだいぶ楽しい

 当然島を探索するので、謎解き要素は当然ある。滝の裏側には洞窟があるし、謎の小屋がぽつんと建っていたり、どうやって辿り着けばよいか想像も付かない場所もあったりする。島の各所には異言語で書かれた説明書のページが点在していて、繋ぎ合わせることで段々と世界の全容が判明していく要素もあり、新世界を旅するワクワク感が絶えず供給されてくるので、正統派なパズルアクションと言ってよいだろう。ぜひあなたのかんそうがききたいので、ぜひプレイしてみてください。

Chants of Sennaar

 これは、思い切りの良い珠玉の言語パズル。ふらりと砂漠から現れた異邦人の主人公が、巨大な塔の周辺に居を構えた複数の民族の話を聞きながら最上階を目指す話。過程で町人の悩みを聞いてドアを開けてもらったりするのだがこれが曲者。漫画『ヘテロゲニア・リンギスティコ』で主人公がやっているような、語彙すら全く持ち合わせていない異言語を町人の仕草や動作や発言した物事から推理して、手元の手記に記入して必死に頭を捻ることでまず「相手が何に困っているのか?」を把握するところから始まるのだ。これがまあ面白い。

 当然プレイしている時分は悲鳴をあげながら必死にメモを取ってウンウン唸るし、しまいには複数言語間の翻訳と文章の記述なんて離れ業を要求される場面があるので脳から火が出るかと思ったが、そのうち段々と主語述語の関係や連体修飾格の位置など、ふだん当然のように扱っている言語感覚が覚醒してきて直感的に相手の言葉がわかってくるから不思議なものである。ちなみに「困る民」「巨大な塔」「ばらばらの言葉」の要素でピンときた方は、とても察しが良いのでぜひ遊ぶと良い。彼の起こす救済の果てを目撃しよう。

ELEC HEAD

 横スクロールアクションパズルの新進気鋭であり、確か何らかの賞をバシバシ獲っていたはずである。壁や床やに通電しながら道を拓いて奥に進んでいくゲーム。シンプルかつ明快なルールで最後まで一貫しており、パズルゲームのお手本のような作品。FC音源めいた軽妙な音楽と共に飛んだり跳ねたり頭を投げたりしながら、奥へ奥へと進んでいくのが楽しくて仕方がない。もちろん隠し要素も満載であり、ここ……何かあるだろ!と思って悪戦苦闘しながら辿り着いたところには大抵何かあるので、だいぶ充足感がある。

 好きなのが、中盤から挟まれる演出だ。演出と言っても会話などは表示されず、ただ廊下の向こう側に電気が通った今の世界が表示される、進むにつれてその規模が段々と大きくなっていくという、ただそれだけのものだ。作者がどういった意図であの演出を据えたかは分からないが、自分が遊び感覚でパズルを解いた行為が確実にゲーム世界を変えているという実感を示すものであり、少ないパレット色数で描かれた煌々しい街並みを拝んだプレイ当時の感動は今でも覚えている。

■ここまでゲームレビュー■

おわりに

 Twitterでも呻いていたが、発熱倦怠感喉痛の三銃士にやられっぱなしの年末を過ごしていた。何ならここを書いている今も本調子には程遠く、泣く泣く削ったタイトルが何本もある。しかし、記事として書きたいものを書けたという感覚があるので、悔いはない。

 それにしても前述の通り、子どもの頃からゲームを遊んできた。学生の頃もそうだし、就職してからもそうだ。今はそれなりの歳を取ったが、相変わらず面白そうなゲームをインターネットの中で探しては遊んでいる。何かを無条件に面白いと思える感性が自分の人生を救うと固く信じているので、これからも遊び続けるし、この感覚を共有したり逆に与えてくれるインターネット内外の友人や宣伝を精力的に行っている有志の方々、何よりゲーム制作者の皆さまには感謝してもしきれない。

 どこかの哲学者が言った通り、交換はたのしいものである。もちろん自分の中でしか成立しない尊く柔らかい感想も存在するし、的外れなことを発信して赤面してしまうこともあるかも知れない。だがそれにつけても、誰かに何かを伝えたり、逆に伝えられて新しいものに触れるのは、楽しいことだ。当然一方的な情報伝達は暴力だと思うので厳に控えつつ、しかし「私はこれが面白かった」と誰かに交換を申し込む行為は、何とか許されると信じたいし、もしどれか一遍でも受け取っていただけなら幸いだ。

 何かを遊び、そして楽しかった感覚を多くの人と交換する。それだけで人は幸福になれると思うし、これからもそういう営みを続けていきたいと思う。

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 上述の通り基本的に1人用ゲームをわんさかとやっているので、記事の内容や雰囲気やゲーム遍歴を拝んで、良いね!と思われたら、よかったらフォローやフレンド登録してくださると助かります。

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 です。どうぞよろしくお願いします。

今年も来年も知るも知らぬも、どうか良い一年をお過ごしください!